3日目:迂闊
迂闊も後悔も先には立たないよねー。
でもいいじゃん。それらが出来るだけ。出来ない奴は愚かだよ。
その後、軽く羽賀と軽く会話はした。まぁ話すようなことでもないので割愛。
教室前の廊下に神道が居た。
「で、どうして貴様はボロボロなんだ?」
「僕が聞きたいくらいだよ」
「・・・・・・まあ、いい。行くぞ、待機部隊としての仕事もしっかりしなければ」
神道が教室を出た。休む間もなく僕と羽賀もついていく。教室から無花果と橋田もついて来た。
「神道、どこ向かってんだ?」
羽賀が歩き始めてすぐに聞いた。
「作戦室だ」
「作戦室?」
「ああ。あの教室に盗聴器が仕掛けられたり、爆弾が仕掛けられたりする可能性を考慮して、これから本部を別の場所に置くそうだ。いつ、どこに、どうやって攻撃してくるか分からない。特に、教師の連中は爆弾はともかく、盗聴器ならどこにでもしかけられそうだからな」
「でも、空にしたら危なくないか?」
「それも考慮してある。俺達と入れ違いで別の奴が入っている」
そういえば教室の中は見てなかったからな。
「で、結局どこなんだよ」
「校長室」
「こ・・・・・・校長室?」
「ああ。狭い上に入り口は1つ。隣接する部屋も無いから、そこから侵入される心配も無し。あの校長は心配性だから、職員室に入り浸っている。故にあの部屋には盗聴器と思われるものは無かった」
どうやら立地条件、中身の状態等調べてあるようだ。
「だけど皆が皆そこに居ちゃダメだろう?数人は別の場所に――――」
「全て俺が考えて、既に準備は整っている。木戸には頼んでいる。周辺には常に授業も何もかもサボらせて、見張りを置いておく。そしてこの部屋には基本的には待機部隊のみだ。木戸が指導者だから、常に教室に置いておくことにした」
「・・・・・・」
僕が考えている以上の方向性から全てを始めている。作戦には少なくとも思い当たる穴はなさそうだ。となれば、この作戦を受け入れない理由は無い。
「や。来たね」
木戸がそう言って手を上げた。
「僕がココに来る事はもうないよ。僕は絶対に怪しまれないようにしなくちゃいけないからね」
「ちょっと提案なんだが」
羽賀が手を上げる。
「俺と橋田を見張りに置いてくれねえか?」
「え・・・・・・」
羽賀の提案に誰よりも早く反応したのは、名前が挙がった橋田だった。
「そうだね。橋田さんは推薦で高校いけるし、勉強の必要は無いほどの成績だから・・・・・・」
で、木戸は止まる。そして羽賀を見る。
「あの、何か泣きそうな顔してるんだけど、これって君の独断なの?」
「そうだが?」
「・・・・・・・・・・・・えっと、橋田さん、どうする?」
「・・・・・・・・・・・・分かった。やる」
そう言って少しつらそうに橋田は答えた。
「そ、そう。じゃあ、僕はこれで。あ、保健室は思ったより楽に占拠できたよ。これでしばらくは大丈夫だと思う。教室同様、毎日追加されてるみたいだし」
それだけ言うと、木戸はさっさと校長室を出て行った。
「ねぇ」
無花果が突然口を開いた。
「校長の席は誰が座るの?」
どうでもいい内容だ。まぁ、恐らく
「俺が座る」
ほらみろ、やっぱり神道だ。
残る席は約4つ。ダブルソファー2つが、応接間のような形で置かれているので、余裕を持って座ればやはり計4人というところか。
校長の席・・・・・・つまり左右のソファーの奥側に僕と無花果が座り、正面になる。
僕の隣に羽賀が座り、橋田はその正面。これで大方席は決まったことになろう。
「ところで如月君。聞きたいことがあるんだけれど」
「何?」
僕が迂闊だったと言わざるを得ない。この状況に慣れようとしていたのか、或いは作戦がいい方向に向かっていたので安心していたのかはわからない。けれどこれは僕の責任だった。
「貴方、殺人鬼よね?」
無花果はまるで、「ここって日本であってるわよね?」という答えあわせのように聞いてきた。