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9日目:Myハンド

 倒れていた体を起き上がらせる。

 先ほどまで床と引っ付いていたかのような抵抗感を感じる。

 生徒のほとんどが動けずにそのまま床にひれ伏しているが、立った奴らも居る。当然神道と木戸は立ち上がったものの、打開策なんか見出して居なさそうだ。

 となれば・・・・・・。


 僕のやり方を貫き通すしかない。僕には僕なりの意地があるのだ。

「一応、確認します」

 僕はそう言ってから男に人にナイフを向ける。

「何だ?」

 男はそう言って笑う。うむ、言っても無駄なような気もしますが言ってみよう。

「引き下がってはくれませんか?」

「無理だ」

 でしょうね。

 僕はそう感じながら、男に向かって突っ込んでいった。

 右手の銃の残った残弾を使い捨てるように撃ちまくる。最初から狙いなんか定めるつもりも無いので、頭と胸と両手と両足に向かって適当に撃つ。

 バシュッ!

「く・・・・・・!」

 その適当さが功を奏して、運良く足にヒットした。ラッキー、僕、海馬君になれたかな(嘘)!

 左手のナイフを右手に持ち変える。

「帰れ!!」

 男はそう言って僕に大砲(に格上げしました)を構えた。

 僕はそれを見てからすぐに、しゃがみこんだ。

 と同時に男は引き金を引く。


 空砲は僕の頭上を見事に通り抜けて、壁に後を残す。

 よかった。空砲の威力を強くするために風圧の無駄を省いていたようで、むらが無かったのだろう。予想通り、風は僕の服を微塵も仰ぐことなく吹いていった。

 その間に僕は僕の細工をする。

「てめぇ・・・・・・今度こそ殺してやる!」

 男はそう言いながらも、砲口の向きを変えない。まだ空砲が放出中か。

 僕はナイフを取り出して、それを刺した。

 ・・・・・・!

 ・・・・・・よし、これで準備は完了だ。

「死ね」

 男は漸く、大砲を構え終えて、僕の方向に砲口を向けた。

「如月!」

 神道はそう叫ぶ。しかし今はそれに応対できるほどの余裕は無い。

 男は引き金を引いた。


 僕の真上に象が乗った。

 そんな痛みだった。表現の方法が分からない上に、恐らく共感できる人も居ないだろうけれど、そういう感想だ。

「――――!!」」

 声にならない。しかし、それでも僕の手は動くはずだ。

 僕は男の足を掴んだ。

 男はそれに気付いていない。


 右手で、男の足を思いっきり引っ張った。

「な――」

 男は蚊の鳴くような声でそう言うと、そのまま思い切り床に背中を打ちつけた。

 さらにそれだけには留まらない。


 自分の放出し続けている空砲によって、自分の体はそのまま床に貼り付けにされる。

「ああああああああああ!!」

 男は叫ぶ。

 しかし、僕に対する時間が長かった所為で、そんなに空砲は長くなかった。


 ので。


 僕は、その大砲に手を伸ばして、引き金に指を掛ける。

「や、やめ――」

「散れ」

 僕は引き金を引いた。


 今度は男は叫ぶことなく、地面に突き刺さる。さらに、その肉体を突き破らん勢いで、大砲は男と垂直方向に刺さっていく。

 さっさと手を離せばいいのに、無意識なのか或いはそういうルールなのか知らないが、男は大砲から手を離さない。


 結果。


 教室の床を突き破り、下の階の部屋に落ちていった。

 ひび割れた教室の床。

 そのひび割れは連鎖反応で僕の下の床も壊そうとする。

 ていうか壊れた。


「如月君!」

 木戸やクラスメイトが助けようと向かってくるのが見えたが無駄だ。

 僕の下の床は完全に崩落した。

「如月!!!」

 神道が叫んだ。


 木戸はそこで膝を折る。


 クラスメイトも絶望の表情をみせる。



 

 

「・・・・・・あー」

 僕は罰が悪かったけれど、そう声を上げた。

「ごめん、助けてくれる?」

「如月・・・・・・お前、どうやって――!?」

 神道は僕を見て、驚く。うん、気持ちは分かる。

 しかし、僕はここまで想定してから、行動に移したのだから。


 僕がした細工。それは、僕が助かるための行動。

 僕がナイフを指した場所。

 それを僕は見つめる。


 僕は貫通して、遠くの床に突き刺したままの自分の手の甲・・・・・・に刺さっている・・・・・・・ナイフ・・・を見た。


 そう、僕の左手は床に接続されたままだったのだ。


 海馬君っていうのは、僕のもう1つの作品の「丸く収まったこの世界」(略してMW)のキャラクターです。

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