12日目:願え!!自らの意思の赴くままに!
まぁ。
鎧を倒したときにこぼれた光からも想像できたが、外は晴れていた。
この物語の流れとしては、そういうハッピーエンドの様な流れは好ましくないような気がするけれど。
ああ、そうか。
エンドじゃないのだろう。きっと。だったらこの晴れ間は、単純に僕らの話に介入してきた、1つの晴れの日に過ぎない、というわけだ。
閑話休題。この12日間で僕はこの言葉を幾度となく使ったね。それは僕自身、話がそれやすい性格だからだろうか。
12日・・・・・・。
つまり、図らずも時間は0:00だったのだ。
真夜中、月の光がまるで木漏れ日のように鎧の体を照らしたのだ。
「さてと・・・・・・。どこから始めるべきか・・・・・・」
そう言って、学校の机と椅子を横一列に5つ並べ、教壇に座っている少年は言う。
眼鏡をかけ、いかにも軽薄そうな風貌だ。
「ああ、どうぞ。座って。青空教室と行こう」
「貴様・・・・・・一体何者だ」
神道はそう言って質問する。
「まぁ、いいから座って座って」
「何者だと訊いているんだ」
「座れ。いいから。話はそれから」
そう言って、明らかな怒りを見せる。
「・・・・・・」
僕らはそれぞれ、席に座っていく。
「よろしい」
そう言って、少年は指を鳴らした。
キーン、コーン、カーン、コーン・・・・・・キーン、コーン、カーン、コーン。
と、チャイムが鳴った。
「・・・・・・はい、チャイム鳴りました。授業始めます起立着をつけ礼着席」
軽薄な調子で、一気に言った。どうでもよさそうだ。
「授業なんか、どうでもいい。貴様は誰だ」
「誰だっていいだろ?お前らには俺のことは分かってるはずだから」
「・・・・・・ヒラオカか」
「はい、では適当に話を始めまーす」
少年は同意はせずに話を始めた。
「さてと、まず、この戦線についてだな」
「おい、貴様・・・・・・」
「いいか?ここでは俺がルールだ。だから、君らは取り敢えず、話を聞け。」
少年はそう言って僕ら全員を睨む。
「うん、これは昔からあった伝統行事なのさ」
「伝統行事・・・・・・!?」
羽賀が反応する。眼には眼帯代わりのように包帯を巻いている。
「ああ、ゴメン。嘘」
「コイツ・・・・・・!!」
怒りがたまってきたのか、神道は拳を構え身を乗り出す。
「はい、タンマ。俺は君らが思っているより弱いから、一発殴られたら、この学校中の銃火器を作動させちゃうよ」
「・・・・・・くっそ」
「OK、嘘はつかないように頑張るよ」
相変わらず適当な調子で少年は続ける。
「伝統行事ではないけれど、長々と続いていた事は事実だ。俺は確か、273028回目の『黒幕』だから」
「はぁ?」
いきなり嘘つきやがったぞ。
「いやいや、別に嘘はついていないからね?」
「・・・・・・どういう意味?」
橋田が訊く。
「南瓜生中学校は273028回、この戦線を行っているのさ。まぁ、『シンデレラバトローション』は俺が名づけたんだけど」
「貴方、何を言っているの?」
「分からないか?うーん・・・・・・」
そう言って少年は頭を掻いた。
それから、
「まぁ、簡単に言ってしまうと、この戦線は勝利者の願いによって273028回、行われているんだよ」
と言った。
・・・・・・。
・・・・・・意味が分からない・・・・・・。
何が言いたいんだ?
「あー、ダメか。OK、そうだよ。先にこっちを話せばよかった」
何かを思いついたように少年は言う。
「さぁ。君らの願いを叶えてあげよう」
「・・・・・・はぁ?」
「言ったろ?君らのメリットとして、何か1つ願いを叶えてあげるって」
「・・・・・・それなら、さっき1つ話し合った」
神道が言った。
「この戦争で死んだものの復活だ」
その発言を聞いた少年は言った。
「・・・・・・やっぱりそれか」
ふぅ、と教卓の上に座り込んだ。
「何だ?出来ないのか?」
神道はそう言って、少年を見下す。
「いいや、出来るよ。現に、前回の戦いでただ1人の勝者になった者は同じ願いをした。そして、叶えてもらった。条件付でね」
少年は笑う。
何だ。出来るのか。
だったら、これで戦争終了。
本当にハッピーエンドだな。
「そして、その少年は今、君達の目の前に居る」
・・・・・・は?
何言ってんだ。コイツは。
「・・・・・・まさか・・・・・・そういうことなのか!?」
「私も分かったわ・・・・・・!」
神道と無花果がそう言って驚く。
「どういうことなんだ!?」
羽賀が尋ねる。
「先ほど言った奴の発言から考えて・・・・・・」
神道は言った。
「この戦線での勝利者が願うことの出来る願いで、命に関わる事は願える。条件付で」
「条件って何なんだよ!」
羽賀は叫ぶ。
その問に答えたのは、少年だった。
「もう一度、この戦争を行う。そしてその黒幕となることだ」
「ど・・・・・・どういう意味だ!訳わからねーぞ!」
僕も全く同意見だよ、羽賀。
どういうことだ・・・・・・。
「この戦争を始めた者が一体どんな奴だったのかはわからないけど、『黒幕』には、願いをかなえる力を与えられている。そしてその力を使い少年達の願いをかなえることが出来る」
それは勝利者だから、先生側であったり、生徒側であったりする。
少年はそう言って続ける。
「俺がこの戦線で唯一の勝利者となった時、願った事は全員の復活。そしてその時に聴いたことによれば、この願いをかなえるためには、そのメンバーでもう一度戦争をすることだ」
「・・・・・・待て!それはつまり――」
神道が驚いた顔で言う。
「そう。俺達は元々は仲間なんだよ。結弦、祝人、明日香ちゃん、弥生さん」
笑えるだろ?
少年はそう言って、苦笑する。
「そして、それと同じ事が、以前に27万近くも行われてたんだ」
僕なりにまとめるとすれば。
この3月の卒業式の日から、数日間の戦線が行われた。
そしてその勝者が願ったのは、死んでしまったものを生き返らせること。
そして黒幕はその代償として『その復活した人間をもう一度戦争させる事』。
と、もう1つ。
『復活した人間の中で出てきた勝者が願った願いが『人の生命に関わるもの』だった時、その願いをかなえる際には、黒幕としての使命を課す事』だった。
この無限ループだったという事だ。
そして今回の黒幕・・・・・・あの少年も同じだったという事か・・・・・・。
道理で僕や無花果、神道や橋田や羽賀の隠された情報がばれてるわけだ。
「もちろん、黒幕の代わりに別の人間が入らなければならない。それはまるで昔から居たかのように、卒業式の日から始まる。そして俺の代わりに入ったのが」
そう言って少年は指を差す。
「如月幽鬼・・・・・・貴様だ」
「・・・・・・」
「お前1人で、俺のときとは違い、5人も助かるなんてな・・・・・・。全く、俺が役に立たなかった事が浮き彫りじゃないか」
「知るか」
「強気に出るなぁ・・・・・・。まぁいいや」
少年はそう言って、笑って、そして最後の言葉を言った。
「願え!!自らの意思の赴くままに!」
人は願い続ける。
それが自らのためなのか、愛する人のためなのか、家族のためなのか、友のためなのか、命のためなのか、相手もわからぬ誰かのためなのか。
まぁつまり、題名は僕のコメントです。
願え。自らの意思の赴くままに。