風嵐侘助 その5
5月12日
午後5時、俺は公園にいた。もちろん1人じゃない、15人ぐらいの不良に周りを囲まれている。まったく、冗談じゃねぇぞ・・・。
「ハァ・・・、あのな、テメェら、喧嘩を売る相手を間違えてるぜ?俺みたいな一般市民を囲んだって何も出てきやしねぇよ。さぁ、そこを退け。」
なるべく丁重に、面倒なことにならないように言葉を選ぶ。下手に出るのは少々、いや、かなり癪に触るが、致し方あるまい。俺が相手の返事を待たずに歩き出すと、不良たちは僅かに距離を詰めてきた。コイツら、何だ・・・?
「お前、風嵐侘助だろう?お前に恨みはないが、ちょっと来てもらおうか。ついでに少しばかり痛い目にも遭ってもらうことになるが、覚悟はいいか?」
金髪の男がそう言った瞬間、2人の不良が襲いかかってきた。2人とも鉄パイプを持っている。チッ、問答無用ってことか!
「そういうことなら、容赦はしねぇぜ!」
降りおろされた鉄パイプを掴み、同時に鳩尾に蹴りを食らわす。手の力が抜けた隙を突いてそれを奪い取り、襲ってきたもう一人の不良の太腿目掛けてフルスイングした。完璧な手応えと共に鉄パイプがめり込み、不良が叫びながら倒れ込んだ。
ド素人が、頭を狙われなかっただけ有難いと思えよ。久しぶりの喧嘩に血の滾りを感じていると、最初に蹴り飛ばした奴が起き上がろうとしていた。へぇ、なかなか根性があるじゃないか。俺はそいつの顔面に蹴りを入れ、再び起き上がらないように背中を踏み付けて地面に這い蹲らせた。
「こうなっちまえば戦争しかないだろう?おい、次はどいつの番だ?誰でもいいから早く掛かってこいよ、どうせ全員潰しちまうんだから。それと、先に言っておくが、この喧嘩はテメェらが吹っ掛けてきたもんだ。文句は言うんじゃねぇぞ・・・!さぁ、来いやぁ!」
俺の怒号に数人の不良がたじろいだが、さっきの金髪を含め、他の奴らからはまだまだ殺気をビシビシ感じる。イイねぇ、それでこそ、殺り甲斐もあるってもんだ。まぁ、この程度の威嚇でブルっちまうような奴に、興味は無いけどな。
鉄パイプを肩に担ぎ、周りを睨む。すると、一人の不良が弾かれたようにこっちに突っ込んできた。武器は木刀だ。
「この、なめてんじゃねぇぞ!」
「良い気迫だ!だが、脇が甘ぇんだよ!」
木刀を鉄パイプで弾き返し、脇腹にミドルキック。相手の体勢が崩れたところを狙って顔面に左ストレートを叩き込む。不良はたまらず後ろに倒れた。
相手はまだ多いが、飛び道具を持ってないだけマシってもんだ。接近戦ならこっちの方が圧倒的に有利、そもそも踏んできた場数が違う。
「さぁて、まどろっこしいのは嫌いでね、そろそろ俺からいかせてもらうぜ・・・。俺を連れて行きてぇなら、殺す気で掛かってきな!」