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6日目:1:1

 新展開その二!!


 教室に入ると、皆座っている。私は目を合わせずに近づいていく。


「保健室は大丈夫だったかい?無花果さん」

 木戸君が質問した。

「ええ。何ら問題は無かったわ。保健室を無視して私を攻撃してくるくらいだもの」

「そうか・・・・・・。え」

 安堵した表情が瞬時に強張る。

「襲撃されたのか!?」

「ええ。だから先生方の人数を5人も減らせた事になるわね」

「1人でそんなに相手にしたのか!?」

 今度は驚愕の表情を浮かべる。表情の変化が面白いわね。今度はどんな表情を浮かべるか見物ね。

「ええ。まぁ危機的状況には陥ったけれど、何とかなったわね」

「そう・・・・・・なのか・・・・・・。まぁ、人数を15人まで減らせたとなるとこちらも有利かもしれないね」

 と木戸は先ほどまでとは一変して、冷静な表情になった。あら、おもしろくないわね。


「ともかく、だ」

 神道君はそう言って立ち上がった。

「その口ぶりからして、まだ保健室は確認していないんだな?」

「ええ」

「そうか。よし。寝る」

 そう言って神道君は就寝準備を始めた。

 クラスの皆もそれに順ずるように行動を開始する。


 

 この戦線では考えさせられる事が多い。

 命の儚さや、逆に尊さを感じる。私が誰かに生かされているということすらも感じられてしまう。

 そう。思ったよりも命というものは左右されやすいのだ。だからこそ人間は生きる事に執着し、生きる事を望む。そして、その命を左右するものを忌み嫌う。無視し抗おうとする。それでも左右する『何か』は自分のもとに向かって走るように間を突き詰めてくる。

 自分が亡くなることが怖い。自分が無くなることが恐い。自分を壊したくない。

 だから私達は今、こうして先生方に対して抗っている。

 本当に苦しみを味わいたくないのなら、死ねばいいのだ。武器には毒だってある。

 それでも死のうとしないのは、人間の本能がそう言っているから。本能的に知っているから。


 『死』は恐いという事を。

 眠っている彼らはそのことを本能で感じているに違いない。

 己の命を奪わんとするものを拒み、己の命を延ばすことを優先する。その結果、相手の命を奪うことになったとしても。

 

 動物的な考え方。

 生きながらえるサバイバルの新年。

 己が信念、本能に基づいて戦っていること。

 それがこの戦線の正体なのだ。



 さて。




「と、私は思うんだけれど、貴方はどう?」

「選手交代の合図が突然過ぎないか?」


 僕は保健室で無花果の言葉を聞いてから、彼女の質問への感想を述べた。ちなみに答える気なんて毛頭ない。

「やっぱり起きていたのね。唯一の重傷負傷者さん」

「ああ。昨日には起きていたよ。ていうか、語り部の機会を速攻で棒に振るとはお前も物語に杜撰すぎるぞ」

「物語?貴方の妄想劇のことかしら?」

「さっきまでお前が語っていた代物だ。ていうか、僕のことを死んだように扱うな」

 正しい情報と混同して、逆にややこしい事になっていた。


「えーえー。私が悪かったわ。そうね。どうせ私が悪いんですよー」

「小学校からやり直すゲームか?よし、降りた」

「そうね。よしておいたほうがいいわね。貴方は幼稚園からやり直さなきゃ追いつけないもの」

「失礼な事を言うな。僕はその昔神童と呼ばれたような男の子だぞ」

「あらあら、それはそれは。その事実によって世界中の皆さんを褒め称えなければならなくなったわ」

「『神』的に『童』話を読む男の子だ」

「絶望的に散りなさい」

 彼女はそれだけ言うと立ち上がった。


「帰るのか?」

「ええ。貴方が起きていたと分かった以上、私がここにいる理由は無いもの」

「あっそ。じゃあな」

 僕はそれだけ言うと睡眠態勢に入った。


「あ。そうだ」

 無花果は扉を開けてから、僕に何か投げた。

 ナイフだ。

「ありがとう」

 そう言ってから、保健室を出て行った。

 何だろう。

 もしかして僕の形見として左胸のポケットに入れておいたナイフが、偶然、自分の左胸に銃を撃たれた時に、盾になったのだろうか。

 そんなわけないけどね。

 と、ナイフの柄を見る。

「・・・・・・」

 間違いなく弾痕。

 ・・・・・・まさか・・・・・・ねぇ・・・・・・。


 そう思ってから、僕も立ち上がった。もう無花果も教室に着いただろう。

「い・・・・・・って」

 かなり痛みを感じる。大丈夫だろうか。

 そう思いつつも歩を止めずに階段を昇って。


 僕らの教室では無い方の教室に入った。



 というか展開が戻ったような気もするけど。

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