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スナッキーな夜にしてくれ  作者: 火夢露 by.UMEBOSHI-P
第1夜 初体験
5/17

第5話 小悪魔達とRENDEZ-VOUS

第1夜(章)ラストになります。

サブタイトルは、無理やりこじつけてみました。


DAY BY DAY, GOOD BOY

CHANGING, SISTER BOY


なーんて歌声がきこえてきそうです!

 ちょっとイイ感じの雰囲気になってきた常松と沙希の会話に割り込むと、全員で乾杯を強要しだしたママ。

 そのママと、ひとりだけちゃっかりソーダ割りの香奈ちゃんは、これ見よがしにグラスを高々と掲げている。


「では、遠慮なくいただきまーす!!」


(こいつら少しは、遠慮しろよ!)


「それでは、カンパ~イ!!」


 常松は、仕方なくカウンターの向こう側の二人と乾杯。

 ママは、バーボンをひとくち飲んで口を開いた。


「お客さ~ん、常松さんっておっしゃったわよね」

「ええ、常松です」

「じゃあ、“常ちゃん”って呼んでいいかしら~」


(よくないっつうの!!)


「えーー、ママ~、そんなあだ名は、ダサダサですよーー。 常松さんが可哀相なんですけど」


(そうだ、そうだ! 香奈ちゃん、もっと言ってやれーー!)


「じゃあ、香奈ちゃんだったら、どんな呼び名がいいと思うの」


「そうですねーー……えーと……常松さんって、なんだかちょっと影がある感じなんですよね~。暗いわけではないんだけど…ちょっと残念な感じっていうか~、中途半端にカッコイイというか~、なまじっかイイ男っていうのかな~」


(おいおい、可愛らしい声でメチャクチャ言うなー。残念な感じって、どういう感じなんだよ!)


 常松のひきつった表情を見てもまったく動じない香奈ちゃんは、さらに追い打ちをかけてくる。


「でも、そんな感じの名前にしちゃうと、ママよりもひどい呼び名になっちゃいそうだし~、でも一見イケメンなのに何かが妙なんですけどぉ~、そういう雰囲気から名付けちゃいけないですよね........。でも、あっ、閃いた!これだわー、これがいいわ、“ツネマー”!!」


「ええ~、なにそれ~」 思わず、ママが返す。


(ええーーっ!! ホントなにそれーー。それは、もっとないでしょ!!)

常松も絶句する。


「なにか、変ですか~。凄くイイ名前だと思うんですけどーー」


(いやいや、全然よくないから。何か間違ってるから)


「常松さん、いやですかー??」

「それは、ちょっとキツイなー。そんな名で呼ばれたら恥ずかしいでしょ! っていうか、無理してあだ名とかつけなくていいよぉ」


「あら、私は可愛らしくて常松さんにピッタリの名前だと思うわよ。香奈ちゃん、なかなかセンスあるわよーー」


 突然、沙希が思わぬ意見を述べた。


(おーい、なんてことを言っちゃっうのー? それはもうホント、そのセリフは最早イジメでしょ!)


「沙希さん、有難うございます!! やっぱり、沙希さんみたいにオシャレでセンスのある女性にはわかってもらえるのねー。ほら~、ママ、沙希さんみたいなデキる女性に認められたんだから、やっぱり変な名前じゃあないでしょう」


「沙希ちゃん、お世辞がうまいわね~。無理して褒めることないのよ」


 常松は、ここぞとばかりにママのセリフに意見をかぶせる。


「そうですよ! もう、沙希さんって、お世辞がうまいなーー。香奈ちゃんを傷つけまいとする、その優しい気持ちが素晴らしいくらいだなぁ」


「ちょっと、待って! 私は本当に香奈ちゃんのセンスがイイと思ってるのよ! っていうか、少なくとも若い女性にはウケがいいと思うわ。ねえ、ママもそう思いませんか?」


(えええー! ホントかよ。真面目に述べちゃってるよ、この人は! よーーし、ママ、反撃しろ! そんなもんはセンスがないとハッキリ言ってくれーっ!!)


 風見鶏状態の常松は、ママの反撃に期待を込めつつ、ママの顔を見上げる。

 ママも常松の訴えかけるような表情に気づくと、悪戯っぽい微笑を常松に返す。


「確かに、沙希ちゃんの言う通りかもね~。沙希ちゃんにそう言われちゃうと“ツネマー”って呼び名も可愛らしくていいかも。そ・う・よ・ね~、ツ♡ ネ♡ マー」


(!!!!! やられたーー!! この女はドSかよ)


