姫咲向日葵 その6
生徒会は結束がとても固いと聞いていたから、私は自分の推測にもかかわらず
目を丸くした。しかし、蒲公英は私の推測をあっさりと肯定した。
「たぶん、私の後釜でも頂こうって腹でしょう。
生徒会も、一枚岩ではないということよ。」
生徒会の裏側、それもかなり深い部分を垣間見た気がした。
それからは、他愛ない世間話をして夕食を終えた。
「ごちそうさま。」
「お粗末様でした。」
私たちは、皿を洗うために台所に並んで立った。
こればかりは私も手伝わないと、彼女に申し訳ないからだ。
二人でやれば作業も捗るもので、皿洗いはあっと言う間に終了した。
エプロンで手を拭きながら、蒲公英がやや楽しそうに声を掛けてきた。
「さて、お楽しみの入浴タイムよ。」
「あなたの、でしょう。一緒に入るのはいいんだけど、
あんまりジロジロ見ないで欲しいわね。」
文句を言ったが、いつもどおり、彼女は聞こえないふりをした。
呆れながら、私は蒲公英と風呂場に向かった。
蒲公英が髪を洗っている。彼女の艷やかで美しい髪は、学園内の男子たちを
常に魅惑し続けている。彼女の虜となった男は数知れない・・・。
いけない、また訳の分からないことを・・・。この癖、なんとかならないかしら。
湯船に浸かり、先程の話題について話す。
「で、どうするの?正体が明らかでない以上、あまり大っぴらに動けないわよ?」
シャンプーを洗い流し、蒲公英も浴槽に入ってきた。この狭さにも慣れ、今では
家族の温もりさえ思い出す。蒲公英は、お湯の暖かさを充分に満喫しながら、
彼女は答えた。
「・・・生徒会長として、“隠密治安維持部”に正式に依頼するわ。
敵の全容を特定するまでの間、渡瀬秋桜の周囲を監視して頂戴。」
「了解。ただ、私は動けないわよ?下校時間までは屋上に監禁されてるし。」
「授業中におかしな真似はできないでしょうから、登下校中や休日、休み時間・・・。
とにかく、彼女が一人になる時に周囲を警戒してもらいたいのよ。
なるべく生徒たちに顔バレしていない部下、いるかしら・・・?」
「山茶花なんてどうかしら。彼なら、いい仕事をしてくれると思うわ。」