彼岸に咲く花 -くるいぎつね-
-序文- 詩 あやは
彼岸が近づくと思い出す
血のように紅い花を
地に飛び散る血飛沫のような花
広がりゆく血溜まりのその色を
彼岸の花を
曼珠沙華を
あの花の紅き火のゆらめきの如き
ゆらゆらと燃えるような姿を目にすると
古き時の憎き想いで心が紅く染まりゆく
燃えさかる火の如く
辺りを焼き尽くすように
紅く燃え焦がす憎しみと
黒に染まる恨みの心は
赤黒く赤黒く
己の魂も周りも巻き込みながら
渦巻く激しき炎の如き怒りと怨嗟で
全てを真っ黒な消し炭の如く変えゆく
やがて見る我を取り戻したあとの
黒き焦げ跡の如き世界の様への
立ち尽くす自らのやるせなきこと
振り返り思いつつ悔やみきれぬこと
いっそ紅き憎しみか
黒き怨みのままなら
どんなにかよいのにと
幾度感じたことか
彼岸の訪れとともに思い出す
憎しみと悲しみと
あの人を想い暖かかった心と
裏切りの凍える冷たき心とを
胸を刺した血飛沫の如き痛みと
憎しみと怨みの紅き花とを
また彼岸の花が咲く
悲しみの花が咲く
憎しみと恨みが花ひらく
曼珠沙華
この世ならざる花
その花は彼岸へと咲く
手放せぬ想いの如く
揺らめく炎のような
血のような紅さで
彼の地へと咲きほこる
この心はまた
狂いの刻を迎える