5日目:策士策に溺れる
考え方はその裏だ。
全てのパターンを把握しなくちゃ僕らにこれから生きる道はねえ。
戦線開始の合図がいつもどおりあり、今回もこちらが優勢としていただいた。
「今日はどういう作戦なんだ?」
僕と無花果と神道は校長室以外の場所で話をしていた。僕らは間違いなく監視されている。どこからか視線を感じるからだ。
「前回の向こうの敵地を襲撃する作戦はほぼ成功したようだな。ただ、負傷者を出すことは出来なかった。以上だ」
「てことは今回は別の方向から殺しに掛かるのか」
「そういうことだ」
「俺達はどうする」
「向こうから着たら殺す」
「了解」
俺達はとりあえず5階に向かって上がる。屋上をめざすためだ。
「さっさとこの戦い終わらせないのか?」
「それではあの不愉快な男の招待が分からない」
「それはそうだけど・・・・・・」
「俺は絶対ソイツを突き止めるぞ」
神道は怒りに満ちた顔で言う。
「だが、今回は俺達は狙われる立場にある。だから・・・・・・だ」
つまりは今回は調べ物をする予定は無いということか。
作戦遂行メンバーは俺達が狙われている間に戦うという作戦で同意した。
僕達はその作戦を遂行すべく、狙われやすいような状態でいることを遵守する・・・・・・のだが。
6時になり、戦線は開始されたはずだ。だから狙われやすいようにさっきから色々なところをうろちょろしているのだが、全く攻撃される気配は無い。
屋上に着いたとき、時間は既に8時になっていた。
「おかしい・・・・・・」
「いくらなんでも攻撃が来なさ過ぎるわね」
「ああ。俺達の隙をうかがっているのか?視線を感じるのはいまだあるのか?」
「ああ。どこからか見られている気がするよ」
「どこかから・・・・・・か」
少し不満げな顔をして神道が言う。
「無花果。貴様は何か感じるか?」
「・・・・・・人の気配は無いけれど、彼の言うとおり誰かに見られている気はするわ」
「・・・・・・人の気配は無いのか・・・・・・」
神道は屋上を動き回り始めた。
「神道は何してんだ?」
「何か不満要素でもあったのかしらね」
「ま、僕には関係ないかな」
そう言って、晴れ渡った星空を見る。月が満月と上弦の月の真ん中辺りの形で輝いている。
「・・・・・・くっそ!」
神道が叫ぶ。僕は、
「何か有ったのか?」
と他人事のように呟いた。
すると神道は、
「あいつ等から負傷者が出た」
「な!」
どういうことだ。教師連中は僕らを狙ってくるはずでは・・・・・・!?
「どういうことだ!」
「俺が訊きたい!」
そう言って神道はドアノブに手をかけた。
かけた。
開けない。
「どうかしたのか?」
「・・・・・・盗聴器とカメラだ」
「え・・・・・・」
ドアノブから手を離して指を差した先――扉の真下に二つとも隠されてあった。
「そうか・・・・・・。くっそ!」
神道はそれらを踏み潰した。
「どういうことだ!?」
「俺達を監視しているように感じさせ、俺達の動きを封じたんだよ。お前や無花果のような相手の視線の感受性の高い人間の裏を取ったんだ」
「・・・・・・私達を利用したというの・・・・・・」
無花果は拳を固めた。
「そうか・・・・・・。俺達の行く目的地を監視していた人間が、先回りさせた教師に監視カメラや盗聴器を仕掛ける事によって、俺達に常に『視線』を与えてたんだ」
「マジかよ・・・・・・」
「くっそ!」
神道は今度こそ扉から出て、階段を降り始めた。
僕らもそのまま追いかけて、教室へと向かった。