6日目:31:20
6日目。
新展開です
こうご期待です。
さて。
彼がああなってしまった以上、物語は私が紡ぐのが正しいのだと思う。それが私としての使命なのだと思う。まぁ他人のことを考えているわけではないのだけれど。
私は何とか応急処置で助かる事が出来たのだけれど、彼はそうはならなかった。
そんなわけで次の日。
校長室が役目を果たし終え、2度と役立つチャンスをなくしてしまった以上は、元の教室を作戦室に使うしかない。
次の日の放課後。それはつまり、戦線が始まっていることと同義だった。
しかし生徒も教師もお互いに攻撃をしかけようとはしない。それにはお互い理由があった。
教師側は作戦担当の時雨を彼が肉塊へと変貌させてしまったために、作戦に関して悩んでいるという事じゃないかしら。
対して私達は状況が状況だけに会議をすることになった。
「作戦会議を始める」
教卓に神道君と木戸君が並んで立った。ちなみに教室の外には橋田さんと羽賀君が相変わらず見張りを担当してくれている。
「まずは、しっかりと確認すべき事項がある」
木戸君はそう言って話を始めた。
「前回・・・・・・つまり昨日の一斉攻撃だが、ほぼ成功を収め、教師側の人数を20人にまで減らす事が出来た。最初の半分の人数だ。いい功績だったと思う。僕らの戦いは優位に進む」
木戸君はまずそう言ってから「しかし」と続けた。
そう、それだけなら私達が作戦会議をする必要はない。昨日、「よくやった」で済む話。
つまりそれだけではなかった。
「今ココに残っている人間や、見張りと看病を含めた25人以外・・・つまり7人は傷を負った。中には気絶して、今も危うい状態にある者も居る。救護班が昨日から交代で夜通しの看病を続けてくれている。ほとんど回復しているが。そして・・・・・・」
木戸君はそう言って少し間を空ける。迷っているようね。
しかし決心したのか、再度口を開いた。
「1名。死者が出た」
沈黙。
別にいままでうるさかったわけでもないけれど、沈黙が一層際立った。
まぁ私としてはどうでもいいのだけれど、一応聞いておいてあげないと、かわいそうよね。こう見えても完全に仲間意識が無いわけではないのよ。というか本当のことを言うとどうでもよくないし、一応でもないくらい、悲しみはあったわ。
「これは、僕らの当初の目的・・・・・・全員生きて学校を出て行く目標が失われた事になる。しかしそれでも彼は覚悟していたはずだ。『殺される』という覚悟を」
「これで分かったろう」
神道君が木戸君の言葉に続けるように黒板にもたれるような態勢で言った。
「誰でも死ぬ事は明らかだ。油断すれば死ぬし、諦めても死んでしまう。誰が死んでももうおかしくないのだ」
神道君は教卓の前を離れた。
「ならば、やはり立ち向かうしかない。俺達にはその道しかない。これを期にもう一度考えろ」
神道君は言いながら教室の出口に手を掛けた。
「あらゆる覚悟をな」
そう続けてから教室を出て何処かへ行った。
「・・・・・・神道君の言うとおり、僕らは彼の死を受け入れ、死に立ち向かわなければならない。それが僕らの彼に対する償いだ」
木戸君はそう言って俯いた。
彼の死体は、掃除用具箱をきれいに掃除して彫る程度の出来るだけの装飾を施し、クラスに置かれていた花を添えた箱に入れて、棺おけとして隣のクラス(だった教室)に置かれてある。
1人の人間の死を越えるという所業はとても難しい。
簡単に出来る事ではないし、簡単に割り切るべきことではない。
私はできる。それだけ仲間の死とも向かい合ってきたから。
そして全員しなければならない。これからも消えていく可能性のある仲間を失うことを考えながら。