さくら視点で見るタケルの魅力(カオスを愛でる少女)
私――篠宮さくらは、
最初、狛江タケルくんのことなんて意識していなかった。
でもある日、図書館でレポートを書いていた時、
静寂の中で突然、
バタン!!!!
と誰かが椅子から転ぶ音がした。
見たらタケルくんだった。
でも転んだ本人なのに、
なぜか周りの男子から「タケル、大丈夫!?」と全力で助けられていた。
タケルくんは「す、すまん……」と泣きそうな顔。
――なにこれ、かわいい。
その日から、私は彼の“音”を追うようになっていた。
ドサッ
ガタン
あっ、ごめんっ
走るタケル
転ぶタケル
男子に抱きつかれるタケル
どれも全部、他の人には迷惑かもしれないけど、
私にはぜんぶおもしろくて、愛しい。
タケルくんは、欲望が顔に全部出る。
「金が欲しい」
「女の子と話したい」
「成功したい」
それを隠そうともしない。
普通の人は、そういうのを恥ずかしがって取り繕うけど、
タケルくんは――
100%そのまま出して、100%失敗する。
でも、だからこそ見ていられる。
「またやってる……」
「頑張ってるのに全部裏目だ……」
「でも諦めてない……」
気づいたら、
私はタケルくんの失敗に勇気をもらっていた。
だって、あんなに転んでも立ち上がるんだよ?
あんなに男子にモテてもめげないんだよ?
すごくない?
タケルくんは、気づいてないけど――
優しい。
レポートで困ってた後輩に
「お、俺でよければ…!」
って震えながら手伝ってたの見たし。
落としたプリントを拾ってあげたと思ったら、
自分のプリントも風に飛ばされて泣いてたし。
私が本を落とした時なんて、
拾ってくれた拍子に自分の飲み物もこぼして濡れてた。
不器用すぎる。
カオスすぎる。
でも優しさだけは本物。
そんな人、ほかにいないよ。
タケルくんとの初めてのデート。
彼は、
謎のホストみたいな服で来た。
もう、可愛いを通り越して尊かった。
映画館ではポップコーンを粉々にして
静寂の中「サラァ…」って音が響いた時、
笑い死にするかと思った。
カフェでは「恋人じゃなくてラテください!」と叫んだ。
タケルくんは顔真っ赤にしてたけど、
私は思った。
――ああ、この人の隣は、絶対飽きない。
タケルくんは私を楽しませようとしてくれてる。
それが全部空回りしてるけど、
その不器用さを含めて、ちゃんと嬉しかった。
私がタケルくんを好きな理由は、
カオスだからじゃない。
たくさん失敗するのに、
何度でも挑む姿がかっこいい。
笑わせようとして失敗しても、
その失敗が誰よりも私を笑顔にしてくれる。
男子にモテるところだって……まあ……
ちょっとだけ嫉妬はするけど、
タケルくんが魅力的って証拠だし、別にいい。
ただね――
本人が気づいてないのが、
一番の問題。
タケルくんは“女の子にモテたい”って言うのに、
すぐそばの女の子がどれだけ見てるか、
全然気づかない。
だから私は今日も言う。
「また、ご飯行こうね。タケルくん。」
いつか気づいてくれるまで、
この距離を楽しむつもり。
だって――
タケルくんは、世界で一番おもしろくて、
世界で一番優しい人だから。




