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1:お前は人間に向いていない



「マグノリア、お前も来年で成人になる。だが、お前のような社交性のない女が領主では、ラインワース子爵領の今後が心配だ。そこで私の息子バーネルと結婚させてやろう。お前も婿が従兄なら安心だろう? 喜べ」

「……は、はい? 叔父様……?」


 私が執務室で大量の領収書を眺め、どうやって支払うか金策を考えていると。

 後見人である叔父様がいつも通りノックの一つもせずに入室して、そう宣った。

 叔父様の後ろには従兄のバーネル兄様の姿もあり、彼は彼で「マグノリアはつまらない女だが、顔が良いから結婚してやってもいいぜ」と下卑た笑みを浮かべている。

 娼館遊びの激しいバーネルお兄様にジロジロと体を見回されて、私は背筋がぞわっとした。


 バーネルお兄様と結婚だなんて、本気で意味が分からなかった。

 だって彼は平民なのだ。

 叔父様はラインワース子爵家の出身だけれど、成人とともに貴族籍を失っている。今は未成年の私の後見人だから、一緒に子爵家で暮らしているけれど。

 平民が貴族と結婚出来ないわけではないが、私にあまりにも旨味がない。


「……お、叔父様っ、私は、そのっ、ラインワース子爵領のためになる結婚がしたいと思っています……」

「ハハハ! 笑わせるな、マグノリア。誰がお前のように無表情で愛想もない女を相手にしてくれると言うんだ? お前をほしがる令息など、どこにもおらん!」

「……私に魅力はないかもしれませんが、仮にも貴族です。政略結婚をしてくださる方が、いらっしゃるかも……」

「そんな男がいたところで、すぐに離縁されてしまうさ! お前はそもそも人間に向いていない! 魅力のないお前と結婚してやってもいいと言ってくれた私の息子に泣いて感謝すべきだ!」


 叔父様の一言に、私は固まった。

『人間に向いてない』だなんて、人に向けて使っていい言葉ではない。

 その相手がたとえ、不出来な姪であっても。


 でも、私はショックを感じているのと同時に、叔父様の言葉に納得してしまっていた。

 私は確かに人間に向いていない、と。

 他人どころか身内である叔父様たちとも上手にコミュニケーションが出来ない。

 むしろ、叔父様と向き合うのが嫌で、ここまでズルズル過ごしてきてしまった。

 叔父様の気持ちを想像するのも苦手で、いつも怒られてばかりだ。


 ほかにも人間に向いていないと思う理由はたくさんあって、中でも一番の理由は、私がいつも無表情であることだ。

 嬉しいことがあっても、表情筋はピクリとも動かない。楽しいことがあって「あはははは!」と大きな笑い声をあげても、笑顔が作れない。悲しくて涙を流しても、怒って目を真っ赤にさせても、顔自体は無表情なのである。

 これでは人間ではなく、人形のようだ。


「一度結婚に失敗した女領主は、その後の縁談がさらに難しくなる。それなら最初からバーネルと結婚すればいい。分かったな、マグノリア?」

「……叔父様。今はこの請求書の金策を考えている最中です。結婚のお話については、あとにお願い出来ませんか……?」


 私がそう言って請求書の束を見せると、叔父様はコロッと表情を変えた。

 朗らかな笑みを浮かべた叔父様は「それは悪いところに来てしまったな。しっかり払っておいてくれ」と言って、バーネルとともに退室した。


「はぁぁぁ~……。どうしましょう、お父様、お母様……」


 私は天国にいる両親に向かって、小さく弱音を吐いた。


新連載よろしくお願いいたします!!!

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