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短編0 ようこそ義勇兵爵用依頼管理局兼集会場へ

「いらっしゃいませ、義勇兵爵用依頼管理局兼集会場帝国本部へ。…あら、もしかして初めての方ですか?でしたらまず叙爵合宿お疲れ様でした。初めての依頼は緊張すると思いますが、我々軍のサポートや、他の人も参加されますので少しずつ頑張っていきましょう」


 僕はつい昨日兵爵になったばかりの平凡な男…そんな僕が仕事のためだと思いとりあえず軍の運営する集会場に赴き、緊張しながらも初めて受付に立つと受付のお姉さんがせわしなく色んな書類を運んできてくれた。


「ではまず依頼の簡単な流れを説明いたします。依頼とは帝国領土内で様々な場所で問題が報告され、それを軍は依頼という形で発行し義勇兵爵の皆様に提示いたします。ご依頼は早朝6時より開示され、兵爵の方々はそこからどの依頼に参加するのかお選びいただきます。とは言っても本日分は…」


 そう言いながら少し苦いような顔をするお姉さんが壁にかかっている時計を見ながら後ろで仕事をしている人に何か話をしている様子だ。ちなみに時計は午前9時半、依頼開示から3時間も過ぎてしまっている。


「…ごめんなさい。今日分の依頼は既に満員となっているの。明日出発の依頼ならまだまだ空きはあるから今受ければ明日は仕事出来るわよ。もしくは…緊急の依頼が来たり、既に満員の依頼に欠員が出たりするとこっちからお願いすることもあるから、そのために待機していただけると助かるわ」


 申し訳なさそうにするお姉さんから明日の依頼書を受け取りながら、とりあえず待機することを伝え、受付から離れ近くのテーブルに座る。そこで僕はテーブルに明日の依頼書とちょっとした間食を広げて時間を潰す。

 少し見渡すと集会場には自分と同じように依頼を待っているのかここの職員でなさそうな人が酒を飲んだり話したりして過ごしている。そんな風に時間を潰していたら自分の座っているテーブルに別の兵爵のグループであろう2人組がやってきた。僕はその2人と情報交換を行った。


「依頼欠員出ました!2名です」


「緊急依頼です、すぐいける騎士団はいませんか」


「ベネトリーニに応援で行ける人誰かいませんか~」


 しばらくすると職員から何度も声をかけられ、そのたびに僕よりも先に集会所に来ていた人が受諾し出発していくのを見送った。そして少しずつ人が出たり入ったりを繰り返していると…僕にもチャンスが巡ってきたのだ。


「待機していただきありがとうございます!依頼内容は輸送物資の護衛依頼です。先のメンバーが野生生物に襲われ負傷したので急遽代員が欲しいと連絡が入りました。車はこちらで出しますので至急出発してください」


 僕は頷くと、たまたま同じテーブルで情報交換していた二人も同じ依頼に向かう事となり、三人で集会場を出ると職員に案内されそのまま車に、急ぎつつも安全に走る車は徐々に都心部から離れ、ついには人気がないどころかもはや都市の郊外、建物一つないただの舗装された道しかない草原をひたすら車で走っている。すると正面に一台の大型トラックと、複数人の武装した集団がトラックを守るように取り囲んでいるのが見えた。車はそのトラックのすぐそばで停車し俺達は車から降りて荷物も下ろした。


「おぉ、君達が代員で来てくれたメンバーだね。助かったよ…この先野生動物が出没しやすい未開拓地域の傍を走らなくちゃ行けなくてな」


 そう言いながら挨拶をするおそらく武装集団のリーダー、そして僕達と入れ替わりで負傷した人が代わりに車に乗りそのままUターンして帰っていく。僕達はこの武装集団メンバーに加わってこのトラックを護衛することになった。僕は荷物から兵爵としての武器を取り出して準備する。

