天骸百合 その2
まずは手頃なところから、近所の商店街を探してみることにした。街の中央部
にある商店街よりかは小規模だが、それなりに活気もあって人通りも多い。身を
隠すには打ってつけな場所だ。
「おう、百合ちゃん!神主様はお元気かい!?」
いつも陽気な八百屋のおじさんの声が聞こえた。
「・・・ええ、お陰様で、とても健康です。」
「そいつぁ、結構!ところで、どうだい、良いジャガイモを仕入れたんだが、
一つ試食していかねぇかい?」
美味しそうなジャガバターが出てきたところで、向かいの魚屋のおばさんと
和菓子屋のおばさんが小走りに駆け寄ってきた。
「あらあら、美味しそうなジャガイモだこと!ちょいとあたしらにも分けておくれ
よ。ほら、皆、八百屋さんが上物のジャガイモを御馳走して下さるらしいわよ!」
魚屋のおばさんが大声で言うと、商店街に居た人たちが何事かと集まり出した。
あっと言う間に八百屋の前には人集りができ、おじさんの姿は隠れてしまった。
「さぁ、急いでるんだろ?早くお行きなさいな!」
和菓子屋のおばさんは私の肩に手を置いて耳打ちしてきた。お礼を言おうと口を
開いたが、それよりも先に八百屋を囲む輪の中へと入っていった。仕方がないので
軽く頭を下げ、小走りでその場を後にした。
この商店街のみんなには、いつもお世話になっている。最初は、神社である家柄
を見て構ってくれているのだろうと思っていたけど、そうではなかった。父自身の
人徳もあるのだろうが、そもそも商店街の人たちの面倒見が良かったのだ。
「・・・素敵な人たちに巡り逢えて良かったわ。」
そう呟いた時、商店街の入口前を横切る二人組を見つけた。男女のようだが、恋人
同士というわけではなさそうだ。前を歩く男性は目深に帽子を被っているが、目隠し
をされている。おそらく、彼が対象だろう。ただ・・・。
「・・・誘われているわね、確実に・・・。」
大貫君が応援を呼ぶことを予測していたなら、仲間を燻り出して各個撃破していく
ことも可能だ。もしかしたら、私は最初の獲物になってしまうかも知れない。
最悪の事態を考え、私は部長に連絡をとった。長い呼出音の後に、いつもどおりの
部長の声が聞こえた。
「はい、もしもし?どうしたの?」
「・・・大貫君のお友達が何者かに拉致されました。大貫君からの追加情報によると、
犯人は物騒な連中らしいですが、どうやらそれだけじゃなさそうです。裏事情にも相当
詳しい相手だと思います。御助力を・・・。」
「あなたがそんなに喋るなんて、余程の事件らしいわね。・・・分かった、すぐに合流
するから少し待ってて。今何処に居るの?」
場所を伝えようとしたとき、前方を歩く二人が路地へと入っていった。
「・・・すみません、待ってる時間はなさそうです。案件には風嵐君も参加している
ので、とりあえず彼と合流してください。もし、これ以降私からの連絡がなかったら、
商店街近くの路地を探してください。では、後はお願いします。」
電話を折畳み、私は彼女らの後を追った。