隔離地域の章:因習村(流美の視点)
寒い。冷たい。硬い。およそ、普段では味わう事が無い不快感に襲われながら目を薄っすら開ける。
最悪の目覚めと石の天井から異常を察知するが流美は状況が理解出来なかった。
恐る恐る起き上がると2畳ほどのスペースの牢屋、という他に無い場所。格子で作られたドアが気味悪くも物語る。
「なに・・・これ牢屋?」
状況が掴めず、掠れた声が漏れる。徐々に認識される状況に心拍数が上がる。檻を揺らしてみるも頑強でビクともしない。
「・・・一体、何が起きてるの?」
うずくまり、膝を抱える。僅かばかりの薄暗い蝋燭の明かりが不安を掻き立てる。
・・・ツ"ッ
何かを引きずったような音。その音に反応して腕が、足が、身体が強張る。
・・・ツ”ッツ”ッ
音が近づいてくる。瞬間、蝋燭の明かりが消えた。体を牢の端に寄せ、近づくナニかに対して感覚を済ます。
音が牢の前で収まった時、二つの眼光がこちらを見据えていた。
ナニかの呼吸音だろうか、空気が漏れているような音に暗闇でも人では無いとわかるシルエット。人間のそれに似ているが首、ひいては顔が異常な長さだ。
「・・・イヤッ!!」
認識した途端、短い叫びが口から洩れる。
蛇と人間と混ぜたようなナニか、は流美の状態なんて素知らぬ様子だった。蛇のような大きい口を広げ、ゲッゲッゲと笑った。
「ニ"エ!!ニ”エ!!!」
そう叫ぶと、ヅッと奥の牢に消えたかと思いきや
「イヤァッ!!!やめッ!!」
格子が開く音と共に叫び声が牢に響く。
また、音を立てながら蛇人間に女性が髪を掴まれながら引きずられて行く。流美の牢の前でジタバタと暴れる女性は流美の牢の格子を掴む。
「・・・た、助けて!」
流美は手を差し伸べようとしたが女性の力虚しく、強引にそのまま連れて行かれてしまった。
今起きた事に思考が追い付かない。ただ女性が掴んでいた檻を見つめていることしか出来なかった。