 それからしばらくはトラックの荷台に乗り、揺られながら待機する。時に急停車するとみんながトラックから飛び出すから僕も一緒になって外に出る。すると野生動物がトラックを襲っているのでみんなで対処をする。僕はまだ新人そのもの、それでも一生懸命戦闘のサポートをする。とは言っても先に来ていた人達はみんなしっかりとした連携で、野生動物の注意を惹き、隙を見て的確に仕留め、周囲を索敵し他にトラックを襲う個体がいないかしっかり探す。みんながみんなそれぞれの仕事をこなしていた。勿論僕と一緒に来た二人も他の人に劣らない活躍で仕事をこなしていた。

 ふと僕の視界に、未開拓地の奥の高い崖の上に野生動物の群れを見かけた。それは僕らが相手にしているよりも遥かに大きそうな…強そうな『ゴラドン』だった。


「あぁ…あれは斃さなくてもいいよ。というか斃しちゃいけないんだ。俺達の仕事ってのは闇雲に野生動物を絶滅させることじゃないんだ。あくまで俺達の生きるテリトリーに入ってしまった野生動物を、軍が数を管理したうえで討伐するんだ。勿論あの個体がこのトラックを襲うのならやむを得ず斃さなきゃならないんだが…ああして人が踏み入ることのない場所でそっとできる生き物はそっとさせておくのが一番さ」


「まぁ依頼の中にはそんな人の足を踏み入れない危険な場所で生態調査をしたり、危険な生き物の狩猟を許可されたりするけどな。そんな名のある兵爵になるってのもある意味俺達の目標の一つだぜ」


 そんな風に話を聞きながら再度出発、2~3回ほど野生動物を退けたのち、ようやくトラックの目的地である帝国七大地方都市のひとつ、鉱山都市『ビストリタルノフスティア・グルィツァ』に到着した。


「いやぁ、皆さんご苦労様でした。代員の皆さんもご協力ありがとうございました」


 トラックの運転手のお礼を聞きながら僕等はビストリタルノフスティア・グルィツァの街中を歩き、ここの集会場に入り真っすぐ受付に向かう。そしてリーダー的人が受付の人と話…依頼の完了を報告すると、軍から報酬がそれぞれ全員に配られた。このお報酬はトラックの会社が軍に支払っているお金で今回の一件に関わっている全員に配分されるので当然僕にも封筒の様なものが一袋手渡しされた。僕はすぐその中を確認する、その中身は…500F分の紙幣(※約8000円相当)だ、これは一般帝国民が一日仕事していて得られる日当の倍以上だ。僕は初めての報酬を両手でぎゅっと握りしめた。


「聞いたぜ、お前今回が初めての仕事だってな。その割にはなかなか根性あるって話じゃねぇか…どうだ?どこかいい騎士団でも紹介しようか?」


 そんな僕に受付の男性が声をかけてくれた。僕は戸惑いながらもお願いする旨を伝えつつ、こっちの集会場に掲載されている明日の依頼の一覧を眺める。何か帝都方面の依頼がないかと探していると、僕と一緒に依頼をした女性も同じように依頼を眺めていた。僕等は目を合わせると何故か分からないがくすりと笑い合った。


「ねぇ君…一緒の依頼受けない?どうせ帰る方角も一緒なんだし、チームって事で伝えたら色々お得らしいんだって、先輩が言ってたの」


 そう言いながら目に留まった一枚の依頼書を受付へ持っていく。受付の人もそれを受諾し、僕らは明日朝7時に交流する約束をして外に出た。外はすっかり真っ赤な夕焼け空になっていて、お腹の時計も夕食の鐘を鳴らすとまた彼女に笑われてしまった。

 義勇兵爵はこうした都市間の移動が多い事もあり、軍の施設として簡易宿が存在している。僕はその一室を借りれることとなり疲れた体と、パンパンに膨れたお腹を休ませるためベッドに横たわった。寝心地はそんなに良くはないが僕はすぐ深い眠りにつくことが出来た…。




 これはそんなごく平凡な義勇兵爵の1ページに過ぎない。ある人はベテラン戦士として多くの危険生物と戦ったり、ある人はこの帝国の為他国の脅威に立ち向かったり、ある人は戦う事をやめ夢へと突き進んだり…そんな多くの兵爵達の物語がこれから始まるのであった…———

次回投稿は2/11予定

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