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ダンスパーティーが終わってから数日、私は相変わらずラウロ様のお屋敷にお世話になりながら学園へ通っていた。
ある日のこと、私がラウロ様のお屋敷で、頼まれた温室の花のお世話を終えて廊下を歩いていると、広間の方から話し声が聞こえてきた。
その声がやけに深刻に聞こえ、私は思わず広間の扉に近づく。
扉は少し開いていて、そっと中を覗くと、難しい顔で向かい合うラウロ様とエルダさんの姿が見えた。
エルダさんはラウロ様に向かって、少々こわばった口調で尋ねている。
「ラウロ様、それは本当ですの? 王宮にジュスティーナ様も連れて来るようにと?」
突然自分の名前が出てきて驚いてしまった。私はさらに扉に近づく。
ラウロ様はエルダさんの問いかけに、難しい顔のままうなずいた。
「ああ。今日受け取った陛下からの手紙に、王宮に来る際は呪いを解いた少女も一緒に連れてくるようにと書かれていたんだ」
「なぜでしょう……。ジュスティーナ様の功績に対して褒美を与えたいのでしょうか?」
「それならいいんだが……。少し心配だな。断るべきだろうか」
「意図がわからないのは少し不安ですが、陛下も王妃様も、まさかラウロ様の呪いを解かれた恩人に無体なことはなさらないと思いますわよ。ジュスティーナ様にどうしたいか聞かれてみては?」
「……そうだよな。俺もお二人がジュスティーナ嬢に危害を加えるようなことはないと思うが……。やはり、本人の意思を聞いてみるべきだろうか」
ラウロ様は随分悩んでいる様子だった。
私は扉の前でどうしようかと逡巡し、そっと扉に手をかける。
「あの、ラウロ様、エルダさん」
「ジュスティーナ嬢?」
「まぁ、ジュスティーナ様!」
そっと扉を開けると、二人は驚いた顔でこちらを見た。
「今の話、聞いていたのか……?」
「廊下を歩いていたら、お二人の話し声が聞こえてきたもので……。盗み聞きしてしまってすみません。私も王宮に来るようにと手紙が来たというのは本当ですか?」
尋ねると、ラウロ様は躊躇いがちに口を開く。
「ああ。陛下と王妃様はジュスティーナ嬢に会いたいようだ。しかし正直言って、俺にはお二人の考えがわからないんだ。君にどんな話をするつもりなのかもわからない。ジュスティーナ嬢が嫌なら無理して行くことはない」
ラウロ様は本気で心配してくれている様子だった。
しかし、国王両陛下からの呼び出しならば、断るのはあまり良くない気がする。
「いいえ、ラウロ様。陛下と王妃様が私をお呼びなのでしたらうかがいます」
「本当か? 無理しなくていいんだぞ」
「大丈夫ですわ。国王両陛下に謁見できるだなんて、またとない機会ですもの」
そう言って笑ってみたけれど、ラウロ様は複雑そうな顔のままだった。
エルダさんが後ろから、幾分明るい口調で言う。
「ラウロ様ったら。心配し過ぎですよ。きっとお二人とも、息子の呪いを解いてくれたご令嬢を一目見てお礼を言いたいだけですわ」
「そうだろうか……」
「きっとそうに違いありません! あっ! もしかしたら、呪いを解いてくれた恩人のご令嬢に、息子の嫁になって欲しいと頼みたいのかもしれませんわ。そうなったらお祝いですわね!」
「い、いや、エルダさん」
歌うように言うエルダさんを、ラウロ様は慌て顔で振り返る。




