隔離地域の章:幸多視点
包まれる光の中、幸多は反射的に流美へと手を伸ばす、が視界が真白に包まれた。とても目を開けてられず目を閉ざす。
「流美——ッ!!」
叫んだ声と共に瞼を開けると、そこは鬱蒼とした夜の森だった。
「なんだ、ここは・・・」
さっきまで駅に居て流美と一緒だった。身に起きた事が理解できず、周囲を見渡す。
「明かりがある・・・」
ここは山道なのだろうか、少し高い位置にあるらしく近くも遠からない距離に明かりが見えたのだ。
しかし一緒にいた流美はどこに行ってしまったのだろう。周囲からは人も動物も気配を感じない。
「とりあえず行ってみるか。」
とにかく、身に起きた事は異常なのだが考えるより足を使った方がいい。この場所にいても埒があかない。人が居るところへ、と幸多は山道を下ろうと決意した。
数十分は歩いただろうか。
幸多は何度か携帯を確認するが、圏外のままだ。
この場所について一切情報が無い上に、不思議な事に携帯の時刻は歩き出してから何度か確認しても時間が進んでいないのだ。山なので圏外なのは理解出来る。しかし時刻が進まない事に違和感を覚えていた。
「・・・結構距離があるな」
ふぅと息をつくと、幸多は鞄からペットボトルを取り出し少量だけ口に含む。
夜の山と言えど湿度が高く、蒸し暑い。結構な距離を進んだ気がしたが、夜の山中という事もあって距離が分かりにくい。
最初の頃より近づいたように見え、後一息だろうか。気持ちを新たに足を進めようとすると、こちらへ明かりが3つ、揺れながら近づいてくる。
———人が来る。
自然と駆け足になり、光源と捉えた安堵もつかの間。
「ぉ・・・ッ!」
おーい!と大声を上げるつもりだった。
暗がりから光は良く見え、異様な光景を幸多が目の当たりにするまでは。
「ひッ!・・・な、なんなんだよ」
幸多は咄嗟に横の藪に隠れる。
———異様。その姿を見れば誰もが恐怖を覚えるだろう。
一言で言うなら
「・・・蛇人間?」
蛇が人の形をしたような、二足歩行のトカゲのような生物は灯りを手に山道を進んでくる。
———ヅッヅッ...
近づくにつれ、尻尾が地面と擦れる音や蛇のような低い呼吸音が聞き取れるようになる。幸多は藪に息を潜めるが異様な生物に自然と身体が震える。
心拍数を無理やり抑えるように口に手を当て、必死に早くなる呼吸を堪える。
しばらく堪えると足音が遠ざかり、こちらを気にする素振りは見られなかった。
「なんなんだよアレ!」
呼吸を整えながら蛇人間が去っていった方向を睨む。奴らが持っていた明かりが遠くへと消えていくのが見えた。
「あいつらの集落なのか?」
奴らが来た方向にある集落を見やるも、蛇人間が沢山いると思うと身震いする。藪の中で幸多はどうしようもない孤独を感じた。
「ここに居ても仕方ない・・・兎に角、村の近くに行かなきゃ」
村の様子を探るべく、幸多は慎重に森の中を進んだ。