9日目:ニョツキ
きさらぎ→如月→ニョツキ
30分くらい経った。僕が倒れてから合計で1時間経ったことになる。
・・・・・・。
「・・・・・・終わったぞ」
神道が脈を取ってからそう言った。
「こっちも・・・・・・」
木戸はそう言って俯いた。
・・・・・・。
「死んだな」
神道はそう言った。
結論を先に伝える事にしよう。
蚊に刺されて生き残ったのは僕だけだった。
理由は、活力の違いだったと思われる。
「血清は実のところ、貴様には余り使っていない。ほぼ同時に他のメンバーが同様の症状に陥ったからな。貴様なら何とかなると信じていた。だから、そうしたのだが・・・・・・」
つまり僕は誰よりも生きにくい状況で生き残ったのだ。
「そもそも、この毒なら普通は死ぬ。本来なら全部使わなければ助かる命なんて1つも無かったはずだ。貴様の生命力の勝ちということだ」
違う・・・・・・。
多分、僕の『血』だ。血族だ。
僕は殺すことを遺伝子レベルで組み込まれている。そこから考えてみても恐らく僕の血は・・・・・・『毒』を『殺す』ことを選んだ。
生命力じゃない。この状況で勝利したのは僕ではなく、『如月』だ。
窮地に立たされて尚、僕の生命力から何でもかんでもを強くしようとしている、如月の血。人を殺すだけではなく、殺すなら何でもいいのだろうか。
ともあれ、ここで20:8 という戦力バランスになった。
「こんな武器がどんどん出てくるの・・・・・・?」
女子の1人が言う。
「正直キツくね?」
「うん・・・・・・」
弱気な声が飛び交う。
一瞬にして大半の生徒が消し炭になった上に、得体の知れない敵に攻撃されたにしては、まだ良い方だ。
最悪、この現状に絶望するものも居てもおかしくは無かったのだから。
運良く、この後新たな刺客がくることもなかった。
9日目の劇的な戦況の変化に対応する暇もなく戦線は終了した。