表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/88

3日目:希望


 希望の反対は絶望です。


 希望の類語は志望です。


 希望の定義は願望です。


【12時になりました。戦線終了です。これ以上の攻撃は、こちらへの敵対と看做します】



 さて、結局その日(戦線にとって)大きな事態は特に無く、1日を終えた。


 遅めの夕食(最近はこれが普通なわけだが)を済ませて皆は就寝準備を済ませた。

 そしていつもならばこのまま寝るつもりなのだが、どうも寝れる気分ではなく、教室をでて僕は1階に降りた。そしてソファーに座った。

 が、そこには先着が居た。


「・・・・・・よう」

「や」

 神道と木戸だった。

「何やってんだ?」

「貴様も同じだろう」

 僕の発言に神道はそう答えた。


「どうも気に食わん。俺と木戸だけで今行動している事項がある」

「何?」

「ヒラオカの存在だ。アイツの正体が全く分からん」

 

 なるほど・・・。確かに主催者側の行動が分からない。

「まあ、僕と神道君でしばらくは行動してみるよ。力が必要になったら皆も誘うからさ」

「そうか」

「本当は教師連中と連携して警察を探すことも出来るが・・・・・・裏切りの危険性がある」

 まあそうだよな。簡単に協力なんかできないはずだ。

「では、俺は寝る」

 そう言って神道は僕がソファーに座る前に先に教室へと戻った。

 僕は木戸の横・・・さっきまで神道が座っていたところに座る。



「本当は僕も殺すのは怖いんだ」

 木戸が突然そう言った。

「でも君のおかげで皆、立ち上がることが出来たよ」 

「・・・・・・いや」

 僕はお礼を言われるのに慣れていない。だからこれが最大の反応だった。

 ちなみに言うのも慣れていない。

「じゃ、僕もそろそろ寝るよ。如月君も落ち着いてから寝なよ」

 と木戸は立ちあがってその場を去ろうとした。


「・・・・・・不思議じゃないのか?」

 僕は思わずそう呟いた。

「・・・?何が?」

 木戸は僕の言葉に反応する。


「僕は人を2人も殺した。なのに冷静なのはおかしい。待機部隊の奴らにそういわれた」

「・・・・・・」

「その所為で殺人鬼じゃないかとも言われた」

 これは本当だけど。

「お前はおかしいとは思わないのか?」

「・・・・・・」

 しばらく黙っていたが、木戸は

「ふむ」

 と一言言うと、もう一度ソファーに座った。


「確かに冷静なのはおかしい。殺人鬼だって疑う気持ちも残念だけど僕も分かる」

「・・・・・・そうか」

 僕は肩を落とした。

「でも、いいんじゃないか?」

 木戸はそう言った。僕はその木戸に目を向ける。多分訝しんでいる顔をしていると思う。


「君がどんな状態であっても、君が殺人鬼でも、君は僕らを救ってくれた。立ち上がらせてくれた。前を見せてくれた。だから君は100%ヒーローなんだよ。殺人鬼とかそういうのだとしても関係なくね」

 そう言って笑った。

「・・・・・・」

「それに殺人鬼だとしてもそれは今は僕らの力だ。一々考える必要は無い」

「・・・なるほどな」

「あ、別に、殺人鬼だと思ってるわけではないけど」

 と、手を振って弁明する。いや、そんなに必死にならなくても。


「・・・落ち着いた?」

「ああ」

「じゃ、僕は寝るよ。君も上がるかい?」

「僕はもう少しここで外を見てるよ。出れない以上、見るくらいはしたいから」

「そうか。じゃ、おやすみ」

 そして、また階段に向かった。


「あ、木戸」

 僕はもう一度引き止める。今回は対象に向けて。しかも思わず立ち上がってしまっている。

「何?」

「えっと・・・・・・」

 どういえばいいのか分からない。得意じゃないし慣れてない。から、取り敢えずストレートに言う事にした。

「ありがとう」

「・・・・・・どういたしまして」


 そう言って木戸は笑うと、階段を上がっていった。


 それにしても、まさか退屈だと思っていた現状から逸脱して、戦線が始まって、皆を絶望にたたきつけたつもりが、どうして僕が希望を持たされているのだろう。


 と、僕は思わず笑った。

 願望 果たされしときより 希望となり、


 希望 打ち拉がれしときより 絶望と化す。


 絶望 打ち破りし者のみ 世界の望むべき者となり得る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