 ドSママのダメ押しが見事に決まり、常松のあだ名は、めでたく“ツネマー”に決定した。

 そして、3人の女性たちからの見事なまでの波状攻撃にやられまくる常松であったが、不思議と精神的ダメージはなく、むしろ、異様な楽しさを感じていた。


 つまり、常松の奥底に眠るマゾの原石が目覚め始めたのである。


 ということではなくて、多少いろいろあるとはいえ、女性3人に囲まれて酒を飲む光景はある意味ハーレムなわけで、自分の置かれたナイスな状況を理解していたのである。。

 ハーレム状態だからであろうか、酒がいつもよりも数段美味しく感じていた。


 しかし、そんなM的ハーレム状態は、そうそう長くは続かなかった。


「あーっ、いけない! もうこんな時間なのね。 ママー、チェックして!」


 沙希は腕時計を見ると、慌てて会計を告げて、そそくさと帰り支度をはじめた。

 時計は深夜0時をまわっていた。常松が来てから1時間足らずである。


 常松はせっかく仲良くなった沙希に未練を感じてしまう。


「もう帰っちゃうの? なんだか、寂しいなー」

「ごめんなさい! 明日は朝一で会議があるの。早めに出社して資料をまとめないといけないのよ」

「それは大変だ、仕方ないね。じゃあ、明日も頑張って!」

「そのうちに、またお会いしましょう」

「うん、またね!」


 沙希は会計を済ませると、ママに見送られて店をあとにした。


 沙希が帰ってしまい、なんだか妙に寂しい気分になる。

 まるで、合コンが始まって1時間もたたないうちに、目当ての女子が帰ってしまった時の虚しさのようだ。


(俺もそろそろ帰ろうかな)


「せっかく、いい雰囲気だったのに、残念だったわね~」

 見送りから定位置に戻ってきたママは、揶揄うような目つきで常松を見る。


「いや~、そんなことないですよ。3人いた美人が2人になっただけですから」


「あ~ら~、ツネマー、わかってるじゃな~い♡ まだ、ここに2人も美人がいるんだから、寂しくないわよねーー。でも、沙希ちゃんを口説くのは大変よ~。私に比べたらそうでもないけど」

「ママって、そんなに競争率が高いわけ?」

「高いに決まってるじゃな~い。サマージャンボの1等賞並みの倍率よーー。巨泉のクイズダービーでいったら、篠沢教授の倍率みたいなものよ~」


(古っ!! 古すぎるよ!)


「ママの世代がわかってきちゃったよ!」

「え~っ、いやだわ~。もしかして、篠沢教授って固有名詞出しちゃったからかしらあ」

「俺と世代が変わらないんだなーって思ってね」

「ツネマーと同世代? ってことは、もしかして、ツネマーも20代後半ってことなの~」


 ママの明らかに偽りとわかるセリフに常松は返す言葉がみつからない。

 その時、店の扉が開いて、ひとりの客が入ってきた。


「あーー! 須賀さーーん、いらっしゃーーい!!」

香奈ちゃんがうれしそうな笑みで出迎えた。

どうやら、常連客の登場らしい。


(ついに常連客のお目見えか)


「あら~、ガースーじゃな~い、今日は遅いのねーー」


(“ガースー”・・・って、ひどい呼ばれ方だなー)


 常連客のあだ名を聞いて可哀相に思いつつも、“ツネマー”と優劣はつかないように思える。


 そんな可哀相な“ガースー”の顔をチラ見して常松は思った。

(確かに“ガースー”って感じだよなー。だけど、なんだかちょっとカッコつけてるっぽいな。カッコつけてるのが見え見えの男ってダサイよなー)


 自分のことを棚にあげまくり、“ガースー”を残念に感じると同時に、ガースーの渡りに舟的な登場を絶好のチャンスだと判断した。


(今がチャンスだな! よーーし、ガースーとバトンタッチしてしまえ!)


「それじゃあ、俺も明日は早いんで、チェックお願い!」


「あらー、まだたいして飲んでないじゃない。もう帰っちゃうの? あと少しだけ飲んでいけばー?」

「いやいや、もういくよ! いかないとね」

「ダメよ~~!! イク時は一緒よ~!!」


(ここはゲイバーかよ!!)


 と、ツッコミをいれたい衝動の常松であったが、ここでツッコミを入れてしまうと、ズルズルと引き込まれて帰れなくなりそうに思い、グッとこらえて席をたった。


「はいはい、今度、一緒にイキましょう! じゃあ、お勘定よろしく!!」


 ツッコミ衝動を無理やりに抑えつつ、会計を済ませると、ママに見送られながら店を出た。


「また来て下さいねー。うちのお店はイケメン君、大歓迎だから、ネ!!」


 別れ際のママの甘い言葉に、気分をよくした常松は、店の扉の前に立つママに手を振って、「そのうちに、またね」と呟くようなセリフを残した。


 帰路途中、立ち止まって夜空を見上げると、珍しくキレイな星空が広がっている。


 いつもよりも広大に見える星空を見上げながら、また歩きだす。

 しばらく歩いているうちに脳裏に浮かぶのは、沙希の端正な顔立ちだった。

 

 が、沙希の顔がすぐに消え、突然、ママの巨乳が浮かび上がった。


 そして、常松は、ハッ! としてgoodな感じで思う。


(あっ!! そういえば、結局、ママの名前は??)


 果たして、ママの名前は“不二子”なのだろうか?

 そんな、どうでもいい謎を残したまま、常松は家路を急いだ。


 そして、ボソッと一言、


「仕方ないなー! また、今度、行った時に確かめるかな」


 と、満天の星空に口実を告げた。


 MISS MYSTERY LADY.


 <第1夜 終>


この回まで我慢して読んでくださった方々、ありがとうございました。


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