大貫山茶花 その3
僕は自嘲的な笑みを浮かべながらプレハブ小屋を出た。
制服に付いた埃を叩き落とし、携帯電話を開いて時間を確認する。
「1時ちょい過ぎ、か・・・。これは、次の授業には間に合わないかなぁ。
まぁ、いいか・・・部長より不良かもね・・・。」
煙草をくわえ、オイルライターで火を点ける。
「ヘイヘイ、ニコ中野郎かよッ!」
聞き慣れた声がした。恐る恐る振り返ると、土手の上に渡瀬さんが
笑みを浮かべて仁王立ちしていた。え、マジですか・・・?
「ゲホッ、ゲホッ!わ、渡瀬さん!?なんでここに!?」
「時間割の変更を伝えに来たのさッ。次は臨時の全校集会だよッ。」
ザザザッと土手を滑り降りてきた彼女は、依然として笑い続けている。
僕は唖然として歩いてくる彼女を見つめることしかできなかった。
ヤバイところを見られた、嫌な予感しかしない・・・!
「まさか、山茶花くんがまだニコ中野郎だったとはね、驚きだよッ。
私はてっきり、もう足を洗ったものと思ってたんだけどなッ。」
僕と彼女の距離が1メートルを切った時、突如彼女の顔から笑みが消えた。
腐った物を見るような目で見ながら、制服の上から煙草を握り潰した。
「3人で約束したよね、もう煙草は止めるって・・・。
夜須くんはきっぱり止めたって言ってたよ?もう吸いたいとも思わないって。
山茶花くん、言い訳はしなくていいの?もしかしたら、何かの間違いで
許してあげるかも知れないよ?」
言い訳?できるわけないでしょう・・・。
僕は覚悟を決めて首を横に振った。一瞬、彼女が笑ったように見えた。
だが、僕がそれを認識するより先に、彼女の拳が僕の腹にめり込んでいた。
「・・・うぅッ!!」
目の前で星が散った。比喩ではなく、本当にチカチカしていた。
内臓がざわざわと騒いでいる。呼吸ができなくなり、全身の力が抜ける。
「安らかに・・・。」
渡瀬さんが何やら物騒なことを言った気がしたが、僕の意識は朦朧としていて、
次の瞬間には視界がブラックアウトしていた。
あぁ、なんか、とっても清々しい気分だ・・・。