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ひまわり☆彡スピリッツ  作者: はりねずむ
第二章 スターダスト
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姫咲向日葵 その1

11月30日


 目が覚めると、既に蒲公英は居なかった。起き上がり、伸びをする。時計の針は9時を指していた。なんとも気怠い。それに、いつにも増して寒いような気がする。毛布に包まったまま立ち上がり、窓の外を見る。昨日の夕方頃から降り始めた雪が、まだ降り続いていた。空は遥か先まで灰色で、太陽が顔を出す気配はない。地上には雪が降り積もっており、道行く人は歩くのに難儀していた。寝ぼけ眼のまま洗面所に向かい、顔を洗って歯を磨く。トイレを済ませ、朝食を取るために居間に向かう。ご飯、味噌汁、鯖の味噌煮を卓袱台に並べる。手を合わせ、箸を持つ。ぼんやりとしたまま、鯖の身を解す。それを口に運んでから、漸く温め直していないことを思い出した。温めようかとも思ったが、面倒臭さが先に立ち、気にせずご飯と味噌汁で冷たさを中和しながら食べ進めた。


「・・・ごちそうさまでした。」


 再び手を合わせる。熱いお茶を飲みながら一息ついていると、携帯電話が鳴った。ディスプレイに表示されているのは蒲公英の番号だった。


「・・・はい、もしもし。」

「彼に一本取られたわ。・・・以前忠告したはずよ?部下の手綱は握っておけ、と。」


 電話越しだが、彼女が相当焦っていることは分かった。しかし、私には彼女の言っていることがよく理解できなかった。もちろん、寝ぼけているからではない。本当に分からないのだ。事の次第を尋ねようとしたが、その前に蒲公英が口を開いた。


「とにかく、急いで学園に来てくれる?詳しいことは合流してから話すわ。」


 有無も言わさず電話を切られ、私は携帯電話を耳に当てたまま暫くぽかんとしていたが、こうしてはいられないと思って立ち上がった。さっさと支度をして学園に向かわないと、蒲公英に何を言われるか分からない。いや、さっきの口振からして、急いで行ったとしても何かしらの文句は言われるのだろう。それにしても、“彼”とは誰だろうか。山茶花?いや、彼が何か問題を起こすとは思えない。なら、石神くん?それも考え難い。他の部員にも同じことが言える。だとすれば、一体誰が・・・。


「・・・考えたくはないけど、状況からして侘助しか有り得ないわよね。」


 もしそうなら、蒲公英の言うとおり、手綱の握りが甘かったとしか言い様がない。支度を終え、部屋を飛び出す。降り積もった雪を目の当たりにし、走れば転んでしまう可能性に少し怯んだが、構わず階段を駆け下りた。白銀の地面に着地した瞬間、案の定ひっくり返りそうになるが、気合で踏み止まる。ほっと胸を撫で下ろし、再び地を蹴った。すると、後ろからクラクションを鳴らされた。何事かと振り返ると、青い軽自動車がアパートの前に停車し、中から見覚えのある女性が降りてきた。


「生徒に使い走りにされる先生って情けない?それとも、一周回って逆にイカしてる?」

「・・・まぁ、アリだと思いますよ。」


 月神菖蒲先生が、転ばないようにドアにしがみつきながら苦笑いした。私はというと、下手に走って転ぶ心配がなくなったことに安心していた。


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