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国王様は怪訝な顔をしながらも、戸惑い混じりの声で返事をしてくれた。
「……あ、ああ。どんな褒美でも用意しよう。欲しいものが決まったのか?」
「はい。いただきたいものが決まりました。私にラウロ様をくださいませ」
やっぱり口からは頭で考えていたのと違う言葉が出てくる。
部屋がまたしんと静まり返った。
しばらくの沈黙の後、ラウロ様に遠慮がちに腕を引かれた。
「ジュスティーナ嬢、急に何を言い出すんだ……?」
「く、口から勝手に……」
「勝手に?」
「でも、ラウロ様も言っていましたよね? 私になんでもくださると!」
「確かに言ったが……」
ラウロ様は困惑した顔でこちらを見る。次から次へと考えていたのとは全く違う言葉が出てきて、もう取り繕いようもなかった。
私は破れかぶれに口にする。
「私、ラウロ様が欲しいですわ! あなたを私にください!」
「!? な、な、なにを言って……」
私が頼むと、ラウロ様の顔が途端に赤く染まった。彼は動揺しきった様子で口をぱくぱく動かしている。
ぽかんとしてこちらを見ていた国王様と王妃様は、長い沈黙の後、我に返ったように騒ぎ始めた。
「一体何を言ってるんだ! こちらが下手に出ていれば勝手なことを! そんなこと認められるか!」
「そうよ、常識で考えなさい! ラウロは隣国の姫君と結婚させる予定だと言っているでしょう!」
「でも、何でもくださると……」
「何でもにラウロが含まれるわけがないだろう!」
国王様と王妃様は、至極もっともなことを言って私を非難している。
怒った顔をしていた国王様は、何度か気持ちを落ち着けるように深い呼吸を繰り返すと、引きつった笑みをこちらに向けた。
「ローレ嬢。君がラウロを好いてくれているのはわかったよ。しかし、冷静になりたまえ。君だって、ただの子爵令嬢と王子では釣り合わないことはわかるだろう?」
国王様は怒りを抑えるように言う。反論しようもない事実なのが悲しかった。
「確かに私は平凡な子爵令嬢です。何の取り柄も……」
言いかけて言葉を飲み込む。
私は何の取り柄もない、平凡でつまらない女。今でもその思いは消えずに残っている。
けれど、それではラウロ様の隣に立てない。




