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短編4 ソロ義勇兵爵ダチュラの活動録その1 前編

「うおおおおおぉぉぉぉ!!」


 本日も帝都領土内は晴天、絶好の狩り日和。今日も今日とて依頼に出向いた義勇兵爵達は街の郊外で被害を出す野生動物を狩っていた。本日の相手は家畜を襲うウルフ、10匹程度の群れでリーダーはまだ若く統率力も未熟で蒸れの忠誠心も低い…そんな野生動物などある程度経験を積んだ兵爵達の敵ではなかった。


「定石通り前衛が攻撃を防いで、後衛で仕留めるんだ」


「横や背後を取られないようお互いにカバーし合うんだ」


「群れからはぐれた!グラップラーが対応してくれ」


 統率力の差でウルフ共を圧倒する兵爵達はものの一時間で群れの殆どを討伐し残すは3匹となった。もはやウルフには家畜を襲う意思どころか、戦う気力も、逃げる体力も残されず、ただ自分達の群れを壊滅させた兵爵を睨みつけることしか出来なかった。


「…可哀相ではあるが、逃げた先でまた別の牧場を襲わないとも限らない。ここで…」


 兵爵の一人である男が剣を高々と掲げた…その瞬間、ドカァン!とその男の身体が爆風に包まれ、その場に倒れ込んだのだ。それを見ていた他の兵爵達は即座に集まって周囲を警戒した。


「ウルフじゃない!魔法の攻撃…でもどこから」


「この辺りは視界を遮るものが多い。特に木の影には注意しろ」


「敵の数は」「詠唱聞こえたか?」「今のままでいいのか…?」


 先程まで連携が取れていた兵爵達はたった一度の爆撃に困惑の色を示し口数が止まらなかった。だが、全員が1か所に集まったのが良くなかった。兵爵全員の足元が光り出したかと思えば…次の瞬間全員が炎の柱に包まれ、その炎が消滅すると中には斃れた兵爵だけが残っていた。




「大変です!マネミアの村のウルフ討伐依頼失敗です。緊急の援護要請に行ける方はいませんか!?」


 いつもは多くの義勇兵爵が酒や食事を楽しみながらわいわいと賑わいながら依頼の補充要員として待機している軍施設の依頼受付をする集会場。…だったのだが今日は人がほとんどおらずガランとしている。そんな中で一際大きな受付女性の声だけが響く。


「…先輩、もう今日何件も人員余りがあって待機していた人殆ど出発しましたよ?」


「そ、そうよね…。とにかく片っ端から騎士団に魔電を送り行けるところを探さないと…」


「もうそれだったらいっそ戦闘できる国衛兵爵が出ればいいのに、どうしてわざわざ義勇兵爵に依頼するのですか?」


「国衛兵爵は帝都や都市の防衛が第一なの、ある程度明確に都市に対しての脅威が迫ってる時には実働出来るけど、ただでさえだだっ広い帝国領土で実態も見えない小さな被害に対し国衛兵爵が動いて防衛力に穴が開いたところを大きな組織に突かれたりでもしたら小さな街なんかとは比べ物にならないレベルの被害になるわよ。だから私達軍は事前準備と事後処理だけしかしちゃダメなの。…まぁ例外行動してる人いるけど…」


「そんなもんですかね…?」


「ともかく無駄話してる暇ないの、もう昼の12時を回ってるわ。依頼内容は事態収束、元の依頼であるウルフ討伐もしくは一時的な家畜被害の発生を防ぐ事。そして依頼参加者全員の保護回収、それから今回の襲撃犯の情報収集及び犯人の確保。それらが全部できるだけの人材を1時間で集めるのよ」


 忙しなく職員達が機器を使用し連絡を取り合う集会所の職員サイド。一応集会所内に残っている義勇兵爵にも声をかけられるが、その全員が「No」と返すだけだった。


「駄目です、どの騎士団も既に予定があると…」


「まだよ、とにかく騎士団を片っ端から魔電、その後は非公認のグループ団体、あと優秀なソロ活動をしている…」


 そんな中、ジリリリリッと職員の魔電機器に着信が入る。職員はすぐに機器を手にする。


「大変申し訳ございません!ただいま集会場は対応が難しい状態となっておりますのでご用件は後程」


『おい、さっさと仕事を回せ』


「先輩!早く次の…」


 魔電器機に出ている職員が周りに制止を、静かにするようにハンドサインを送ると慌ただしかった集会場はすっかり落ち着き静かになった。そのおかげで相手の声がクリアに聞こえるようになった。職員は一度呼吸を整えてから再度喋り出す。


