第3話 馬場のトランクスの色
何故か、この稚拙な小説に間違ってアクセスしてくれる方が意外に多いので、
正直申し訳ない気持ちになってきました。
おそらく、大半の方は、タッチアンドゴーしていると思われますが、
それにしても、恐縮してしまいます。
わざわざ、読みにきてくれて、ありが…申し訳ございません!!
一言、お詫びを申し上げます。
ママのお色気ギャグが店内に炸裂するなか、初心者丸出しの常松は空いた口が塞がらなくなるほどの戦慄を覚えていた。
正直なところ一発のエロネタでこれほどの衝撃を受けてしまったのであるから、もし第2波を喰らってしまったら後ろへひっくり返って後頭部を強打して、蟹のように泡を吹いて、救急車を呼ばれて、そのまま救急病院の彼方へと消えて行ってしまうのではないか・・・と、常松は焦燥感を隠せないでいた。
そんな初心者丸出しの常松を哀れだと思ったのかどうなのかは不明だが、若い方の女性、香奈ちゃんがママにツッコミを入れる。
「ほらほら、お客さんの口が開けっ放しになっちゃってますから~。可哀相でしょう」
(香奈ちゃんに“開けっ放し”とか言われちゃってるよ。別に、股間のチャックが開けっ放しじゃあないんだから、放っといて欲しいよなー)
常松は、そう思いながらも不安になり、誰にも気づかれないように自分の下半身のチャックが閉まっているかを確認する。
(セーフ!)
「おバカな会話はこのくらいにして……“はじめまして”ですよね?」
常松の股間のあたりをチラ見しながら、ママが笑顔で問いかける。
(アウトだったかも!)
「(アウトだけど)はじめてだよ」
「こういう店って、よく行かれるんでしょう? 普段はどちらで飲んでいらっしゃるの?」
(んんーーーっ!? 俺って、そーんなにスナックをあらしまくっているオッサンに見えるのかなあ?)
思わずショックを受けてしまう常松であったが、そんなショックを隠しつつ、否定を試みる。
「いやーー、こういう店って初めてなんだよねー。普段はカウンターBarで飲んでいるからね」
「あら〜? いつものオシャレ~なBarじゃなくてごめんなさいねぇ」
「!!! えっ? いや! 別にこの店が悪いと言っているわけじゃあないですよ」
「ウフフ…このお店だって、洒落たカウンターBarと大してかわらないのよ。ねえ、香奈ちゃん」
“不二子”らしきママはバイトらしき香奈ちゃんに、ちょっと悪戯っぽく同意を求めるように言った。
「もちろん、うちはオシャレなお店ですよーーー」
「ほら~、若い香奈ちゃんだってうちはオシャレなお店だって言ってるわよ~。強いて言えば、オシャレなBarとの違いは、こ~んなにイイ女が二人もいるってことかしら〜♡」
「そうそう、こ~んなに美人のスタッフが二人もいるオシャレなBarなんて、なかなかないわよねー、ママ♡」
「ちょっと、ちょっと、ここがオシャレでないとは一言も言ってないでしょ。ところで、やっぱりこういうオ・シャ・レな店ってボトルとかキープした方がいいよね?」
“どうだー”的な口調で反撃開始。
「あら、ごめんなさいねぇ。やっぱり、うちはオ・シャ・レな店だから、ボトル入れていただいた方がお得ですよ〜。ねえ、香奈ちゃん!」
「ですよねー。うちみたいにオ・シャ・レで良心的なお店の場合は、焼酎かウイスキーのボトルを入れて、オ・シャ・レな感じで飲んでもらった方がいいですよねー、ママ♡」
「そうそう、オッシャーー! な感じで飲んでほしいわ・よ・ねーーー!」
(もう、いいっつうの!)
常松の中途半端な反撃は、見事に何十倍にもなって跳ね返されてしまった。
勝負球を軽々とスタンドに運ばれてしまった投手のような気分だが、最早どうでもいいやー状態で酒を注文する。
「じゃあ、ウイスキーのボトルにしようかな。俺はダサイから一番安い奴でいいよ」
「ええーっ! お客さん、イケメンなのにダサイんですかー?」
(おいおい!!! ん!? 俺がイケメン?)
「おおー! マジで? 俺ってイケメンの部類だと思うの?」
香奈ちゃんのやけに素の本音っぽいセリフに思わず本心を声に出してしまう。
「だって、モテそうに見えるんですけど~」
(けど? “けど”のあとは何? 何を言うのかな? この子、いや香奈ちゃん、いや香奈様は、真面目にイケメンだと思っているのか? たぶん、そうだろう。もう俺、チョー浮かれてしまうなー。俺って、若い子にもウケがいいんじゃないの?? やっぱり、俺はまだまだ中年のオッサンじゃあないぞぉ!)
ほんの数十秒前までの“どうでもいいやー状態”とは180度も転換しちゃった常松は、浮かれに浮かれまくってしまい、その辺りによくいる残念な奴=モテない奴と化していた。
当然、プレゼンで負けて憂鬱だった気分は、南半球の遥か彼方まで吹っ飛んでしまい、妙な浮かれ気分のオーラをまとってしまう有様。
そんな残念なトランス状態に陥ってマヌケ顔をしていると、ふと、カウンターの右奥から突き刺さるような視線を感じた。
(ヤバッ!! そういえば、女の客がいたんだった。しかも、イイ女っぽいのが!
もしかして、俺のニヤけたマヌケ顔の一部始終を見ていたのかー!? これは、かなり恥ずかしいぞ!)
残念面の常松は、おそるおそる右奥をチラ見した。
(やっぱり!! なんだか半分バカにしているような、呆れた表情でこっちを見てるよぉ。だけど俺も俺だよなー。何を思いあがって、あんな小娘のセリフに反応してニヤけまくってしまったんだろう。俺って、チョーマヌケだ! もの凄ーく恥ずかしい! ホント、恥ずかしすぎる!!)
常松は、全盛期のジャイ○ント馬場のトランクスのように真っ赤になってしまう。恥ずかしさは極限に達していたのだ。
しかし、恥ずかしさには単位がない。
常松がどれくらい恥ずかしいのかを数値では表しにくいが、あえていえば、恥ずかしい時は穴に入りたくなるから、その“穴があったら入りたい穴”に1000回は入らないと羞恥心が消えないほどの恥ずかしさだった。
つまり、恥ずかしさの単位を『穴』と仮定すれば、そのレベルは1000穴ほどに達していた。
1000穴に到達したことで、常松の顔色はジャイ○ント馬場のトランクスの色のように真っ赤になったという訳だ。
そんな1000穴くらいの恥ずかしさの中、常松は思う。
(こんなに恥ずかしい気持ちは何年ぶりだろう? 穴があったら、入り・・んっ?
あっ、よく見ると、穴だったら、ここに良さそうなのがあるな…………)
残念面の常松は、極度の恥ずかしさと緊張感から、穴があったらいれたくなってしまっていた。
やっぱり、そっちの方のオチなのかい!
と思われていることと思います。




