風嵐侘助 その6
言いながら俺は駆け出した。突然の特攻に相手の動きが一瞬鈍る。その隙を見逃すほど俺は甘くはない。鉄パイプを振り回し、あっと言う間に4人を叩き伏せた。
「なんだよ、コイツ!こんな化け物相手にするなんて聞いてねぇよ!」
不良の1人が怯えながら叫び、転がるように走り去っていった。それに釣られるように2人、3人と逃げ出す。ハッ、腰抜け共が・・・!だが、良い判断だ。残ったのは金髪とかなり体格のいい大男が2人。だいぶ数は減ったが、少々厄介そうなのが残ったもんだ。
今までの奴とはレベルが違う。まぁ、3人まとめて掛かってきて漸く俺と五分くらいってところだがな。
先ほどまで強気に息巻いていた金髪の顔が僅かに強ばっている。
「な、なかなかやるじゃねえか・・・!けどな、下っ端倒したぐらいで粋がるなよ!俺やコイツらはさっきの奴らとは違うぜ!」
そう言って金髪はバタフライナイフを構えた。2人の大男も手にメリケンサックを装着しており、どうやら俺を殺す気でくるらしい。
まず大男が突っ込んできた。左右に別れて挟撃してくる気か。左から来る大男(コイツは大男1と呼ぼう。)のパンチをかわし、次に右から来た大男(コイツは大男2だな。)の鳩尾にボディブローを打ち込んだ。
だが、思った以上に手応えがない。大男2はややよろめいたが、すぐに体勢を立て直して殴りかかってきた。どうやら、図体のデカさは見掛け倒しではないらしい。
「チッ、なかなか鍛えてやがるじゃねぇか!」
大男2のパンチをかわし、素早く背後に回り込んで腰に腕を回す。がっちりとクラッチしたまま投げっ放し式ジャーマン・スープレックスを決めてやった。もちろん、これで終わりじゃない。コイツの背後に隠れて不意打ちをかまそうとしていた金髪にぶつけることが本当の狙いだった。直撃の瞬間は見られなかったが、派手な音と共に金髪のうめき声が聞こえたから、狙い通りってところだろう。さて、最後に残った大男1を見ると、すでに戦意は失っているようだ。ただ、このまま逃がすわけにはいかない。
「さて、残すはテメェだけだが、俺の質問に答えるってんなら、特別に見逃してやっても構わねぇぜ?答えろ、テメェらは何者で、何が目的なんだ?」
俺が詰め寄ると、大男は僅かに後ずさった。答えるか否か、決めかねている様子だった。しょうがねぇ、もう2、3発いっとくか・・・。そう思って、さらに間合いを詰めた時、公園の入口あたりから声が聞こえた。
「その質問には、俺が答えよう。」
そこには、灰色のパーカーを着たスキンヘッドの男が立っていた。俺はコイツに見覚えがあった。というか、完全に知り合いだった。
「・・・雷桐?」