「…いつもお世話になっておりますダチュラ様。窓口担当の」


『あー、そう言うのはいい。その様子だとどっかへましただろ…俺様が行ってやる』


「で、っですがダチュラ様は今別の依頼を」


『もう終わった』


「…へ?」


『ゴラドンの討伐くれぇ1日もいらん、2時間で済ませた。すぐに車と女を手配しろ。報酬も増やしておけな』


「…ありがとうございます。すぐにこちらで手続きと手配をさせていただきます…それではよろしくお願いします」


 プツリ…と通話が切れる音と共に、すぐに多くの職員がそういう方向で行動を開始する。対応をしていた職員もすぐに足早に受付から離れるとその後ろを後輩と思われる職員がついて来る。


「せ、先輩…ダチュラ様って…」


「…義勇兵爵ランキング57位、だけど騎士団に所属していない人の中では間違いなくトップに位置する帝国の実力者の一人…最上位に位置していない理由はおそらく騎士団に所属していないと言うただ1点のみであり、騎士団に所属すれば間違いなくランキング一桁に入れるだけの逸材なのは間違いないわ」


「そんな人がどうして騎士団にはいらないのですか…?」


「さぁね、とはいえ我々軍にとっては絶対に手離してはいけない大事な太客でもあるの。ダチュラ様は兵爵個人による依頼参加率は断トツトップ、達成率も9割超えてほぼ100%。割りの悪い依頼ですら全て片付けてくださるし、そもそも今ダチュラ様が受けている依頼も緊急で回ってきた依頼を飛び込み参加でもう片付けたと言ってるのよ」


「す…すごいですね…」


「ともかく!無駄話して機嫌損ねる事なんてあっちゃダメなの!要望の好みそうな女性と上等な送迎車に、それから酒とお食事、後必要そうなものを別の車に積み込んですぐに出発させるわよ!!」




 それから30分程後に軍から二台の車が出発し、一つ目の軍の駐屯地を訪れすぐに出発、マネミアの村まで到着するのに1時間程度経過した。


「…けひゃひゃ、まぁまぁの送迎だったがまぁご苦労だったなぁ~」


 マネミアの村で展開した駐屯地に車が止まり、扉が開くと中からはキャーキャーと女の子達のピンク色の声援を受けながら一人の男が車から降りてきた。その男は顔面が真っ白なくらい蒼白で、背丈は2mを超えるだろう高さ。だがガタイ自体は細身、紫のショートでオールバックな髪の下に見える長い耳。ダーク系の胸丈インナーのような防具の上にコート、真っ黒なジーンズのようなズボンを履いていてゴテゴテとした装飾がついている。


「ご足労おかけしましたダチュラ様!」


 ダチュラと呼ばれたいかにもチャラそうな態度をしている男に対し国衛兵爵達は整列し敬礼をする。


「だいたいのことは車の中で把握した。てめぇらはそこで待ってな…陽が沈む前に済ましてやらぁ」


 それだけ言い残しダチュラはもう一台の車から禍々しい大鎌を受け取って早速街の外へと駆り出す。街の外には先ほどまで戦っていたであろう形跡はまだ残っているが遺体などは片付けられた後なのか人や動物などは誰も何も残っていなかった。ダチュラは車から持ってきた酒瓶を飲みながら大鎌の石突を地面にこつんと打ち付けると、足元に黒い靄のようなものが一気に広がった。その靄はまるで風に流れる煙のように足元を揺らぎながら一方向に伸びていく。ダチュラは黙ったままその靄の方向にどんどん進んでいく。

 徐々に街が遠くに見えるほど離れた頃、茂みの中で急にしゃがみ込む…その視線の先には


「…っち、くっせぇな…。だが当たりだな、数日前に家畜を喰ったであろう栄養たっぷりの生肉を消化してやがる」


 おそらく前任達が仕留め損ねたウルフの痕跡を見つけたであろうダチュラはそれを確認するために屈みこんだその瞬間、背後から何かが襲い掛かった。だがダチュラは一切動じることなく対応もしなかった。背後から振り下ろされた棍棒のようなものはダチュラの後頭部に命中…

 することなくするりと棍棒がダチュラの身体をすり抜けたのだ。


「ほぅ…ゴブリン系の鬼人種。つまり…オズランド絡みだったとはな…クッヒャヒャ、こいつぁ報酬もだいぶ跳ねるなぁ」


 ダチュラの後ろには殴りかかってきた人物…軽装備に身を包みつつも緑色の肌をした醜悪な顔の背の低い一本角の生えた男の他にも、同じような姿をした男達が合わせて10人程、それぞれの得物を手にしながら…まるで実体を感じない身体が霞のように揺らいで見えるダチュラが立ち上がり、その身長差から敵を文字通り見下ろし指折り数えて笑うのだった…。

次回投稿は3/11予定

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