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聖女はクソです  作者: しおやき


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 「僕は罪を犯しました」

 「そうなのですね」

 「はい。でもそれは人に言えない罪なのです。それでも誰かに話したくて、ここに来ました」

 「大丈夫ですよ。ここは全ての罪深き者を受け入れる場所です。貴方が話して心が少しでも軽くなるのなら、どうぞお話ください。決して口外しません」

 「僕は・・・」



――――――



 ここは神殿の一番奥にある小さな部屋だ。

 奥と言っても、正門から入るのではなく、裏門、いわゆる除け者がとおる道をとおって辿り着く場所である。


 ここで言う除け者とは罪深き者のこと。

 そして自分の犯した罪に苦しめられている者のことを指す。


 私はここでその者達の()()()を毎日聞いている()()の見習い神官だ。

 神殿に勤めて10年も経っているのにいつまでも見習いなのは多分虐めだと思う。そしてその虐めに更に拍車がかかったのか去年から何故かここに回された。


 毎日、毎日飽きもせずただ人の話を聞くばかり。

 何が楽しいかって?最初はもちろん内緒話のように聞いていたから楽しかった。不倫関係とか、家族内のゴタゴタに巻き込まれて犯罪を裏で犯しているとか。人の秘密を仕事で聞くって凄いことだと思う。それでもやっぱり飽きは来るもので、この場所に異動してから一ヶ月くらいで段々としんどくなってきた。


 「はぁ〜・・・・鬱になりそう」


 ここに来る人はもちろん何かしら爆弾を抱えてる人だけど、その話し方や、息づかい、不気味な笑い声に、話す内容がもう悲惨すぎて毎日悪夢にうなされそうになる。


 「お疲れ様です」

 「お疲れ様。明日はようやく休みですね」

 「はい。ホッとしてます」


 定期的に来る人もいれば1回だけしか来ない人もいるけど、一番厄介なのが毎日来る人だった。そんなにネタがあるのか?と思いながらヘドロのような話を持ってきては耳をふさぎたくなるほどの気持ち悪い声と息づかいで約1時間座席を占領する。


 「それではまた来週」

 「はい。ゆっくり休んでください」


 話の内容を他人には伝えてはいけないため、愚痴を言うことも禁止されている。 

 そして帰る家なんてないから、神殿の近くにある見習い専用の寮に毎日トボトボと歩いて一人帰宅するのである。



 ◇◇◇


 「今日で半年か。よく頑張ってるわ」

 

 人事異動なんて発令されないけど、相槌を打つから聞き手が変わったことくらいすぐに分かる。以前はどうやら男性の神官だったらしく機械的な相槌であまり評判が良くなかったらしい。

 

 「そもそも聞き役であって相談役じゃないんだから別に好かれる必要ないと思うけどな」


 かくいう私も機械的に返しているところはある。相槌を打つ回数は多いかもしれないが、脳みそに情報をなるべく与えないように無になる瞬間があるのでその時ばかりは無機質に「そうなのですね」と返している。


 「そういえば、あの人、あれっきりだったな〜・・・話して肩の荷が下りたのかな」


 異動してから3ヶ月が経ったある日のこと、わりと落ち着いた若めの声で、堅物のような雰囲気の人が来たことがあった。彼が話していた内容は、「婚約者と話が合わない。一緒に居て疲れるから婚約破棄をしたいのだが、なかなか受け入れてくれないので困ってる」というものだった。

罪でも何でもないにも関わらず、なぜこんな所に来たのかは不思議であったが、本当に悩んでいたようだったのであの時は相槌以上の会話を交わしてしまった。

 今の時点で2度目がないことを確認すると、恐らく何か解決したのかもしれない。


 「明日はとりあえず神殿にお祈りに行ったあと、部屋にこもろう」


 ベッドの上で疲れ切った私は、耳を押さえながらため息。

 そして3日後に酷い事件に巻き込まれるとも知らずに、そのまま眠りについた。

 



 


 

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