24:祝☆共犯者誕生
庭の外れまで来てしまった。
話す内容が内容だから、使用人の休憩室を使うわけにもいかず、こういった場所しかないのだろう。
もちろん庭師の手によって手入れされているので、雑然とした様子はない。花よりも樹木が多い場所で、すでに真夜中を過ぎているので辺りは真っ暗だった。
こんな暗がりに私のようなAランク冒険者を連れて来て、オリバー様は怖くないのかしら?
むしろ私のほうが相手を簡単に倒せてしまいそうで怖いなと、彼の細い首筋を見て思う。
「あっ、あにょ……! オリバー様はどうして私の正体をフィンドレイ公爵様にお伝えしなかったのでしょうか!?」
緊張のあまり少し噛んでしまったけれど、言いたいことは口に出来た。
オリバー様は「う~ん、俺もどうしようか悩んだんだけれどね?」と言う。
「俺がテオ様にマグノリアちゃんの正体を伝えないのは、本当にまずいことなんだよ。テオ様はあんまり人を信頼される方じゃないから。バレたら俺の信頼度が激減する。こう、ギュンって下がる」
オリバー様は急降下するグラフを描くように、空中で手を動かした。
「でもさ、マグノリアちゃんは魔導人形のフリをしていないと、他人と関われないんだろう?」
「……はい」
「この短期間で、マグノリアちゃんはもうフィンドレイ公爵家になくてはならない存在になっているんだ。きみがいなければイセル坊ちゃまはまだ喋ることが出来なかっただろうし、妖精に対応することも出来なかっただろうし、忍者だって捕まえられなかったと思う。イセル坊ちゃまにとっても、テオ様にとっても、きみは『信頼していい相手』になっちゃってるんだよ」
「……はい」
「ここまでフィンドレイ公爵家に喰い込んじゃったマグノリアちゃんを、俺は未来の家令として追い出すわけにはいかないと思ってる。本当はきみを人間として改めて雇うことが出来れば一番いい。でも、きみは他人が怖くて、魔導人形のフリをしていなければ働くことが出来ないんだろう。それならもう、黙ってるしかないじゃんか……」
「オリバー様……」
つまり、私はこれからも子守り用魔導人形として働いていいってこと?
「あっ、ありがとうございます、オリバー様……!」
「うわっ!? 泣き顔こわっ!? 無表情で泣くと呪いの人形みたいで怖いよ、マグノリアちゃん~」
胸ポケットからハンカチを取り出したオリバー様が、私の顔をゴシゴシと拭いてくれる。「はい、鼻もチーンして」と鼻水も拭ってくれたので、私は子供のように従った。
なんだか兄のような方だな。私は一人っ子だから、きょうだいはいないけれど。
一瞬、従兄のバーネル兄様を思い出したけれど、あの人にオリバー様のような優しさがあれば結婚を拒否したりはしなかったかもしれない。
「いい、マグノリアちゃん? これからは俺もきみのサポートをするから、絶対に人間だとバレちゃダメだよ? 俺の信用に関わるから」
「は、はいっ」
「これからは俺が使用人食堂からマグノリアちゃんの分の食事を手に入れてくるからね。浴場も、深夜なら空いているから使って。俺が入り口で見張っておく。あと、体調が悪くなったら絶対に俺に報告して。なんとか町医者を手配するよ」
「本当にありがとうございます、オリバー様……! オリバー様は私の理想のお兄様です!」
「え~。いやだよ、俺。こんな手のかかる妹を持つの」
「も、申し訳ございません……」
褒めたつもりだったけれど、オリバー様に嫌がられてしまった。
なんでお兄様なんて言っちゃったの、私。やっぱり人間に向いてなさすぎるわ……。
「とにかく。俺のためにも人間だってバレないでね、マグノリアちゃん」
「はっ、はいっ! 頑張ります!」
こうして私はオリバー様という共犯者を得たのだった。
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