タケル、告白大作戦 ― しかしこの世界は味方をしない
タケルはついに決意した。
「今日……言う。さくらに。」
気合いを入れた瞬間。
ガラッ。
男子A(筋肉系)
「タケルおはよう! 今日も最高だな!」
男子B(文学系)
「タケルくん、今日の髪型……尊い……」
男子C(工学部)
「今日何かある? 雰囲気が違うぞ……」
タケル
「全部バレてる!?!?!」
逃げようとするタケルを男子連合が囲む。
商学部
「まさか……告白するのか?」
タケル
「なんでわかる!!?」
スポーツ系
「お前の今日の“頑張る顔”は分かるんだよ……」
タケル
「そんな顔あんの!?!?」
男子連合の視線が刺さる。
彼らはタケルを愛している。
だからこそ――
文学系
「……やめないか?」
タケル
「なんでだよ!!?」
筋肉系
「失うのが怖いんだ……お前を……」
タケル
「俺はお前らの彼女じゃねぇ!!」
空き教室に連行されたタケル。
黒板には大きく書かれていた。
『告白練習会(男子主催)』
タケル
「嫌だ! 絶対嫌だ!!」
文学系
「さくらさん役、俺やるね。」
タケル
「お前かよ!!」
“さくらさん役”の文学系が
とんでもなく気持ち悪い甘い声を出す。
文学系
「タケルくん……好き、だよ……?」
タケル
「やめろおおおおおお!!!!!」
工学部
「いや、クオリティ高いな…」
スポーツ系
「逆にこういう妨害を耐えれば本番は余裕というわけだ。」
筋肉系
「俺がタケル役をやろう。」
タケル
「なんで二役すんだよ!?」
夕方。
男子連合の妨害を突破し、
ついにタケルはさくらを呼び出した。
タケル
「さくら! 話がある!」
さくら
(……この顔。すごく緊張してる……)
頬を赤くしながら、うなずく。
タケル
(よし……いける……今日は誰にも邪魔され……)
その瞬間。
草むらから声。
「がんばれタケルーーーー!!!!」
タケル&さくら
「そこにいたの!?!?!」
男子連合、茂みに潜伏。
完全にスナイパーのポジション。
筋肉系
「タケルならできるぞ!!」
スポーツ系
「さくらさん、タケルを頼む!!」
文学系
「タケルくんの幸せ……応援してる……」
タケル
「帰れぇぇぇぇぇ!!!!」
さくらは口元を押さえて笑っていた。
タケル
「さくら……俺は……その……」
さくら
「うん……」
その瞬間、風が吹く。
タケルのポケットから紙が飛ぶ。
タケル
「うわっ!? ちょっ……!」
その紙には「告白セリフ案」と堂々と書かれている。
タケル
「ちがう!! これ違う! 練習の!!」
さくら
(かわいい……)
しかしタケルが拾おうとした瞬間。
ドンッ!!
後ろから男子Dが転んで突っ込んできた。
タケル&さくら
「「誰だよ!!!」」
男子D
「見てたら……足もつれて……」
タケル
「帰れええええ!!(今日何人目だよ!!)」
気を取り直し、タケルは深呼吸した。
「さくら……俺は――」
その瞬間、
さくらのスマホがブルルルルと震える。
さくら
「あ、ごめん友達から……」
タケル
(なぜ今なんだよおおお世界!!)
しかしさくらはすぐに切った。
「……大丈夫。タケルくんの話のほうが大事だから。」
タケル
「えっ……」
顔がさらに赤くなる。
(言うしかない……! 言え俺!!)
タケル
「さくら……! 俺は……!」
また風が吹く。
男子連合がざわつく。
筋肉系
「タケル!!! 頑張れ!!!!」
タケル
「うるさいぃぃぃぃ!!!!!」
しかしさくらが一歩近づき、
タケルの手をそっと取った。
「タケルくん。
言いたいこと、私……だいたいわかってるよ。」
タケル
「……え?」
さくら
「だから……聞かせて。
タケルくんの言葉で。」
タケルは震えながら――叫んだ。
「さくら!!! 俺は……好きだ!!!
ずっと!!ずっと好きだった!!!」
沈黙。
男子連合が息を呑む。
さくらは柔らかく微笑んだ。
「……うん。
私も、タケルくんが好きだよ。」
男子連合
「「「タケルーーーーーー!!!!」」」
タケル
「今感動してんだよ邪魔すんなぁぁぁぁ!!」
さくらは笑いながらタケルの手を握り返す。
男子連合はその場で全員泣き崩れた。
筋肉系
「タケル……幸せになれよ……」
文学系
「俺たちは……見守る……」
スポーツ系
「タケル……本当によかった……」
タケル
「だからなんで葬式みたいになってんの!!?」
さくら
「ふふっ……タケルくん、これからもよろしくね。」
タケル
「……っ、ああ……!!」
この日、
タケルの世界はやっと“地獄”から“恋”に変わった。
(ただし男子連合はまだいる)




