11日目:終末のためには、思考
「・・・・・・」
鎧からは空気の漏れる音しかしない。
「何故気付かなかった!!」
神道はこちらに走ってきながら、言う。羽賀と橋田もやってきて、3人とも距離を置いて止まった。
「彼が話しかけてきたから、と言いたいところだけれど、要因はいくつもありそうね」
「いくつも・・・・・・」
僕は状況を整理しなおす。
「そうか・・・・・・。この血だ」
「血?」
「ああ。羽賀なら、鎧の『匂い』を追えたかもしれないけれど、それを邪魔するように、『血』の匂いが充満していた」
「ああ・・・・・・」
羽賀がそう言って納得する。
「そして、この血の海によって雑音が増えた。雨によって、自然に音はなり続けるから、鎧が近づいてきても気付きにくい。そこに僕が話しかけて、無花果の集中力が切れかけた瞬間に襲ってきたんだ」
「くっそ・・・・・・考えやがって・・・・・・」
神道がそう言って、ポケットからナイフを取り出した。ふたもしていないナイフだった。そして微塵も躊躇することなく飛び上がり、鎧に突っ込んだ。
東部に向かって、ナイフを突き立てる。
「!?」
弾かれた、なら分かる。
折れた、も頷ける。
『避けられた』。
「な!」
「・・・・・・」
鎧は黙って、大剣を振りかぶった。
「神道!」
羽賀は神道の下に潜り込んで、体を無理やり引っ張った。
「すまん!」
「お。素直じゃん!」
そう会話して、階段側に滑り込む。
「にしても・・・・・・速い」
羽賀は態勢を整えなおして、そう呟いた。
「こりゃあ、場所を変えるわけにはいかなさそうだな」
「時間も余裕もなさそうだ」
珍しく、羽賀と神道はケンカせずに会話している。
「せめて!」
羽賀は言って、煙球を床に向かって投げた。
破裂して、煙が出る。
「逃げるぞ!」
羽賀が叫んだ。
確かに、今は態勢を整えなおさなければならないだろう。これで何とかなるなら儲けものだ。
しかし。
「ダメ!」
橋田が叫んだ。
「赤外線レーザーが出てる!逃げれない!」
「マジかよ・・・・・・」
「大丈夫・・・・・・私に任せて」
橋田がそう言った。
煙が晴れる。
「・・・・・・あれ?」
羽賀が居ない。
どこ行きやがった?
「油断するな!来るぞ!」
神道はそう叫んだ。
見ると、鎧が大剣を振り上げていた。
僕はギリギリのタイミングで振り下ろされる大剣を避けた。
「私が、あの鎧の弱点を探します!」
橋田は叫んで、後ろに下がる。
「見つかったら教えろ!俺が作戦を考える!」
神道もそう言って、鎧に効くか効かないか分からない、ナイフ投げで攻撃をする。
「なら私達は鎧の錯乱かしら?」
「だな。羽賀が居ないのが心細いが」
俺達はそれぞれの役割を把握し、戦いを始めた。