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「親なんて好きでも嫌いでもどちらでもいいと思いますの」
半分は自分に言い聞かせるようにそう言ったら、ラウロ様は驚いた顔でこちらを見た。
ラウロ様は嫌いとまでは言っていなかったのに、しかもラウロ様のご両親とは国王両陛下のことなのにと今さら気づき、慌てて口を押さえると、横から笑い声が聞こえてきた。
「そうだな。どちらでも構わないよな」
ラウロ様の顔は先ほどまでと違って明るかった。
私はまだ笑いがおさまらない様子のラウロ様を見て、おかしなことを言ってしまったかもと恥ずかしくなる。
けれど、それ以上にラウロ様が笑ってくれたことにほっとしていた。
***
それから数日が経った。ラウロ様は手紙を見たときこそ複雑な顔をしていたものの、普段はいつも通り淡々と過ごしている。
表面上そう見えるだけかもしれないけれど、少なくともラウロ様が目に見えて落ち込んでいないことに私は安心していた。
そして今日の私は、ラウロ様のお屋敷の客室でソファに腰掛けながら、別のことで頭を悩ませていた。
来週には、フォリア王立学園の二回目のダンスパーティーが行われる。
一回目のパーティーの会場は学園内のホールだったけれど、二回目は王都の真ん中にある大きなホールを貸し切って行われることになっている。
なぜ短期間で二回パーティーが行われるのかというと、もともとは、新入生などパーティーに不慣れな生徒が最初から大きな会場に行って失敗をしないように、練習の意味を込めて二回パーティーを行ったのが始まりらしい。
そのため二回目のパーティーは、一回目以上に盛大に行われ、参加者も多く集まるのが通例だった。
私はソファから立ち上がり、うろうろと部屋を歩き回る。
前回は半ば衝動的にラウロ様にパートナーを頼んでしまったけれど、今回も誘ったら一緒に来てくれるだろうか。
さすがに甘え過ぎかしら。でも、出来ることならまたラウロ様と一緒に参加したい。
そんなことを考えながら歩き回っていると、ラウロ様を取り囲んでいた女の子たちの顔が浮かんできた。
もしも、あの子たちの誰かがラウロ様を誘ったら。
お優しいラウロ様のことだ。あっさり了承してしまうのではないだろうか。
だってラウロ様は、会って数日の私が一緒にパーティーに参加して欲しいと頼んで、快く一緒に来てくれたくらいだもの。
ダンスパーティーの会場で、ラウロ様が私の知らない可愛らしいご令嬢と楽しそうに踊っている様子を思い浮かべたら、どんどん嫌な気分になってきた。
そんな光景、絶対に見たくない。
私はいてもたってもいられなくなり、気がつくと部屋を飛び出していた。




