4日目:悠々自適
はい、4日目突入。
これから先は本当の戦争っぽくしたいな。
・・・・・・うん。だから何だって言うんだって思うかもしれないが。
僕は今授業をさぼっている。屋上でゴロリと寝転んで、現状について考えている。
「だからといって僕と同じ行動をする必要は無いんじゃねえのか?」
「私は貴方から一時も目を離すつもりはないわ」
隣には無花果が居る。まぁスルーしようかと思ったのだが、絶対に離れようとしないだろう事が容易に想像できたので、もういいやという感じで、今は一緒に行動している。
というか、なによりも授業中に僕を睨んでいる視線が嫌だったのだが。
「それにしても平和だな」
「・・・・・・」
「戦線中じゃなかったら本当に暇だな」
「・・・・・・」
「僕らもゆっくり休むって事が必要なのかな」
「・・・・・・」
「返事しろよ!」
「私は別に貴方の話し相手になるつもりはないわよ」
そう言って無花果は僕を睨む。
コイツは本当によく分からない。
僕は上半身だけを起こして、体育座りでそこに居る無花果を見る。スカートが短いのできわどい。目を反らさざるを得ない。
「・・・・・・何?」
「別に」
僕はそのままもう一度寝なおした。
・・・・・・自由だ。何か自由って感じがする。
ただ、自由が幸せとも限らないようだ。特に僕の場合。
そもそも僕はその「暇」や「自由」を求めて「殺人」を始めていたはずなのに。
自分のために。
だと・・・・・・思う。
「人を殺すのってどんな気分?」
僕は突然そう訊いた。
「貴方も知っているでしょう?」
「だから違うって」
「そうね。貴方とは違うけど」
僕の発言に相変わらず淡々と答える。
「嬉しかったわ」
「嬉しかった?」
「ええ。ようやく他人の役に立ったと思った」
「他人の役にね・・・・・・」
「貴方も他の犯罪者同様、自分のためでしょう?だから貴方とは違うと言ったのよ」
「僕は犯罪者じゃないって」
僕はそう言って、上半身を持ち上げた。
「いつまでそういうつもりなのかしらね。まぁいいけど」
そう言って今度は無花果の方がその態勢から横になる。
「・・・・・・別に庇うわけではないけどさ」
「何?それは犯罪者と認めるってこと?」
「だから庇うわけじゃないって」
僕はもう一度否定してから、言った。
「殺される人も『他人』だ。そいつも人だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「そして死んだその人の関係者には悲しみくれる。そしてストレスを溜める。さらにそれは殺意に代わる。その連鎖が始まる。もしかしたらそれは帰ってくるかもしれない。でも終わることはないんだ」
「何が言いたいの?」
「他人を守る事は他人を殺す事なのさ」
そう言って僕はもう一度寝た。
「そのままね」
「その通りだ。でもそれ以上の意味がある」
僕はそう言って空を見上げる。
「それにしても自由って感じだな」
「・・・・・・戦争したい」
「でもお前一度も戦ってないよな」
「・・・・・・」
「実は弱かったりして」
「・・・・・・」
「だから無視す――」
・・・・・・寝ていた。叫び声を止めた。
そんな優しさを与える必要性はないが、見たときにはただの少女だとしか思えなかった。
「・・・・・・なんだかなぁ・・・・・・」
静かな空間に少し小さな寝息。
悠々としている。
殺す側と殺される側が二人とも横になり、さも恋人同士になっている状態を見た神はどう思うことだろうか。
いや、だとすれば何ぼさっとしてんだ。さっさと助けろと言いたい。
僕もそう思いながら眠りについた。
本当の戦争は修羅場くらいしか見たことないけど。