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私が複雑な気持ちでご令嬢たちに囲まれるラウロ様を見ていると、ふいに黒のタキシードを着た見覚えのない男子生徒に声をかけられた。
「はじめまして、ジュスティーナ・ローレ嬢。よかったら次のダンスは俺と踊ってくれないか?」
「え?」
前髪を後ろに撫でつけた、タキシード姿のその男子生徒は、にこやかに私に手を差し伸べる。すると、彼の後ろから別の人たちもやって来て言った。
「ローレ嬢! 彼より僕と踊ってよ。一度君と話してみたかったんだ」
「おい、やめろよ。先に声をかけたのは俺だぞ」
「いや、それより僕と! ローレ嬢、最近すごく綺麗になったよね」
「え、ええ……?」
予想外の事態に戸惑った。
今までのダンスパーティーではこんなことなかったのに。
ルドヴィク様と参加していた頃は、彼が一曲目のダンスの後フェリーチェの元に行ってしまってからは、大抵は壁の花に徹していた。
どうして急に声をかけられたのかわからず、ぽかんとしてしまう。
いつものパーティーの経験から別の人に誘われるとは思わず、今日はずっとラウロ様と一緒にいられると思い描いていたので、少々困惑もしていた。
しかし、ダンスパーティーなのだから、本来は色んな人と踊るほうが望ましいのだろう。
代わる代わる手を差し伸べてくる彼らを見て、誰を選べば角が立たないのか考え込んでいると、後ろからそっと腕を引かれる。
「ジュスティーナ嬢」
振り向くと、ご令嬢たちに囲まれていたはずのラウロ様がそこにいた。
「ラウロ様!」
「ジュスティーナ嬢、……二曲目も俺と踊ってくれないか?」
ラウロ様は真剣な目で尋ねてくる。
そっと周りに視線を向けると、ラウロ様がそばに来た途端、男子生徒たちが固まるのがわかった。ラウロ様は私の目をじっと見つめながら続ける。
「多くの人と交流するべきなのはわかっているんだが、君に別の人と踊って欲しくないんだ……」
懇願するようにそう言われ、心臓の音が早くなる。お願いだからやめて欲しい。そんなに真っ直ぐな言葉で私の心を惑わせないで欲しい。
そう思いながらも、私は無意識のうちに言葉を返していた。
「わ……私もラウロ様と踊りたいです」
そう答えた瞬間、ラウロ様の目がぱっと輝いた。
私は誘ってくれた男子生徒たちの方に視線を向けて謝る。
「すみません。二曲目もラウロ様と踊りたいので、せっかくのお誘いですが遠慮させていただいてもよろしいでしょうか……?」
「あ、ああ、そうだね! それがいいかもね!」
「急にごめんね! またの機会に!」
男子生徒たちはなんだか慌てた顔をしながら、そそくさと散っていく。
その中の一人がちらりとラウロ様の方を見て、「あれに勝てるかよ……」なんて呟くのが聞こえてきた。




