デート決定、タケルの脳がバグる
ある日。
篠宮さくらが何気なく言った。
「タケルくん、今度の土曜…時間ある?」
「ある!!!!!」
タケル、秒速で食い気味に即答。
「じゃあ…二人でどこか行かない?」
タケルの脳内で花火が1万発打ち上がる。
(ついに…ついに俺の時代が来た!!!!)
しかし同時に、脳がショートした。
言葉がうまく出ない。
「ぼ、ぼくはっ、その、デ、デートなんて、こわくない…!」
「こわくない…? う、うん……?」
さくらはちょっと不安そうだった。
デート前日。
タケルは服を選ぶため、友人に相談した。
しかし来たのは男友達5人。
「タケルには黒のタイトが似合うな…」
「いや白シャツで清潔感だろ!」
「タケルは素材がいいから、何でも似合うよ…」
お前ら俺に惚れすぎだろ、とタケルは思った。
結果、5人のアドバイスが合体し、完成したコーデは——
黒タイト+白シャツ+謎のサングラス+胸元にバラの造花
完全に 失敗したホスト。
タケルは鏡に映る自分を見て泣いた。
(だがもう時間がない…!!)
デート当日。
さくらは可愛いワンピースで来た。
対してタケルは、謎ホスト。
「……今日、なんかイベント?」
「い、いや…俺の中の情熱が…!」
さくらは笑ってくれた。
(優しい…女神だ…)
まず映画館へ。
静かな感動系の映画だった。
しかしタケルは——
ポップコーンを緊張で握りしめて粉々にした。
上映中、
“ボフッ…バサバサバサ……”
と音がする。
さくら「……タケルくん?」
タケル「す、すまん……」
さらにクライマックス、
さくらが涙ぐんでいる時に、
タケルの腹が鳴った。
グゥゥゥゥゥ……
(俺の体よ……よりによって今なのか……)
さくらは笑いながらハンカチを差し出してくれた。
「お腹すいたなら、あとで何か食べよ?」
女神だった。
二人はオシャレなカフェに入った。
しかしタケルは緊張しすぎて、
店員に向かってこう言った。
「恋人…じゃなくてラテください!!」
店員「……ラテですね?」
さくら「ふふっ」
タケルは羞恥で死亡。
さらに会話中、
タケルは緊張でストローを噛みすぎて、
最後にはストローが2つに割れた。
さくら「タケルくん……かわいい」
(かわいい!? 俺は男だ!!)
デート終盤、
タケルは勇気を振り絞った。
「さくら…今日は楽しかった。また行こう。」
「うん!私も楽しかったよ。タケルくん、頑張ってくれてたし。」
その瞬間、
ようやく報われた気がした。
風がふわりと吹き、いい雰囲気になる。
タケル(キ、キスとか…あるのか……?)
緊張で震えるタケル。
距離が近づき——
その時。
後ろから男の声。
「タケル!!!今日もかっこいいよ!!」
タケルより背の高い男子学生が、
なぜか抱きついてきた。
さくらは吹き出した。
「……タケルくんって、ほんと人気者だね。」
「いやいやいや今じゃない!!」
タケルのロマンは、また男に奪われた。
別れ際、さくらが言った。
「タケルくん、また誘うね。今度はもっとゆっくり話したいな。」
「……お、俺でいいのか?」
「うん。今日みたいに、頑張ってくれるタケルくん好きだよ。」
タケルは完全に昇天した。
だがその帰り道、さっきの男子学生がまた言った。
「タケル、次のデート練習しようぜ?」
「俺は女の子と練習したいんだよ!!」
今日もタケルの苦悩は続く。




