11日目:現れる姿は、紅い
クライマックスまであと少し。
凄惨な風景。
という言葉の意味を僕は知らなかった。凄惨だって、読み方を知らなかったくらいだ。
でも、隣で
「凄惨だな・・・・・・」
と羽賀が使っていたのを聞いて、ああ、こういうのを凄惨というのだな、と理解した。彼の使用用途が正しいかどうかは不明だが。
閑話休題。
僕らが居た階から、2階上。
その空間の廊下は黒が占めていた。
廊下は立った5人分の血とは思えない量の血が滴り、緑がほとんど見えない。赤と緑の色合いが絶妙だったのだろう、見事に黒色になっていった。
ただ、1つ言うならば、死体は全て一突きで殺されているということだ。体験の一突きなので、上半身には穴が開いたようなものだが。
「快楽のためにやるようなことはやっていない。大量殺戮兵器・・・・・・ということだろうか?」
神道はそう言って、歩いていく。ぴちゃぴちゃと音がなる。
「鎧はどこへ行ったのかな?」
橋田も気にせずに血の海(あまり、使いたくない表現ではあるが)を歩いていく。
そういえば、どうして橋田は人の死体に関して耐性があるのだろう。その辺りのことを聞いていない。
だが、今聞かなければならない事ではないだろう。
「足跡でもあれば見つかるんだろうけどなぁ・・・・・・」
2人に対して羽賀は天井を歩く。
足を汚したくないのだろう。忍者は自分の足跡が残りかねないようなことを拒む。
「油断は禁物。できるだけ、注意力を底上げしておきなさい」
そう言って、無花果は動かない。
「ふむ・・・・・・」
天井には穴が開いている。つまり、あの鎧が『小さくなる』などということはありえないわけだ。
その天井の穴から見てみると、上の階にも、その上の階にも穴が開いている。場所によって、雨のしずくが落ちてきている。
雨・・・・・・。
今日は雨ということか。というか、屋上まで穴が開いているということだな。
「どうも、全ての階を歩く事で、穴を全ての天井に開けているようだ。音でアイツを捜すのは困難そうだな」
僕はそう言って、少しずつ血の海に足を踏み入れる。特に抵抗は無い。
こうやって歩いていると、ぴちゃぴちゃと音が鳴る。これでは鎧が来ても、誰の足音か分からないな。
「無花果、アイツは来てるのか?」
僕が振り向いた。
「分からないわ。それより集中の邪魔をしないでちょうだい」
鎧が無花果の横に現れた。
「無花果!」
「え――」
無花果の体に大剣が突き進む。
「くっそが!」
僕は叫んで、飛び、無花果の体を押し倒した。
大剣は見事に空を切り、壁に突き刺さった。
僕と無花果の服や肌は、赤く染まった。
鎧の体は、紅く鈍く光っていた。
さぁ。最終決戦だ。