1日目:部隊編制
「おい、如月。やんぞ」
羽賀が誘った。ま、いいか。どうせ少ししたら分かる。皆の無謀さや、考えの浅はかさが。
という訳で起立。女のほうも同じような感じで立ったようだ。アイツは僕と同じような感情及び考えだということだ。
にしても、あの女子・・・・・・なんか不思議な感じだ。謎を知る者、深窓の令嬢、妖艶という言葉がよく似合う。
閑話休題。
で、これからどうするのだろう。
「まずは部隊分けをしようと思う。攻撃・守備・遊撃・救護に分けて、それでバランスを取ろう。大体8人くらいで――」
「ねぇ」
先の女が言った。
「無花果さん?どうしたの?」
無花果・・・あぁ、無花果弥生か。僕がまだまともだった頃に好きになった女子だったな。そうか、あの不思議な感じはそういうことか。
「待機部隊は作らないのかしら?何があるか分からないし、人員を残しておかなければならないんじゃないの?つまりは待つ人」
「待つ・・・か・・・。あぁ、それもそうだね。うん。ありがとう」
「じゃあ僕それで」
はい、僕でーす。
「お前戦いたくないだけじゃねぇの?」
「うわっ・・・ダサッ」
男子と女子にそう言われた。
「そう言うなよ。彼は、さっきも見た通り信用はできる。心配ないって」
ナイスフォロー。僕はもう少しで「禁句」を言いそうになった。これ言うと士気がさがるだろうから、やめとこう。
「そうだね・・・。待機部隊に入ろうと思う奴、他にいる?」
「後で変更は出来ないよー」
木戸の発言に勝手に付け加える。誰も手を挙げない。勇敢だねぇ・・・。
「じゃあ私もそっちに行くわ」
無花果だ。提案者が来ると言うのは、まぁ、この場合は当然だろう。しかし、前に好きだった人が同じ班(?)ていうのはドキドキ――しないな。うん、期待してみたけど全く無かった。そういう感情も消え去った。
「・・・俺も参加しよう」
まさかの神道登場。
「あ・・神道君には、指揮側に来て欲しいんだけど・・・・・・」
木戸が神道を止めようとする。
「大丈夫だ。戦線には出れなくても、武器の中に通信機があった。それで指揮は手伝う。それよりも俺はコイツらの見張りを担当させてもらう。この2人はどうやらこの戦争に一家言あるようだからな。最後まで席を立とうとはしなかった」
あ、見られてたか・・・。コイツは厄介そうだからな・・・。
「一家言って?」
木戸が僕と無花果を見る。
「戦いたくないだけ」
僕がそう言うと、無花果は納得してくれたようだが、僕と同様で本心ではないだろう。いや、彼女は一般人だし女だ。ともかく、
「・・・・・・そうか。じゃあ早速、会議に移ろうか」
「その前に、羽賀祝人と橋田明日香もこちらに来い。その2人は能力が高そうだ」
またも神道。しかし、この人選にはどんな意味があるのだろう。
「能力が高いなら、普通に戦線に居た方がいいんじゃねぇの?」
羽賀はそう言って隼人を睨んだ。というか、羽賀・・・そのまま自分ほめた感じになってるぞ。
「能力が高いという事は、誰とでも代われるということだ。口答えせずに来い」
木戸以外には厳しいな・・・この人。で、結局、2人は理解したようだった(橋田というのは、あの静かな女子だ。素晴らしい指摘能力だ。神道と木戸には劣るが)。
「・・・じゃあ、残りの27人でバランスよく4チーム・・・いや、そんな大雑把で適当じゃダメだ。運動部でラグビー部の男子は守備に。陸上・野球・ソフトボール・サッカー部の男子と女子は特攻。剣道部と他のメンバーで、遊撃。剣道部の人で、他の人は決めてくれ。但し、友達とかそういうのは無しで、本気で戦う部隊・・・どんな態勢にでも対応できる人選で頼む。残った女子で器用な・・・そうだな・・・裁縫とかが得意女子で救護部隊を担当してくれ。残ったメンバーは、どんな目線でもなく「客観視」という目線で、自分がどれに1番相応しい部隊に入ってくれ。じゃあ、早速分かれて」
初めてこういう状況に出会ったとは思えないな。いや、間違いなく初めてではあるだろう。もし1度でもこういう状況になっていたら、僕の思っている「禁句」を間違いなく最初に言って、皆を正しい方向に向けさせるだろう。
「まぁ、僕らははぐれ者ってところか・・・」
取り敢えず纏まってきたな。しかし、彼らはこのまま戦っていくことは出来ないんだろうな。戦いが始まればすぐにでも、士気が下がる。僕はその原因も既に分かっている。
7時30分。・・・・・・それにしても
「腹減ったな・・・」