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短編4 ソロ義勇兵爵ダチュラの活動録その1 後編

「うおおおお———っ!!」


 緑色の肌をした醜悪な顔の背の低い一本角の生えた男…ゴブリンの男は手に持った刃物で力いっぱい、真っ白なくらい蒼白で綺麗で整った顔をした背が高く細身で長い耳の男…ダチュラに斬りかかったがひらりと躱され硬い装甲の上から膝蹴りを入れ蹴り飛ばす。


「っは、その程度の攻撃じゃ当たりすら…」


 だがその蹴られたゴブリンの男の影から、別のゴブリンの男が分銅鎖のような物をダチュラに投げつけ体に巻き付くとそのまま地面に両端が突き刺さりダチュラを完全に拘束する。拘束されたのを確認すると半数のゴブリン達は即座に距離を保ったままダチュラを取り囲み、呪文を唱え始め…一斉に魔法を放つ。


「なるほど…最初の一人はそもそも視界を遮る役、後の奴で動きを封じて安全な距離で全員でタコ殴りか…これだけの策を講じれるってんなら定石に凝り固まった前任共に闇討ちは成功するってもんか…だが!」


 ダチュラは身動きが出来ず魔法を食らい続けているにもかかわらず、平然とした顔でするりと鎖が地面に落ち抜け出す。そしていつの間にかその手には大鎌はなかった。そんな様子を見ていたゴブリン達に突如上空から回転して飛翔する大鎌に襲われ数人が倒れる。残りのゴブリン達は必死に身を屈めて躱したり盾で防いだりすると、大鎌はそのまま回転したままダチュラの手元にするっと戻ってきた。


「その程度で帝国の上位帯ランカーの壁は超えることは出来ねぇぜ。お前ら雑魚にも分かりやすく教えてやるが、まぁそもそも上位にいる奴らなんか知名度が高く色んな敵に研究され尽くしているからな。定石、初見殺し、対策…んなもん戦わされる本人にとっちゃ分かりきってる事だからな。常に複数の手段をちゃんと持ち合わせてこそ上位の壁は厚いってもんだ。きゃひゃひゃぁ」


 ダチュラが軽く大鎌を振るうとどす黒い刃のような、衝撃波とも思えるような一迅の斬撃がゴブリンの身体を斬り貫き、その後ろにいるゴブリンすらも命中し二枚抜きして倒れる。その様子を見ていたゴブリン達は明らかに動揺したじたじの様子だった。


「さてと…今回てめぇらを仕切ってるリーダーはどこのどいつだ…」




   「それはね…私達だよっ!」


 声のする方にダチュラが振り向くとそこには三人組が立っていた。三人とも悪魔のような角と尻尾が生えており、マスカレイドマスクをつけて正体を隠していて、右側は緑のピッチリスーツを着て象のマスクをつけた3mもありそうな巨漢の男。左側は赤のピッチリスーツを着て蝙蝠のマスクをつけたやたらガリガリの不健康そうな男。そして真ん中にはまるでリーダーのように立ち振舞う、赤いロングストレートの髪に豹のマスク、スレンダー体型にブロンドのハイレグに黒のゴムハイヒールに薄いゴムグローブという艶っぽい雰囲気をまき散らす女性…三人がダチュラの前に立ち塞がった。


「…なんだ、オイスター一味かよ」


「「「あげ———っ!?」」」


「だーれがオイスターよ!私達はノイスジー一味だって言ってるでしょーが!せーっかくの初登場だってのにもうちょっとこう、こんな登場の仕方ないわよ!」


「まぁまぁパド様、今現在作者が執筆中の段階では我々の初登場予定がここと、もう一つ直近であるのですが投稿の順番がどちらが早いか分からないからここで自己紹介しても実は登場二回目だって事もありますから」


「そんなメタいこと言うんじゃないわよダチカンナス!まだこれだけの台詞数で既にあーこいつらあれねって画面の前のみんなに思われるじゃないの!!」

「あー、あー、痛い痛いごめんなさいパド様梅干は堪忍して~」


 最初の印象とはすっかり真逆な様子でワーギャー騒ぐ三人組をぽかんと眺めるゴブリン達と、退屈そうにあくびまでするダチュラ。そして三人は改めて整列し直すと真ん中にいるパドと呼ばれた女が軽く咳払いをして


