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6日目:1:0

 1人と0人の対話。

 教室の扉を開けると、そこは腐臭漂う、暗い空間だった。爆発後の被害は何の措置もせずに放置されていた。

「……明日掃除するか」

 それが弔いでもあるに違いない。待機舞台なら死体にも慣れているだろう。3クラス分有るから、しんどいかもしれないが、弔いは疲れるものだろう。それで意味があるのだから。

 腐敗臭もするから、火葬という方法で、処置したい。その際は誰がどの遺骨か分かるようにしないと……。でも火葬って簡単には出来ないよな……。


 さて、今回俺がここにきたのは、所謂墓参りである。

 僕がこっそり無花果に頼んでおいた通りならば、このクラスの掃除道具用ロッカーが棺桶になっている。

 他の皆とは違って、少し丁重に扱っているように見えるが、僕には目印が無いと、誰が誰か分からないのだ。

 そんな奴に墓参りの資格はないかもしれないけれど、それはそれとしよう。僕はそれでも、墓参りの必要があるのだ。

 というところで、倒れている掃除用具ロッカーを見つけた。僕はそのロッカーを開けた。


 1人の男子生徒。弔いの証として、最低限キレイに掃除したロッカーに花を添えて入れられている。

 僕はその前に座り込んだ。

「……死んだ先はどっちだ?」

 喋るはずのないそれに僕は語りかける。

「天国か?地獄か?それとも青春を謳歌できなかったか何かで、別の世界で天使に抗ってるのか?」

 アニメの話を交えて、冗談を言いながら訊いた。

 当然、答えるはずは無い。

「お前は、よくやったと思う。状況に即して、誰よりも早く危険を察知していた。そんな才能が有ったのに、お前は死んでしまった」

 上から目線のような発言になってしまっているが、気にせずに言う。


 この少年は、時雨の肩を打ち抜いた男子生徒だ。向こう側が一斉にハンドガンを出したのを見て、誰よりも早く攻撃を始めた。その判断力は評価すべき点だった。

 しかし、その戦いで唯一、命を落としてしまった少年だった。


「・・・・・・僕の話をするよ」

 僕はそのロッカーに背中を預けた。


「僕は、殺人鬼だ。巷で噂のね。中学生だけれど、僕はこうして殺人鬼として世を渡り、この世界を生きている。もちろん学生として」

「僕が最初に殺した人は誰だと思う?」

「実は、僕にも分からないんだ。その時の僕は昨日・・・・・・正確には一昨日だけれど、その戦線の時のように思考が暴走したのさ。戦いなんて関係ないし、人間なんて知ったこっちゃ無い。そんな感じで、僕が気が付いたときには病院にいたのさ」

「どうして暴走したのか。それは後から知った。父と母と兄と妹を殺されたからだ。その何かに。僕はその時、父からナイフの扱い方だけは教わっていた。僕らの家系は殺人に秀でていたんだよ」

「ごめんよ、オチは残念ながら無いんだ。でも、それでも僕は誰かに――特に君には話すべきだと思ったんだ。理由は全く分からないんだけどね」

 僕はそこまで言って、立ち上がり、ロッカーの扉を閉めた。

「ありがとう。僕は君にそういいたかった。理由は分からない。でも、僕の中で何かが変わった。ここで宣言する」

 僕はそこで、忠誠を誓うようにひざまずく。

「僕らはココを出て行く。どんな犠牲を出してしまっても。そして、僕らは負けない。戦争だけではない。僕はあの男にも負けない」

 そう言って僕はもう一度立ち上がった。

「アイツも・・・・・・『ヒラオカ』も殺す」

 

 そこでまたも、僕の意識はぷっつりと途絶えた。



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