11日目:振り乱す未来は、命
思考を中断させるかのごとく、その大剣は今度は横薙ぎに僕たちを狙ってきた。
「しゃがめ!」
僕は咄嗟にそう叫んでから、自ら体をかがめる。
僕の言葉に、ようやく意識を取り戻した皆も同じようにしゃがむというより、しりもちをつくといった感じで大剣を避けた。
「大丈夫か!?」
神道がそう叫んだ。
その声に返答したのは橋田だった。
「怪我人は居ない!今の内に態勢を整えなおそう!」
「了解だ!!」
そう言って神道は、羽賀と無花果に向かって言う。
「一旦、引くぞ!」
「了解」
「了解したぜ!」
返答後、2人はその『鎧』と距離をとる。
「バラバラに逃げて、数人と合流していけ!個人行動は取らず、2人以上で固まって散れ!」
そう言って、神道は階段を飛び降りる。
「1人で行くなって!お前が言ったんだろ!」
「私もいくよ!」
羽賀と橋田も一緒について行く。
「早く逃げろ!」
僕はそこに居た皆を押し出す勢いで叫ぶ。
ハッとした顔をして全員が教室を、遠いほうの扉を通って出て行く。
「如月君!」
無花果が叫んだ。
そう言われてから、自分の体を大剣の影が包み込んでいる事に気がついた。
「くっそ!」
僕は咄嗟に体をねじまげるようにして、その大剣をかわす。
ズドンと、剣とは思えない鈍い音を立てて廊下を破砕する。
「マジかよ・・・・・・」
と、落ち着いた瞬間、剣が動いた。
「!?」
横向きに僕を狙うように、剣が動き始めている。
やばい!
剣は持ち上がり、横向きの動きを見せた。
ズドン!!
と、もう一度剣は床へ落下した。
「油断しないで。逃げるわよ」
剣の上に立ち、無理やり動きを封じ込めている。
「悪ぃ!」
僕はそう叫んでから、鎧の背後に回る。
「それでいいの」
そう言って、無花果はスーパーボールのように飛んで、鎧の背後へ。
鎧が重く振り向いた時には、俺達はその階から離れる事に成功した。
「危なかった・・・・・・」
「貴方、注意力散漫すぎよ」
「何だろう・・・・・・、ちょっと衰えたな」
「昔の感覚?」
「あぁ・・・・・・」
殺人鬼だった当時の僕ならば、あの程度避けられたに違いない。
「馴れ合い・・・・・・ね」
無花果はそう言って僕を見下すように見た。身長的には僕のほうが上だけど。
「当時の感覚はもう戻らないでしょう。貴方はちゃんと一線を画していなかった・・・・・・。『人』と『己』を」
「・・・・・・」
「全力で人間関係を拒んでいた貴方の方が私は魅力的だったわ。今みたいに、殺人鬼として認めて、人間関係を築き上げたような男よりは・・・・・・ね」
「・・・・・・」
あれ?もしかして、僕振られた?
まぁいいか。
「でも」
無花果は続ける。
「今の貴方の方が強そうね」
「・・・・・・はぁ?」
「守るものがあれば、人は強くなる。私ならば『伝統』ね」
「なるほどね・・・・・・」
「中二的発想だけど」
「言っちゃダメだぜ」
僕はそう茶化すと、ようやく上がっていた息も戻ったので
「行こう」
と言って、僕は階段を降りて、先ほどの鎧の場所へ行こうとする。
「ええ」
とついてきた。
・・・・・・ふむ。
「なんとなく実験というか、背水の陣がいいと思うんだ」
「そう。で?」
「この戦いが終わったら結婚しよう」
「死亡フラグね」
そう言って、笑った無花果は、
「いいわよ」
と続けて僕の前を歩き始めた。
「・・・・・・はは!」
やれやれ、どうも、本当に負けられなくなった。
フラグ立てちゃったよ・・・・・・www