11日目:最後と最期と、サイゴ
僕は、神道のナイフを奪った。
「何をする!」
「お前は銃使ってろ!ナイフ技術は俺の方が上だ!」
「武器の数が足りない!そんなに多用は出来ん!」
そう言って、神道は腰から2挺の銃を出す。そして構えた。
「いや。兆弾するな」
自らでそう言って、銃をトンファーのように持って、鎧の頭部を殴る。もはや天井の概念などなく、完全に開けている。なので頭部を狙うことも可能のようだ。
ガン!と。
無花果に気を取られていたのか、思い切り衝撃を受け、鎧の体が一瞬よろめいた。
「効いてる!」
「任せろ!」
神道に続いて、僕はナイフを持って鎧の顔面を柄の部分で狙う。
「・・・・・・」
鎧は黙って――それでも怒りを感じさせる雰囲気で、右腕で僕と神道を払いのける。
「くっそ!」
しかし、その間に無花果も動いていた。鎧の足を自らのつま先で蹴る。
「う・・・・・・」
相手は鋼鉄。当然、無花果も痛いはずだ。
しかし、鎧のほうにも予想外の攻撃だったようで、バランスを崩して、片膝を折る。
「もう一発!」
僕はナイフの柄を垂れ下がった頭に横殴りに叩き付けた。
ドガン!
と、今度こそ鈍い音を立てて、鎧は倒れる。
「っしゃ!1ダウンとった!」
「そういう問題じゃないだろう!」
「弱点が分かった!」
橋田は僕たちの会話にわって入るように言う。
「取り敢えず、現状をどうにかしよう!鎧から離れたい!」
橋田はさらにそう言う。
「でも、どうやって――」
「任せろ!」
そう言って、大筒を持って現れたのは羽賀だった。
「ソイツは・・・・・・」
「最新機械の詰まった、よく分からないバズーカだ!」
羽賀はソイツを倒れた鎧に向ける。
「俺に任せて、先に上がれ!」
「フラグじゃねーか!」
「俺は死なない」
羽賀は良く分からない、液体をポンプに流し込む。
俺達はそれを見て、上の階に上がる。
「それ何?」
無花果が訊きながら、階段を上がる。
「ガソリン」
「そう。お気をつけて」
「おう」
羽賀は引き金を引く。
バズーカの砲口にまるでアニメのようなエネルギーがたまる。
「食らえ!」
「・・・・・・!」
鎧は驚いた・・・・・・と思う。
熱エネルギー。空気を圧縮したようなものが、発射され、鎧の体を包んだ。
上の階の僕らの教室。僕らの武器が置かれてある。残っているのはライフルが1挺。日本刀が1つ。ナイフが1つだ。
そこに、残った僕らは居た。
「単刀直入に言えば、隙を見つけてあの鎧の中の人を殺せれば勝ちだよ」
橋田はそう言う。
「どういうことだ?」
「見ていて分かりましたが、アレはどうも鎧をかたどった、別の何かだ」
「鎧の中に何かがあるのではなく・・・・・・ということだな?」
神道の発言に橋田は頷く。
「その証拠に、鋼鉄であるものを攻撃しても、へこみもしなければ、腕に痺れを感じていない」
「あぁ・・・・・・確かに」
「それに無花果さんの足が折れていないのも不自然だよ」
「そうね」
「そして、最大の弱点・・・・・・それは」
橋田は勿体つけて言う。
「アレの頭部にはほとんど防御力がない」
「そう・・・・・・なのか?」
「しかし、あのバズーカ程度の攻撃では殺せていないのもまた事実」
「と・・・・・・なれば」
羽賀が言う。
橋田が頷く。
「隙を突いて一気に頭部を狙おう」
「・・・・・・貴様ら、武器を持て」
そう言って、神道は自分の腰から2挺の銃を取り出した。
僕は自分の腰から、愛用のナイフを出した。
橋田は武器置き場の銃を1つ持った。
羽賀は自分のクナイや手裏剣の数をチェックした後、日本刀を持つ。
無花果も武器を持つかどうかで迷い、結局ナイフを持った。
「どうするんだ?」
「自分の名前を刻め」
そう言って神道は自分の銃2つに『神道 結弦』と刻み込んだ。
「・・・・・・」
黙って僕も自分のナイフの柄に『如月 幽鬼』と名を刻んだ。
無花果もナイフに『無花果 弥生』。羽賀は日本刀に『羽賀 祝人』。橋田はライフルに『橋田 明日香』と刻み込んだ。
神道はそれを見て、言う。
「いいか。コレが使えなくなったときが、俺達の最期だ」
「・・・・・・」
「『名』とは『命』だ。俺達の戦いを最後にするか。俺達自身が最期になるか」
「戦争だな」
羽賀が言って笑う。
「泣いても笑ってもこれが『サイゴ』だぜ」
羽賀が言う。
「精一杯、できることをやった・・・・・・って、慰めでしかないよね」
橋田が言う。
「勝利より得るものなんて無い。私達は真っ当にはこれから生きていけないでしょうけど、勝利して命を勝ち取るしかないわ」
無花果が言う。
「俺達の戦線を終わらせよう。大人になるためにな」
神道が言う。
ドガン!!
と下の階から、鎧が飛び出してきた。
「ラスト・バトローションだ」
僕は冗談交じりそう言った。
鎧は大剣を振りかぶる。
次話 戦線終了します。
かなり長い文字数になります。