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2章:正体不明の確信

 朝。

 昨日と変わらず空は不機嫌な曇り空。窓を開けると2月の冷気が肺を刺し、眠気を吹き飛ばす。真人の電話が頭の片隅に引っ掛かるが芳野は足取り重く、浴室へ向かった。

 少し熱めのシャワーを浴びた芳野は制服に袖を通すも学校へ行く気には、なれなかった。

 母の寝室から気配は無く、もう出勤したのだろうか、もしくは昨日は帰ってないのかもしれない。

 真人からの呼び出しもある・・・と芳野は学校へ休みの連絡を入れた。

 深く休みの理由を聞かれる事も無く、不名崎家の家庭環境もあるだろうが保護者を通さなくても良いのはありがたい。この時ばかりは自分の母親が多忙で感謝せざるを得ない。

 思えば芳野も真人も惰性で学校に通うタイプだった。ほんのたまにサボりもしたが2人とも成績は悪くないため()()()あまり、心配されていない。真人はどちらかと言うと学外で迷惑をかけてないか、を心配されていた。

 物憂げに真人について思考を巡らせているものの落ち着かず、テレビのリモコンに手が伸びる。

 昼のニュースが中継されていた。少し普段と様子が違く、騒がしいテロップが嫌でも目に付く。

 『隔離地域から少女1名が帰還!隔離地域の謎に迫る!!』

 思わず、テレビの内容に目を見開く。これまで謎だった隔離地域から衝撃のニュースだ。中学生くらいの少女が自衛官に保護される様子が映し出されている。

 長いストレートヘアーに汚れた制服、自衛官に連れ添われてるからか余計に細身が目立つ。一瞬、遠目から澄花では無いかと思ったが澄花をよく知ってる芳野は淡い期待だと感じた。

ニュースでは少女が保護され、病院等で検査を受ける事。内部の調査に期待がかかる等当たり障りのないことばかりだ。

 情報がもっと欲しい。芳野はスマホからスレッドを確認する。

 ニュースのせいもあるだろうが更新やプレビューが桁違いに増えている。中でも目を引くスレッドがある。

 内容を確認すると画質の悪い写真が1枚上がっているだけだ。

 少女が空間を跨いで出てきた瞬間の写真、しかし横にはブレてはいるが人影がある。遠くから撮影されたようでハッキリとはわからない。この写真から得られる情報はそれだけだった。

 ニュースは次第に会見に移り替わり、超常災害担当局の局長と防衛省の官僚による会見が映し出されている。30代半ばくらいだろう。いかにも官僚といった風体の担当局長は少女の身元は非公開にし、病院での検査が終わり次第体調を見て聞き取りを行うと告げている。

 「現在に至るまで帰還者はおらず内部の調査は満足とは言えない状況です。しかし今回の出来事は行方不明者を抱えるご家族、親戚、ご友人にとって明るいニュースと言えます。」

 「———行方不明者生存の希望を捨てず、関係閣僚と原因究明、救助を進めて参ります。」

 記者からの質問が飛び交う中、退室していく姿を映して映像はスタジオへ返された。

 「・・・澄花ちゃん」

 帰還者のニュースを受け、芳野の鼓動が早まる。

 行方不明者が生存している希望。このタイミングで真人から連絡が来たのも意図を感じざるを得ない。確実に()()、具体的に説明はできないが()()がある。そして真人は芳野が説明できない()()を掴んでいる。

 正体不明の確信と共に芳野は真人に会うため、荷造りを始めた。

 


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