第1話
俺は、弱い。
苑條翳。
青春を駆ける、高校二年生。
部活動は、剣道部。
なんで剣道部なのかって?
そんなのは簡単だ。
強く、なりたかったからー…………。
ただ、それだけの理由で入部した。
でも俺と剣道は、どうやらあんぱんと牛乳並にベストマッチだったらしく。
俺は日に日に上達していき、高一にして公式戦でのレギュラーを獲得した。
かつては“神童”などと呼ばれてきた俺だが、今はもう、幽霊部員となっている。
なぜかって?そんなの、決まっている。
先輩にいじめられたからだ。
「お前はもう来なくていい」
「お前は必要ない」
「ここから消えてくれ」
「お前がいなければいいだけだ」
そんなの、数えきれない程言われたさ。
ひどい時は無視された。
でも顧問はそれに気づくことなく、俺をヒイキし続けた。それに比例して、先輩の俺への態度はどんどん悪化していく。
これを“負の連鎖”というんだ。
そんな生活に嫌気がさした俺は、部活に行くのをやめた。つまり、反抗した。顧問や両親に何度も理由を尋ねられたが、俺は答えなかった。答えたく、なかった。
それは逆手にとると、現実から逃げたことになる。
だから俺は、弱い。