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短編3 『槍サー騎士団』の活動録その1 後編

 ホーホーと夜の鳥が鳴く月明りの夜。槍サー騎士団の面々は無事浮遊する船『帆浮船』に乗る海賊たちを捕えることが出来たが、そのために時間を使ってしまい仕方なく野営することとなったのだ。トラックの運転手は明日の運転の為に就寝しており、騎士団は交代で見張りを続けていた。帝都の街の外は危険がつきもの、夜行性の野生動物に襲われたり、犯罪者や不法入国者にとっては格好の獲物…そんな敵から守らなければならず、基本は街の外で停泊なんて危険だが、ライトはあるとはいえ真っ暗な中で運転しながら襲われたらそれこそ本当に危ないため残念ながら暗くなった以上ここで一夜を過ごすしかなくなったのだ。


「うす、ヌゥメン持ってきあした~。それともちょっと寝ます?」


「サンキュ、枯れ木燃やしてるの楽しいし…も少し起きてるよ」


 マコトがカップ2つを持ってきて、オレンジ色のアウタージャケットを着た白髪短髪男と黒い軍服にも似たような服装に身を包んだ銀髪で綺麗な長髪の女性に手渡す。


「…おまえの分は?」


「へへっ、ここにありますよ」


 そういうとポーチの中からごそごそととりだす…それは二人に渡した容器が別の即席麺とは違いまさに容器とセットのインスタント麺。それと水の入った鉄製容器を焚火の上に吊るす。


「ちゃっかりしてんなマコトちゃん。何味?」


「緑黄野菜たっぷりのグリーンメンです。…てかキッドさんもそうなんですけど、ちゃん付けやめてくださいよバラズカさん」


「アキラでいーよ。…ところで団長って今寝てるのか?」


 白髪短髪の男アキラがヌゥメンをすすって食べながら質問を投げかけるが、3人で見合ったまま答えが返ってこない。


「…え、誰も見てないのか?」


「トラックでヌゥメン作ってる時にはマリナージュさん見てないっすよ?」


「…便所?」


「せめて用と言え馬鹿者。…私も一度トラックに行ってみる。他のメンバーの誰かは見ているだろう」


「ありがとうございますベルレラさん」


 そう言い残し長髪の女性ベルレラは手を付けていないヌゥメンをマコトに手渡してトラックの方角へと歩いていった。当然その道中も周囲を見渡すものの特にこれといった怪しい事はなかった。だがそれと同時に不審がるベルレラはトラックの扉を開けると中にはシアンガンが椅子にもたれかかってくつろいでいた。


「…シアンガン、マリナージュは見てないか?」


「ぁん…?焚火の方にいるだろ?」


 二人のやり取りの後沈黙したまま見合っていると、シアンガンはちっ…と舌打ちをして立ち上がり二人でトラックから降りる。二人は片手にランス、シアンガンはライトを、ベルレラは盾をもう片手に持って道路際から森の中を照らした。


「ったくよぉ、マジで団長が迷子だったりしたら…示しがつかねーだろぉが」


「…まぁ、アイツが後れを取るとは私も思ってない。…だが用心しろ。もし団長でも勝てない敵がいたりしたら…」


「そんときゃぁあたしを置いて他の奴全員トラックにぶち込んで全力で走らせろ」


 ベルレラからの返事が返ってこないまましばらく茂みを揺らす音だけが響き渡る。未開拓区域にも入りだいぶトラックから離れて捜索をしているが人の気配は何もなかった…。当てが外れたと戻ろうとした矢先、ぬかるんだ地面に自分達とは明らかに違う人の足跡を発見した。シアンガンはライトの明かりを弱くしその足跡を静かに、だが急いで足取りを追う…。

 しばらく足取りを追うと何やら遠くから煙と明かり…そして話し声のようなものが聞こえてきた。二人は一度追うのを止め聞き耳を立てる。


「やりましたねお頭!あの『一番槍のマリナージュ』をとっ捕まえれるなんて」


「ま、…まーな。なんにしてもこいつを俺達が一生遊んで暮らせる額で買ってもらって、この海賊家業ともおさらばってわけだ」


「ここまで離れりゃ探しにもこれねぇっすもんね。早く酒飲みましょうよ」


「バカ言え、一休みしたらまた出発だ。まだ離れたりねぇよ…出来りゃあ今晩中に他の海賊と合流したいもんだが」


 そんな話を聞き二人は互いに無言で合図を送り音を立てずにじっと待った。シアンガンは慎重に静かにぼそぼそと何かを呟くと彼女の目の前に半透明のディスプレイが現れ、ポーチからまるでネズミそっくりの道具を取り出し電源を入れると、ディスプレイに自分の顔が映し出された。性格にはネズミそっくりの道具の視線の先にあるものが映し出されているのだ。

