9日目:カの力
実は。
目が覚めたときに、僕の目の前には無花果が居た。
何をしようとしているのか分からなかったので、取り敢えず狸寝入りに入ることにした。そしてしゃがむと、突然人の腕を掴んだり、首元を見たり、顔を覗き込んできたりした。
何だ?コイツ。本当に何してんだ?
と思った矢先、
「これ、じゃまね」
今度は人の包帯を解き始めた。いや、別に外面的に怪我は無いからいいけれど、一応、けが人だから手荒くしないで欲しい。骨が痛いという事実は一応存在するわけだし。
「無いわね」
だから何が?
と、次の瞬間、誰にも見えていないであろう角度で、無花果は「ニヤリ」という効果音がつきそうな笑顔で笑った。
コイツ・・・・・・。僕が起きたの気付いている・・・・・・!?
そして、俺の服を捲り上げた。
何しやがんだ!
「あったわ」
だから何が!!
その後、静かになったと思うと、突然走り出して、床を叩いた。
「何やってんだ?」
僕は帰ってきた無花果に向かって言う。
「敵を倒したのよ」
「敵?」
そう言って無花果が見せた手の上には、黒い点のような模様がついていた。
「・・・・・・あ」
いや、違う。これは・・・・・・
「蚊?」
「そうよ。敵は『蚊』だったの」
「・・・・・・もしかして」
僕は無花果に乱された衣服を見る。
腹部。鳩尾の少し上の辺り・・・・・・。
「・・・・・・蚊に刺されてる・・・・・・」
「どうして、気付かなかったの?他の人はともかく、貴方なら気付けたはずよ?」
「・・・・・・あ」
分かった。
この蚊は、かなり前からココに居たんだ。
僕と、あの妙なバズーカを持っていたあの男が戦っていた最中――恐らく僕が壁に貼り付けにされた後、地面に落下した時だろう。
「この蚊が、毒を持っているということか・・・・・・?」
僕は無花果を見る。
「そういうこと」
「他には!?他にこの蚊はいないのか!?」
「大丈夫そうよ。殺意は他には感じないわ。まぁ、毒を持った蚊なんてそうそう居ないものよ。特に、人を殺そうという意識・・・・・・すなわち、殺意を持つような猛獣以外の生物なんて、居るとは思えないわ」
なるほど・・・・・・。
僕は安心して、もう一度、背を壁に預けて目を閉じた。
そして僕と同様に倒れ伏していた2人を見る。
「あの2人は?」
「貴様同様、蚊に刺された痕を発見した。羽賀の持っていた血清を貴様に使った後、2人にも使用しておいた」
その発言を聞いて、
「そうか。2人は大丈夫なのか?」
と尋ねた。
僕は、心の奥底では「大丈夫だろう」と踏んでいたが、神道は
「大丈夫じゃない。恐らく、死ぬ」
言った。
「・・・・・・は?」
題名は『かのちから』です。