「いい、いくわよ!」


「んが!俺のパワーに敵う奴はいない、一日10食。巨人種とのハーフ、ストロン号!!」


「天才秀才頭脳明晰策略家、守備範囲は14歳。月人種とのハーフ、トラッP!!」


「美しすぎて全てのイケメンが私にく・ぎ・づ・け♡華麗なるハンター…祖人種とのハーフ、パ♡ド」


「我ら」「ノイスジー家に仕え」「魔人種の王様に忠誠を誓う」


「「「ノイスジー一味!!」」」


「さぁ~…、あんた達ぃ!撤収よぉ!!」




 静寂…、三人組の決めポーズの後の余韻がもはや時間が切り取られたかの如く静まり返る空間、風に木が揺れる音と、鳥がはばたき糞がゴブリンの頭の上に落ちる程誰も状況を飲み込めなかった。だがしばらくして全員の肩の力が抜けながらパドを見た。


「…えー…、パド様、今なんと?」


「ん?撤退って言ったわよ」


「なぁ~んでこんな今からってタイミングで撤退するんですか?」


「なんでって、私達の役目は充分に果たしたし…そもそもあんな強い男が増援に来るなんて聞いてないわよ!こういうのはもっとさっきの奴らよりもちょっとだけ強い奴が来るのが定石ってもんでしょ」


「…役目だぁ?中堅クラスの兵爵をしばくのがおめぇらの目的なのか?」


 ノイスジー一味の気の抜けた会話に脱力していたゴブリン達はダチュラの声に三人組もゴブリン達も一気にピリついた。


「あら、特別に教えてあげるわ…私達は何も敵国の兵だからって殺したりはしないわ。ただ…ちょーっと…、連れ帰って我らオズランド帝国の先兵兵になってもらうだけよ!!」


 パドが指を鳴らすと突如どこからか数人の男女が飛び上がりダチュラに襲い掛かった。ダチュラは咄嗟にその攻撃を大鎌と体で防ぐと、その男女は傷だらけでボロボロの姿が目に入った。


「こいつら…前任の連中か、気を失っている状態で操っているのか。オズランドに連れ帰るためにか!?」


「あーりゃまぁ~だいせいかーい。あーっしの傀儡魔法を使えばちょちょいのちょ~いなのよ」


「んでもここじゃ完全に洗脳出来ないから、ノイスジー家の当主様にやってもらって晴れてオズランド帝国の為に戦う兵士の完成ってわけだど」


「こらっ、ストロン号!そこまではいわなくていいの!…まぁとにかく、ちょっと連れ帰る数は減っちゃうけど、このまままとめてどっかーんして私達は任務達成幹部昇進給料アップで超ハッピーってわけよー!」


 いけいけやっちゃえームードの三人と、やられなかったゴブリン達はやられた奴を抱えたり、追撃の魔法を弱った操り兵爵ごとダチュラに撃ち込んだりして来た。ダチュラは操られている兵爵の攻撃を凌ぎ、さらにゴブリン達の魔法から弱った兵爵を守り、反撃も出来ないでいた。だがそれもついに時間をかけ過ぎたのかゴブリンの一人が杖を地面に突き立てると、ダチュラの足元が光り輝き…巨大な炎の柱が弱った兵爵ごとダチュラを包み込んだのだ。


「いーっやったー!!」


「やりましたねパド様、コーランドのレベルの高い戦士がこんなにあっさり手に入るなんて、まさに棚からスコーンと炒り豆と、あとえっと…」


「そんな庶民的なもんじゃなくてもっと贅沢品でいいでしょーに…あと、なんといいますか、これよくないフラグじゃ…」


 そんなことを言っていると、突然火の柱が激しくうねると次の瞬間勢いよく爆散し、中には殆どダメージのないダチュラと、その周りには黒い靄で包まれ宙に浮く兵爵達、その様子は意識は無いのは変わりないがダチュラを襲う気配もなかった。なによりもあの火柱の中にいたというのにまるで何事もなかったかのようにけろっとしているのだった。


