2日目:禁句
僕は生きたいと思ったことが無い。
「・・・・・・君達・・・助けに―」
「よし、逃げるぞ!」
そう叫んだ羽賀は、同時に、黒い玉を数個投げ飛ばした。それがゴトンという音を立てて地面にぶつかった。
瞬間。
プシュー、という奇妙な音を立てて、白い煙を巻き上げた。
「急げ!」
羽賀はそこにいた数人の負傷者を担いで、階段を駆け上がる。
「くッ・・・しまった!」
という先生方の声と、闇雲に打ち続ける銃弾の音が聞こえた。俺は気にせずに木戸に肩をかして、階段をあがった。他の待機グループも肩をかして、階段をあがっていく。
結果、死者を出さずに、逃げ切る事が出来た。
「話したい事はあるんだけど、取り敢えずありがとう」
「礼には及ばん。気にするな」
「おめぇが言うのかよ」
木戸の言葉に、神道が反応し、羽賀が突っ込む。
「羽賀くん・・・。あれは一体・・・」
木戸が羽賀に質問する。
「あれ・・・・・・ああ、煙球のことか・・・」
「うん。あんなの武器には無かっただろう?」
「俺、忍者の出家なんだ」
でーん。
ででーん。
でででーん。
でで(自重)。
凄い発言である。だが、さっき言っていた、「里を継ぐ」ってのも意味が分かる。里・・・忍者の里か。
「嘘だろ?」
「本当だよ。信じてくれよ、木戸委員長」
と、快活に笑いながら言った。
「で、木戸。話したい事とは何だ」
神道が思い出したように言った。
「・・・実は大変な事になっててね」
とあからさまに困った表情で言った。
「救護道具が圧倒的に足りないんだよ」
「だから保健室に言ったわけだ。しかし・・・」
俺が言った言葉に、
「結果、それで負傷者が増えてしまい、またも減ってしまった・・・というわけか」
と神道が繋いだ。
「本末転倒という感じだね・・・」
橋田が続いて言う。
「よし。もう一度行こう。今度こそ、救護道具を集めてみせる!」
さっきの負傷者が言う。俺はそいつに語りかけてみる。
「・・・出来るのか?」
「ああ、今度は人数を増やしてな」
・・・・・・。
「向こうの人数と武器の量が多かっただけだ」
もう1人の負傷者も言う。
「油断していたと言うものあるよね」
女も続けた。
コイツら・・・・・・。
「大人数で攻め込めば絶対に勝てる」
「無理だろうな」
俺は1人言った。
「・・・・・・なんだと?」
「無理だ。何度やって、今のお前らじゃ無駄だ」
俺が発言が終わると同時に。
生徒Aは俺の首に掴みかかった。
「何だ」
「何もしてないてめぇに、何も言う資格なんて無いだろうが!」
「じゃあ、何かしてやるよ。お前らに絶望をくれてやる」
「何言ってんだ?」
我慢なら無い。こいつら、自分達なら何とかできる思ってやがる。
「行くぞ。救護道具を取りに行く」
俺はナイフを手に取り、拳銃をポケットに入れた。
ソレと同じくらい、死にたいと思ったことも無い。
ならば必死こいて生きてみようと思う。
全力で生きたいと思いたいと思う。