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ひまわり☆彡スピリッツ  作者: はりねずむ
第一章 タイラント
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姫咲向日葵 その13

 まさか、あのような形で和解を持ちかけるとは思わなかった。いや、彼女からすれば、そもそも和解という考えがおかしいのだろう。彼女の中では、副会長との関係に変化などないのかもしれない。副会長は、未だに理解できないといった様子だ。ソファから立ち上がり、目の前に立つ蒲公英が、まるで未知の生物であるかのような視線を送った。


「・・・謀反を起こした人間を、まだ部下と?しかも、監視が目的ではなく、単純に俺に配下として働けと言うのか?頭がおかしいのか!?」


 副会長が声を荒げた。驚いた。彼がここまで感情を露わにするのを、私は見たことがなかった。蒲公英も同じだったようで、少し驚いたような表情を浮かべた後で、微笑みながら、一歩前に踏み出した。握手を求めるように、手を前に出す。


「・・・頭がおかしくなければ、あの学園の生徒会長なんてやっていけないわ。それに、私は優秀な人材を無闇矢鱈に切り捨てるなんて、勿体無いことはできないわ。」


 蒲公英は、更に一歩進む。「さぁ、帰りましょう。仕事が山積みなの、色々とね」彼女が言うと、副会長は困惑した表情で後ずさった。だが、それよりも早く、蒲公英が駆け出した。あっと言う間に副会長との距離を詰めると、強引にその手を掴み、握手を交わした。


「・・・だ、だが、流れは変わらない。既に歯車は噛み合っている。俺の手の者によって、生徒会不信任号令が提示される予定だ。それに、遅かれ早かれ、ハウンドの噂を不審に思った生徒が、行動を起こすかもしれない。そういう、流れなんだ・・・!」

「そう、流れはある。だけど、貴方が言うところの大きなモノが選んだ結末は、貴方のそれとは全く違うわ。流れによって動きだしたのは、生徒会の未来ではなく、学園の未来。」


 蒲公英の言葉にいち早く反応したのは、他の誰でもない、私だった。「学園の、未来?」オウム返しにしながら、これは、ひと波乱あるぞと思った。蒲公英がこれから口にしようとしているものが、副会長のクーデターにも匹敵するであろうことは明白だった。


「今の学園における問題点は、一つはハウンドやスイーパーといった暗部の存在。確かに、彼らの存在を隠し続けるのにも限界がある。上に隠し事をされれば、下は不信感を抱き、組織の中に不協和音が生じる。悪化すれば、クーデターなんかも起きる。これは、まさに今の状況ね。そして二つ目、個人が権力と武力を私的に行使できる可能性があるという点。これに関しては、私がさっき否定したばかりだけど、問題は、その“可能性”にある。人というのは、“事実”よりも“可能性”に恐怖する。『絶対に事故は起きませんよ』という事実が提示されていたとしても、『もしかしたら事故が起きてしまうかも知れない』という可能性の方に関心が向き、やがて“可能性”が“事実”へと上書きされる。これは、学園の未来の状況。貴方の言うとおりになるのは、間違いないわ。」


 まるで、目の前に置かれた原稿を読んでいるかのように、長々と、淀み無く話し続けた蒲公英は、ひと呼吸挟んでから、そして、とさらに口を開いた。


「そして、これらの問題点を根本から解決する唯一の方法が、情報の開示。隠密治安維持部と掃除部の存在と、彼らが学園の暗部を担っていたことを公表する。それから、学園の極端すぎる生徒主権を一部改正する。私の行動を逐一監視し、記録し、発表し、是正する者を側に置く。その役目は、副会長、貴方に頼みたいと思っているわ。」


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