「けっひゃっひゃっひゃぁ…いいねぇ。まさにオズランド帝国らしい戦い方、感動したよ…ところで話は変わるが」


 ダチュラが余裕そうに身体をほぐしながら話していると、横からふわりふわりと…同じように黒い霞に包まれた弱った男女がさらにどこからか浮遊してダチュラの傍に集められた。


「6…7…8…。お前達がとらえたって言う兵爵はこれで全員か?」


「あーっ!あっしらが隠してたやつらもいるーっ!?」


「こらー!かえせー!ドロボー!!」


「っけひゃひゃひゃ、どうやら間違いなさそーだなぁ。んじゃあ礼に…この俺様がお前らの撤退を手伝ってやろうじゃねーかぁ」


「あら本当?うれしーたっすかる~♡」


「…えーっと、パド様この流れからすると、多分…」


 そう言い残しダチュラは思いきり大鎌を地面に突き刺すと、その直後にノイスジー一味の足元が光り輝く、それは先ほどダチュラの足元が光ったのと同じ輝き…そして次の瞬間、先ほどダチュラが受けた火の柱とは比べ物にならない業火の柱がそびえ立ち、三人は黒焦げになりながら空高く打ち上げられたのだった。


「やぁーん、なんでこーなるのよ~」


「まぁまぁパド様、また三人で一個のヌゥメン食べながら作戦会議しましょ」


「野草のスープに、革靴のステーキ、…はぁ、もっと腹いっぱい美味しいもん食いて―なぁ~…」


「「「イーラッリーカ~……」」」


 はるか上空できらりと光り見えなくなったその三人を追ってゴブリン達全員も走って追いかける。




「…オズランド帝国による拉致行為、それが今回の依頼失敗からの緊急依頼ってことね。ご苦労様ダチュラ」


「あぁ、…にしても流石に攻撃してくる相手を御守りしながら奴らをぶっ飛ばすのは少しばかり疲れたぜ。後の処理は任せたぜメイガン」


「えぇ、勿論。貴方は義勇兵爵として…私は貴方の専属職員として、子供達の養育費を稼ぐ…いつもの事でしょ」


 帰りの送迎の車、豪華な車内にお洒落な酒瓶を机の上に並べ、複数の女の子達に囲まれながら、柔らかいソファに座るダチュラのそのさらに上に座る、キャバ嬢のような赤いドレス姿の耳の長い金髪の女性…メイガンが体を弄られながらダチュラの口元にワインの入ったグラスを傾けつつレポート書類を眺める。


「…一応形式的にだけ済ませると、オズランドの工作員である魔人種の一団は拉致予定の兵爵を置いて逃走、貴方は被害者を優先するために追跡は行わず、被害者は軍が引き受けダメージは大きいものの命に別状はなかった。だけど前任メンバーが取り逃がしたウルフもその後貴方が討伐してくれたので最終的には当初の目的は達成された…っと、報告書はこんな感じかしら」


「…にしてもオイスター一味ごときでやられる兵爵が増えるってのはまずいんじゃねーのか?レベルが低すぎるぜ。なぁてめぇらもそう思うよなぁ~」


 そう言いながらダチュラはメイガンを膝の上に乗せながら、両手を伸ばして近くにいる女性達の身体を引き寄せまとめて抱く。そんな様子に女の子達も満更ではない様子。


「…ねぇ?実の妻が目の前にいるってのに、何してるのかしら?」


「っけっひゃっひゃっひゃっひゃ…そう妬くなって。てめぇも、家で待ってるあいつらも、ガキ共も…全部俺のものだ。最強の俺様が全部守ってやるよぉ。おまんま代も稼いできてやるしぃ…愛してもやるさぁ。絶対に捨てたりなんかしねぇよ。全部俺のもんだ。…そのうえで、もっと欲しいだけさ。けひゃひゃ」


「全く旦那様ってば」


 そう言いながら膝の上でダチュラが飲んだワイングラスの、飲んだ部分を自分も口につけてワインを飲む。そんな様子を眺めながら満喫するダチュラ。机には明日以降の依頼書の山と札束が置かれダチュラの周りには女性達が取り囲む煌びやかな車内。これまでとは少し愉快なトラブルに見舞われつつも明日の帝国の平和も、野良最強の義勇兵爵であるダチュラが解決していく…のかもしれない…———

次回投稿は3/14予定

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