 そしてそっと魔力の細い線で繋ぐとネズミは走り出し慎重に…慎重に音を立てずに声の主の傍にある木に登らせ、枝から下を見下ろさせる。ディスプレイには焚火を囲む3人の海賊たちと、その近くにもぞもぞと動く大きな衣袋が横たわっていた。


「…ゴー!」


 シアンガンの大きな掛け声に海賊たちはピクリと反応し立ち上がろうとしたその時、ネズミが焚火に向かって飛び落ち海賊たちの顔の高さで爆発したのだ。爆発の規模は小さいものの不意の攻撃を受けた海賊たちは驚き身動きが取れなかった。


「バトルアーツ、クイックシューズ」


 海賊達の一瞬の隙にシアンガンが目にもとまらぬ速さで地面に転がっていた衣袋を回収する。海賊達は焦りながらもカトラスナイフを抜きシアンガンに突きつける。お頭と呼ばれた男が仲間である2人の前に立つ…


「あっれー、私ばっかり見てていーのかな~?」


 シアンガンの言葉と同時にお頭の後ろを蒼い閃光が迸ると、2人の海賊が大きく吹き飛ばされたのだ。その攻撃の元にはベルレラがランスを構えていた。


「っち、ちっくしょー…俺の船を、仲間を…俺の金鶴と作戦がぁ!!」


「バトルアーツ、白刃カウンター」


 お頭が怒りのままにカトラスでシアンガンに斬りかかろうとすると突如シアンガンの目の前に白い渦のようなものが発生する。その渦の中にカトラスが入るとまるで水に沈むようにゆっくりな動きになって止められ、その直後渦はさらに勢いを増し、数本の鋭い刃になってお頭の身体に突き刺さったのだ。


「ぐあぁ!?なんだ…なんだその魔法はぁ…」


「便利っちゃ便利だけど、システムのせいで使い勝手も燃費も悪い、正直好きじゃないんだよね~」


そんなぼやきをしている傍らで、ベルレラに吹っ飛ばされた海賊2人がボロボロになりながらもやり返すとばかりにベルレラに襲い掛かる。


「ふん、根性だけは認めてやろう」


「舐めた口開きやがって!」


「こうなったら、お前ら二人もまとめて売り飛ばしてやる!!」


 二人はカトラスで同時に仕掛け挟み撃ちするが、ベルレラはランスと盾で受け止める。男二人掛かりで力いっぱい押し込んでるはずなのに、ベルレラは二人の男をそれぞれ片腕ずつで何なら押し返している。そして突き飛ばし返し地面に尻もちをつけさせる。


「そんな軟弱な力如きでは所詮蛮勇に過ぎぬと心に刻み込め!!勝利の女神よ、我が殲滅槍に宿れ!!」


 その勇ましい掛け声とともにベルレラの身体は青白い炎に包まれ、その生命エネルギーそのものと言える力が徐々に槍を渦巻き螺旋状になり回転力を増す。


「バスター・オブ・ロンギヌス!!」


 その強力な攻撃エネルギーの塊とかした状態で突撃槍と共に突き貫くとその威力に二人の身体が宙を舞い、周囲の木々すらも吹き飛ばし地面すらも抉る威力だった。その様子を間近で見ていたお頭は恐怖で腰を抜かしカトラスを落として慌てて逃げようとする。


「バトルアーツ、シュートザ・グングニル」


 すかさずシアンガンが片手で持っていた突撃槍を投げると、その勢いのままお頭の服に突き刺さりそのまま木に深々と突き刺さって完全に逃げる手段を失ったお頭にゆっくりとシアンガンが歩み寄る。


「命が惜しかったら…有り金と船、全部私が貰ってくね♪なぁっ!!」


「はっ、はひ…わかり…ま…した…」


 シアンガンのほぼ恫喝同然の脅しと、お頭の真横を通るように木に前蹴り、にっこにこの笑顔からの鬼のような形相にお頭は泡を吹いて完全に気を失ってしまった。そんなやり取りを見ていたベルレラはただ呆れてため息をつくしかなかった。

 その後二人は3人を拘束後団長が捕まっている衣袋を開けるとそこには…アルコールで酔ったかのような真っ赤な顔をして呑気に寝ているマリナージュの姿があった。その口周りにはチョコレートのような跡がついていた。


「…なぁ、これって、酒菓子…」


「…記事にされたらランキング下がったりしないだろうな…このことは極秘にしよう」


 呆れたように溜息をするベルレラ、ぐっすりと飲むっているマリナージュをおぶるシアンガンと、縛り上げた三人を連行するベルレラ…無事にトラックまで戻るとその後は何事もなく一夜を過ごし、そしてまた朝焼けと共にトラックは出発するのであった…———

次回投稿は3/7予定

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