姫咲向日葵 その5
「私も最初はそう思ったんだけど、違ったのよ。
彼女、異常なまでにアルコールに弱くてね、匂いを嗅いだ程度で酔うらしいの。
しかも、その酔い方が最悪でね、通りがかった屋台の酒の匂いに酔って、
暴れて屋台を半壊させたらしいわ。」
半壊、ねぇ・・・。シチューの中の肉をスプーンで転がしながら、
蒲公英の言葉を頭の中で咀嚼していく。
「だとすると、渡瀬さん、だっけ?彼女が大暴れしたと、生徒たちが騒ぐはずよね。
山茶花からもそんな話は聞かなかったわよ?」
「・・・執行部が内密に処理したのよ。謎の人物からタレコミのおかげで、
早い段階で手を打つことができたわ。目撃者もなし。」
なるほど、執行部が裏で糸を引いていたのなら理屈は通る。
だが、執行部で処理できるのなら、蒲公英が気にすることでもないだろう。
私は蒲公英の皿に入っていた大きめの肉を奪い、口に放り込んだ。
「ちょっと、なんてことを・・・!食べ物の怨みは怖いわよ?
覚悟は大丈夫?腹は括ったかしら?」
「ねぇ、蒲公英、あなたは生徒会長なのよ?全校生徒のお手本たるべき人物が、
醜いボディなんてダメでしょう。私はお手伝いしただけよ。」
スプーンを握る蒲公英の手が怒りに震えている。
「ただじゃおかないから、覚えてなさい・・・。」
怖いことを真顔で言うんだから、余計に怖いっての。
やんわりと滲みだし始めた威圧感を受け流しつつ、当初の疑問を投げ掛けた。
「じゃなくて、執行部が抑えられるんでしょう?なら、あなたは別に
気にしなくてもいいんじゃないの?」
「・・・渡瀬秋桜によって、執行部の主力の大半が病院送りになったわ。
それから、裏で何者かが動いているわ。」
彼女の話を聞く限り、どうやら私たちも動かなければならないようだ。
執行部の主力と言えば、卓越した武術を使いこなす。
私が彼らの力を借りることも少なくない。
「言うまでもなく罠でしょう、敵は渡瀬秋桜の力を使って執行部の戦力を削りに来た。
で、黒幕の正体は掴めているのかしら?」
私の問いに、蒲公英は溜息をつきながら首を振った。
「この件に関しては、生徒会として調査を依頼しているんだけど、
おかしなことに全く情報が入ってこないのよね。」
「・・・生徒会内部の人間が情報を遮断している?」