第1話 サラリーマン根性全開!!【改訂版】
――ちゅうねんなのかーっ!? 俺って中年!?
オヤジ街道まっしぐら!? いやいや、俺はまだ若い・・・つもりだって!
来年には四十。
誰がどう見ても中年の悲しきワーキングマン常松京太郎は、自分を“オヤジ”と認めまいとしていた。
「ったく……。こんなこと考えてる時点で、もうオヤジなんだよな俺。好きで歳取ったわけじゃねぇのに」
机の上の書類を握りつぶし、勢いよくゴミ箱に放り込む。
その瞬間――。
「おーい、常松ぅー! ちょっと来い!」
怒鳴り声。
よりにもよって、部長の不機嫌な声だった。
「はい……」
常松はため息を飲み込み、重い足取りで部長席へ向かう。
「常松ぅ、またコンペ落ちたらしいな! お前、ちゃんと仕事してんのかよ!」
「今回はスタッフも新しくして、斬新な企画にしたつもりなんですが……残念です」
(仕事してねぇのは、お前だろうがっ!)
心の中では毒づきながらも、表情だけは“営業スマイル”。
それがサラリーマンの哀しい本能だった。
「なんで負けたのかよく分析して、報告書まとめておけよ!」
(……はいはい。お前が書けっつーの)
「はい、近いうちに上げます」
口が勝手に“従順なリーマン部下のセリフ”を吐いてしまう。
これが“哀れなワーカービー”というやつだ。
席に戻ると、常松は心の中で自嘲した。
(どんなに頑張っても、センスのない上司と、使えないクリエイターの集まりじゃ勝てるわけねぇんだよな……)
報告書が仕上がったのは、時計の針が夜の8時を過ぎた頃。
「……やっと終わった。けど、あと見積書二件分、あげなきゃなんだよなぁ。ほんと、終わらねぇな」
残業続行。
パソコンのモニターに映る自分の顔が、やけに疲れて見えた。
「常松さん、今日は遅いですねぇ~。キャパ超えてるんじゃないっすか?」
背後から軽〜い声が飛んできた。
振り返ると、後輩の辻野がにやけ顔で立っている。
「おいおい、2日分の仕事を終わらせた男に向かって何言ってくれてんだよ。俺は仕事が早いんだぞ!」
「またまたぁ、早いのは下半身の方でしょ!」
「てめっ、先輩に言うときは“手が早い”って言えよ!」
「ダブルで早いんすかー!?」
「コラコラ、それはセクハラ発言だぞ! ……いや、俺が訴えられる側か?」
二人で爆笑。
笑っていると、胸の奥に溜まっていたモヤモヤが少しだけ晴れたように思える。
「やべ、常松さん、壊れたよ! 逃げよっと!」
辻野は笑いながら去っていくが、親指を立てて振り返った。
「常松さーーん、哀れなワーカービーなんかにならないでくださいよー!」
残された常松も親指を立てて返すと、小さくため息をついた。
(……なんか、クラウディな気分だなぁ。毎日毎日、会社の言うなりで、犬のように走りまわって、残業三昧だもんなぁ)
夜十時。
オフィスを出ると、ビル街の風がやけに冷たかった。
(よし。飲みに行くか)
嫌なことがあった夜は、いつも同じ店へ。
TQ線S駅から十五分ほど歩いた丘の上にあるBar「フェローズ」。
そこは、高台にあるから通称「星の降るBar」とも呼ばれている。
店名の由来は“Fellowship”――仲間。マスターの手描きの看板が見えてきた。
だが、看板には修正の跡があり、“フェラーズ”と書かれていた時期もあったという。
(ロをラに直すって、どうやったんだろうな……)
そんなくだらないことを考えながら、常松は扉の前に立った。
――だが、この夜が、俺の人生をひっくり返す“初体験”になるなんて――まだ知る由もなかった。
間違って、読んでしまった方で、ご気分を害されたり、思考回路が混乱するなどの症状が生じてしまった場合は、速やかに他の作品を口直し的に読んでいただくことをお薦めいたしますww




