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1日目:証明

五感って有りますよね?

視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚ですね。これらって全部刑事ドラマに採用されてますよね?多分。

でも、1番すごいのは第六感ですよ。どんなドラマでも一度はある。

「刑事の勘」って奴。

 口火を切ったのはまたも誰かだった。そう記憶している。というか、誰もわからないからほとんどが誰かだ。

「ふざけんな!何言ってんだ!」

【至って真面目です。ふざけているつもりなんて毛頭有りません】

 だろうな。ふざけているだけの愉快犯なら、とっくに先生に捕まっているだろう。僕は愉快犯ですよ?

「じゃあ何の冗談だ!大体――」

「うるさいぞ」

 誰かが遮った。興味深いので容姿を紹介しよう。眼鏡をかけた、少し赤みがかかった茶髪の少年。身長は175cmくらいだろう。体重は59kg程度だろう。名前は神道結弦かみみちゆづるか。おお、名前を覚えていた。奇跡に間違いないだろう。あ、ちなみに身長体重は殺した人のそれと比べているに過ぎない。

「もし、放送室にコイツがいるのなら、とっくに捕まっているだろう。恐らくジャックしたか、見えないように透明マントでも着ているかのどちらかだろう。そして、俺たちの声が聞こえているという事は、スピーカー近くにマイクでもあるのだろう。それを全教室・・・・・・少なくとも3年の教室全てに設置しているとなれば、それは簡単なことではない。かなり用意周到な犯行であるからして、愉快犯やドッキリイベントの類ではない。となれば、さっき貴様の言葉に反応したように、こちらの質問に答えるつもりはあるということだ。今は、必要な情報を集めるのみだ。分かったら黙れ。席を立っている奴も席に座って、現状理解に努めろ」

「・・・・・・」

 それらを全て理解したかは分からないが、全員自分の席には座った。どうやら、彼はこのクラスにおいて、纏める力があるようだ(「ようだ」って・・・)。


【3−2の神道クンの発言でした。ご理解頂けて光栄です】

 どうやら他のクラスに彼発言を聞かせていたようだ。ま、懸命な判断だな。僕がとやかく言うことでもないと思うけど。

【では引き続き質問を受け付けます。神道クンはどうやら質問があるようなので、彼を優先しましょう】

「俺達が殺し合わなければならない理由は何だ?」

【質問を分析、解釈します。つまり、あなた達が殺し合いに参加する意義ですね?】

すると放送の声は笑った。いや笑ってないかもしれないが、少なくとも僕はそう感じた。

【僕はあなた達に殺し合いを強制しません。参加するかどうかは皆様の自由です。好きなようにして下さい】

 そしてもう一度笑った。いや笑ってな略。

 またも空気が安堵に包まれる。しかも、今回は小さな歓喜の声付き。それはともかく。

【但し、不参加者は問答無用で殺害します】

 と。

 放送の声は続けた。辛辣しんらつ且つ凄惨せいさんな事実であった・・・だろう。うん。僕は知らない。そんな感情は昨日においてきた。それにしても、この5分程度で感情が入り組んでいるな・・・。

「そんなこと・・・・・・可能なんですか?」

 学級委員長の木戸が聞いた。彼は僕も慕っている。というか、うちの学校で彼を慕ってない奴はいないだろう。この状況に慣れて来ている。流石委員長だ。適応力は死活問題だからな。

 で、放送の声は、その質問にも答える。

【可能です。そのために証明方法まで用意しましたから。窓の外を見てください】

 窓の外・・・あの1、2年生か。そんな風に思って窓の外に目を向けた。


【今、彼らもこの放送を聞いています。1、2年生の皆様、手を上げてください】

 その声の後、彼らは渋々手を上げた。あ、違う。ビクビクしてんのか。まぁどっちも似たようなもんだ。

【申し訳ありませんが、物分りの悪い3年生のために、只今から皆さんには死んでもらいます】

 放送がそう言った後、野球部の投球マシーンが1,2年生にその銃口を向けた。ざわついていた彼らの動きが止まる。

【発射してください】

 ボンッ!

 直後に1球。そのたった1球が、1人の男子生徒に向けて発射された。その1つだけで、後方の女子、さらにその後方の男子。さらに後方の女子・・・。計8人の胸部を貫通した。

「う・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁああああ!」

 多分先生だろう。野太い男の声がした。それに乗じて、女子生徒と男子生徒が悲鳴を上げる。

【先生方は逃げてください。あなた達も参加者ですので】

 淡々と放送の声は述べた。とほぼ同時に2、3球目が発射される。どんどんと生徒が倒れていく。逃げ出して行く人達が続出した。

【第2砲 準備完了】

 学校に備え付けられている時計が、上に向かって開く。中から大砲が飛び出す。そして発射。弾はそこまで飛びはしなかったが、大きさや威力だけに、運動場にいたほとんどの人数が消滅しょうめつした。

【第3砲 準備完了】

 屋上にある5つの貯水タンクから、機関銃が出る。運良く校舎の方向に逃げ切れそうになった生徒を1人残らず殺戮した。

 5分も立たずに、全ての生徒と数人の先生を殺害した。


【これが証明です。僕にはこれだけの武力があります。第4、5の砲撃方法も用意しています。一応行っておきますが、彼らは死んでいます。ドッキリやあなた達を嵌めようなどという魂胆は一切ありません】

 放送の声は、そう言って黙った。

 と、思ったが、

【何が理由か・・・つまり、僕があなた達を参加させる理由ですね?】

 と、尋ねてきた。どうやら、他のクラスからの質問らしい。

【そうですね・・・・・・。僕にはあなた達にそれを言う理由はありませんが、1つ言うならば、僕は救世主です。あなた達のね】

 救世主・・・・・・!?

 どういうことだ。絶望的に理解不能で、本格的に意味不明だ。

【メリット・・・・・・ですか?そういえばそうですね。確かにそちらの方が、モチベーションも上がるでしょうから・・・・・・といっても、実は考えていたんですけど】

 また、他のクラスからの質問のようだ。いや、先生からの質問という可能性も有るのか。

【最後まで残った人のどんな願いでも1つだけ叶えてあげます】

 と、放送の声は答えた。

【・・・・・・・・では、この辺りでいいですか?】

 放送の声は締めるように言った。

【これから、質問がある際は黒板を3回叩いてください。基本的には何でも答えます。それでは――】

「待った」

 誰かが、放送の声を止めた。僕がその人物を探すためには、トイレか洗面所、あるいは女子にでも手鏡を借りて確認するしかない。

 つまり、僕だ。

「お前は一体誰なんだ」

 僕は単純な興味本位で質問した。正体よりも、単純に人格に興味がある。だから、少しでも長く会話したい。


【私が誰か・・・・・・ですか?救世主以外の解答を求めると言う事ですね?】

 そして。

 そして、今度こそ本当に笑った。そして言った。

【そうですね。呼び名もあったほうがいいでしょう。私は物語を創り、管理するもの。このゲームの支配者であり、支配された者。ゲームマスター・・・「ヒラオカ」です】

「ヒラオカ・・・」

 日本人でどこでも基本的にはありふれた名前だった。


【では、これからのことをお好きなように相談してください】


「ただいま」とか「おかえり」って、メチャクチャ言いにくいんですよね。

なんか、明日を待ってる感じとか。

「ありがとう」とか「ごめんなさい」もとっても言いにくいんですよね。

なんか、当たり前を噛み締めている感じとか。


何より、いづれ言えなくなる事が怖いんですよね。

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