3日目:戦闘
教室に帰ってきた僕と橋田は中に入った。橋田が入り、僕が入る。
「なぁ、如月。ちょっと来てくんねえか?」
羽賀が提案にしては無理やり俺の手を引っ張る。俺は持っていた図書館の本を近くの机の上においてそのまま流れる。
屋上に連れて行かれた。
「何かようか?」
「ちょっと組み手しね?」
「組み手?」
「そ」
そして羽賀はブレザーを脱いで、入り口の上に置いた(マンガの屋上を想像してみよう。多分扉の上に小さいスペースがあるはずだ。それのこと)。
「この学校の不良とかは戦ってみたんだよ。全員に勝てたな。次いでに俺が居る間は勝手なことしないようにしておいた」
ああ、だからこの学校は治安がいいのか。
「でも、お前がそういうタイプだとは知らなかった。どうやら隠しキャラって事らしい」
「いや、僕は戦う型の人間じゃ――」
「俺は里では毎日戦ってたんだ。こう見えても将来を嘱望されてたよ。その所為で戦えなかったら体がなまるんだよな・・・・・・ってわけだ」
「だから僕じゃ相手になんないって」
「御託抜きで、問答無用だ」
羽賀は真っ直ぐ僕に突っ込んできた。
「どわ!」
僕はそのまま上に跳んで、羽賀がブレザーを置いたスペース(以降、2階と呼ぶ)に上る。
「くそ・・・・・・」
僕もブレザーを脱いでそこにおいてから、もう一度降りた。
「やるってんなら全力だ!」
「いい感じだな!」
羽賀が右手を固めて、僕の顔面を狙う。僕は顔を最低限の動き、すなわち、首を曲げると言う動きで避けて、僕も右手を固め、腹部に向かって思い切り突く。
「・・・・・・は」
羽賀は笑う。そしてニヤリと笑ったまま、僕を睨みつける。
「やっぱり、単に強いだけじゃなさそうだ。生死をさまよったような人間の戦いかただよ」
「うっせ。余裕たっぷりかよ・・・・・・!」
僕は後ろに下がって距離をとる。
「って!」
羽賀がそのまま真っ直ぐ追いかけてきた。そして僕の頭を上から殴りつける。
「・・・・・・痛ェ・・・・・・!」
「距離をとろうとすると負けるぜ?」
羽賀がそのまま足を振り上げた。僕の顎にヒットする。そしてその流れで踵落としされる。
「・・・・・かはッ・・・・・・!」
体がコンクリートの床に落ちた。
風の強さが弱まる洋に感じた。つまりは抵抗がなくなったって事か。
「・・・・・・思ったよりは強いけど満足は出来ないか・・・・・・」
羽賀が僕を見下ろす。
「・・・・・・痛みが混沌としてるよ・・・・・・」
僕は右手をついて、体を上に向かって起こす。
「・・・お。立ち上がるのか」
「丈夫な事が取り得なんで・・・・・・な」
「父親と母親に感謝しとけ」
そして羽賀が、右足を僕に向けて突き出した。
腹に痛みが走る。うむ、これで頭、顎、肩、腹の4タイトル制覇完了ですねこのやろう。
「くっそが・・・・・・」
それでも僕は立ち上がる。
「初めてだぜ・・・・・・こんなに立ち上がる奴は!」
「負けるのは癪に障るからね」
僕に向かって、そのまま真っ直ぐ突き進んでくる。距離にして2メートルか。
体がきしむ。けど、ここで負けるわけにはいかない。
「食らえ!!」
羽賀が僕の腹を狙う。拳が腹に当る。
ドゴ、という鈍い音が鳴る。
「・・・・・・痛いんだよ、畜生!!!」
僕は羽賀の拳を受けたまま、直立していた状態から、拳を固めた。そして腰を入れる。
「マジかよ・・・・・・俺の攻撃受けて立ってんのか・・・」
「こっちからも行くぞ!」
僕は思い切り羽賀の顔面を右拳で狙った。
「く!」
羽賀は避けようと努力する。が、僕の拳が空を切ることはなく、頭の位置から胸の位置へと標準を変えて直撃した。
「くっそ!」
「まだまだだ!」
そのまま左足を勢いで突き出す。
それから5分間くらい戦い続けた結果、どちらもボロボロに・・・・・・なるわけないだろ。僕だけメチャクチャだ。
「・・・・・・俺と・・・・・・5分以上戦えたのはお前が初めてだ」
それでも息切れはしている羽賀はそう言って、倒れている僕に右手を差し伸べた。
「・・・・・・丈夫さだけが・・・・・・取り得だったんだけど・・・・・・」
僕はその手を取った。
「じゃあ、俺は帰るぜ。久しぶりに楽しかったぜ。また今度もやろう」
「ああ。あ、そういえば1つだけ」
「何?」
「父親と母親に感謝しろって言ったじゃん?」
「ああ」
「僕、両方いねえわ」