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「……本当にラウロ・ヴァレーリはそのような方なのですか?」
「ええ! 私が見たラウロ様はとっても素敵な方でしたわ。前にミリアムさんが言っていたような冷酷だとか横暴だとかいう言葉からはかけ離れた人なんです!」
思わず説明する声に力が入る。
そんな私を見て、ミリアムさんはちょっと複雑そうな顔をしながらもうなずいた。
「……そうなのかもしれませんね。私、ずっとラウロ・ヴァレーリは危険な人だと聞いていたので、さっきはあんなことを言ってしまいましたけれど。ここ最近のジュスティーナさんを見ていて、本当にそんなにひどい方なのかなと疑問に思い始めていたんです」
「え?」
「ジュスティーナさん、表情が随分明るくなりましたもの。前はよく憂鬱そうに目を伏せていたのに、今はちっともそんな表情をしませんし。なんだかとても元気に見えますわ。嫌な人といてそんな風に変化するわけがありませんものね」
ミリアムさんは肩をすくめてそう言った。
私は思わず言葉に詰まる。自分では全く意識していなかった。
けれど、確かにルドヴィク様との婚約を破棄して、ラウロ様のお屋敷にお世話になってから、憂いを感じることがなくなったことを思い出す。
そういえば、あのダンスパーティーのとき。
これまでの私なら、一緒にパーティーに参加してくれるよう頼んでみたり、自分には似合わないと思っていた明るい色のドレスを着て会場に行ったりなんて、出来なかったと思う。
それに、私に呪いを解ける可能性があると知ったときだって。今までの私だったら、自分にそんな大それたことを出来るわけがないと最初から諦めていたのではないか。
けれど、あの時はそんなこと全く思わなかった。ただ、私の力でラウロ様の呪いを解けたらいいと、私にも出来るかもしれないとそれだけを考えていた。
私は自分がこの短い時間で、随分変わったことに気が付いた。
全部、ラウロ様がそばにいてくれたからだ。
「ジュスティーナさんがそこまでラウロ・ヴァレーリをお好きなら、私はもう何も言いませんわ。嫌なことを言ってごめんなさい」
ミリアムさんはそう言って笑った。
一瞬安心しかけたものの、彼女の言葉が少し引っかかる。
「ミリアムさん、私はラウロ様が好きというか……そういうわけではなくて……」
「違うのですか? さっきからずっとそう言っているように聞こえましたけれど」
ミリアムさんはきょとんとした顔で首を傾げる。
私は返す言葉がなくて、ぱくぱく口を動かした。
私はただ、ラウロ様のことを誤解されたくなかっただけだ。それだけのはずなのに、胸を別の感情が占めていく。
ラウロ様といると色んなことにどきどきして、とても幸せで。けれど、ラウロ様がほかの女の子に好かれているのを見たら、途端に気分が重くなった。
(私、ラウロ様のことが好きなの……?)
今さらみたいに心の中で呟いたら、ラウロ様の笑顔が浮かんできて、私は思わず頬に手をあてた。




